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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第一部EX:1 ブラッドル編
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第149話 分離男と刃物男、そしてナノマシン爺


「やりすぎたか……まあよい、フハハハ!」


「誰なんだおっさん」


「よくぞ聞いた、俺の名前はヴァルター・フォン・ゴットフリートだぁああああ!」


「そ、そうすか。でここで何をしていた、答えるんだ」


「答えないと、速攻で粉みじんにしますよ?」


  2人とも、今ので大恥をかかされたと感じ武器をしっかりと構え臨戦態勢であった。特にエレクトリールは男の顔を見てある人物を思い出そうとしていた。


「フ、フハハハハハ! まあよかろう、もとより俺は、お前らを歓迎していたぁあああ!」


「なんだこの男は、うるさいうえに何を言っているんだ。処分すると言っていたのにおかしいぞ貴様」


「うわあああ……あまりお近づきになりたくないです。てか、思い出しました。貴方旧派の最高幹部、黒の男のメンバー! なんでこんなところに来ているのですか」


「ぬぉおおお、お前は、よく見ればエレクトリールじゃなあいかあああ! 元気にしとったかああハハハハハ!」


 一々リアクションのうるさい大柄な軍服を着た男は、姿と声でエレクトリールに気づき感激していた。リシェルはというと言動がどこかおかしいこの男は何者だろうと思いつつも、エレクトリールとこの男が知り合いであることに驚愕していた。


「おいおい、知り合いかよエレクトリール」


「ええ、まあ。そうですリシェルさん」


 リシェルは改めて確認を取るが、エレクトリールの表情は引きつった笑顔であった。そうみるに、彼女の苦手なタイプであることは明白であった。


「おほん、話を戻すか。我々はぁああ! あの恐るべきDGの幹部だったあああ!」


 2人のやり取りを見たヴァルターは、せき込む動作をした後に勝手に話し出したのであった。


「だがしかし、あの白い衣の男にすべてを壊された。行く当てもない俺らはぁああ! こうして潜んでいたわけだぁあああ!」


「本当にそれだけですか? 旧派は金のためならばどんな仕事でも引き受けますよねえ? 私も旧派所属だったので人のことを言えないところはありますけど」


 ヴァルターの話にどこか違和感を抱いたエレクトリールは疑うように質問する。


「ふぅん、まあそれもそうだったが、あの美しい男を見て俺は考えを改めたのだぁあああ!」


 彼女の返答にそう返したヴァルターだったが、鋭い彼女の質問に多少焦っていた。


「えぇ……本当に昔からうるさい人でしたが、さらに悪化してますね。それでその男とは……?」


「ならば教えてやろう、俺が惚れたのはこの男だぁあああ!」


 ヴァルターは胸ポケットから一枚の写真を取り出ししっかりと見せつける。それを見た2人は目を丸くしていた。なぜならばそれはハーネイトがDG幹部ミルコと戦っていた場面の写真であったからである。


「嘘……なぜあなたがその写真を!」


「なぁに、俺たちDGの技術力をもってすれば、このような造作いとも簡単に決まっておるわぁああ!」


「はあ、調子狂うなこのおっさんは。悪い奴ではなさそうに感じるんだが」


「それがですね、この男色々と危険なんです」


 ヴァルターはとても誇らしげにそういいながら写真に写るハーネイトをやさしく指でめでる。それを見たエレクトリールは微妙な顔をしながらリシェルに対し、ヴァルターという男かどういう存在なのか簡潔に説明したのであった。


「ぬぁああにいい、俺は俺よりも危険な奴らを見つけることができたのだぁああ! 数百年の眠りから覚める、この星に住む者どもよ! それと、龍の伝説の一片を知ったのだ!」


「それで、その対策のために裏で動いていた。あなたらしくないですね」


「フハハハ、気が変わったというのだエレクトリールよ。俺はなぁ、前々からDGが瓦解することを予見していたのだぁあ!」


 エレクトリールたちがヴァルターの大声に辟易しながら話を聞き出している間に、ハーネイトはスマートに施設内部に潜入していた。するとある男が気配を消して廊下を歩いていた。どうも堂々と歩いているが、男の姿を目で捉えづらいことに違和感を抱いたハーネイトは何者だと思い秘かに監視していた。


「……! あの人、何か機械のようなものを全身に纏って光学迷彩を使っているみたいだな。参考にしてみるか。魔法探知でも少し難しいな。いやまずは工場の制圧とザイオの拘束だ」


 ハーネイトはその男がなぜ視認しづらいのか、その理由をすぐに突き止めたが本来の仕事に戻り、地図を見て生産ラインの近くまで来ていることを確認すると、排気口に忍び込み天井から息を殺しつつ部屋の中を監視していた。


「思ったより内装がきれいだ。しかし何をしかけているのか」


「いやな予感がするわ。って!!!」


「……!!!」


 南雲と風魔は素早く施設の廊下内を進んでいく。そんな中風魔は天井から何かが来ていることを察する。と次の瞬間、恐ろしく素早い速度で男が頭上から現れ腕についた鋭い刃で切りつけようとしてきたのであった。


「危なかったわね。いきなり何するのよ!」


「侵入者は、排除すべき……!」


「やる気のようだな。仮面が不気味な男だ」


 奇襲に失敗するも、刃を生やした男は敵対行動をとり続ける。すかさず2人も創金術で武器を作り出し応戦しようとする。


「そちらがやる気なら、こちらもだ。行くぞ!」


「待て、メッサー!」


「ヴァルター……!」


 廊下の向こうから声が聞こえ、仮面で顔を隠した暗殺者は動きを止める。この男は先ほどエレクトリールたちが出会った軍人の仲間である。


 名前はメッサーといい、両手両足が機械化されている。両手両足に刃を格納し、さらに手にももつことで強大な攻撃を行える寡黙な男であった。更に付け加えると、肉体にある強化液を巡らせることで強大な力を引き出す改造も行われているという。


「エレクトリール、リシェル、なんでお前らが」


「それはこっちが聞きたいぜ。てか、隣のやばそうな男は誰なんだよ」


「私の元同僚です! なんでこんなところにいたのかあれですが、仲間に入りたいと言って……」


「ええええええ、なんなんだその男は。敵じゃねえのか」


 互いに知らない男とその場にいたためリシェルと南雲は互いに状況に突っ込みを入れる。それに関して元DGであるエレクトリールが事情を説明した。ヴァルターもそれに合わせ説明を付け足す。


「私はな、組織に対し早めに見切りをつけたのだ。それに、この星に興味を持ったのだぁああ!こちらに関する情報はすべて提供するのでな、それと引き換えにだ、この私ぉおおお!」


「なんてうるさい人なんだ、耳が痛い」


「苦手な人だわ……っ」


 ヴァルターのやかましい声がガンガン響く。南雲も風魔も、あまりの音圧に辟易していた。


「仕方ないのでとりあえず連れていきます。この人を敵に回すと非常に面倒ですし、独自に調べたある情報を渡したいと」


 エレクトリールがどうにかヴァルターの口をふさぎつつ、この男たちを連れて行くと風魔達に言った。


「仕方ないわねえ、エレクトリール、口裏はあなたがすべて責任取って合わせなさいよ! ハーネイト様がひっくり返ってはあれでしょ?」


「勿論ですよ風魔さん! はあぁ、なんでこんなことになるんですかね。戦力はいくらあってもうれしいですけどぉ」


 その光景を見ていたメッサーは、呆れながらも風魔と南雲に声をかける。


「なんだ、ヴァルターの言っていた、あの男の仲間たちか。ならば済まなかったな。非礼を詫びよう。それに、エレクトリールか、旧派の裏切り者が……!」


「メッサー……あなたまで。今は、昔のことを引き合いに出している場合ではありません」


「あら、意外と礼儀正しいのね」


「人は見た目で判断しちゃいけないわな。しかしまあ、エレクトリールの影響力は恐ろしい。味方でよかったでござる」


 メッサーという男は静かに詫びた後、ついて来いと指示する。そうしてついてきたリシェルたちは、ある部屋の前まで来ていた。中から機械が動いている音がし、何かが稼働している。メッサーはある話を切り出した。


「ここが、工場の生産ラインだ。あのカードのせいで、俺たちは数十人もの仲間を失った。確かに俺たちは悪人だ。脅されていたとはいえ、自業自得といわれてはどうしようもないがそれでも、仲間をやられた以上弔いだけはしなければな」


「……あの男どもを説得できなかった俺たちに非がある。一部の男らが、武器商人と手を組んだこともだ。どうも誰かを抹殺するために旅をしながら戦争を仕掛けていたみたいだが、愚かなことだ」


 ヴァルターとメッサーは共に、DGの侵略に巻き込まれ混乱の中で、生き残るために仕方なくDGに入ったという。その時にかなりの深手を負ったが、DGの技術により体を改造され命をつなぎとめた。


 自身らをこのような目に合わせたやつらを始末するためユミロやボガーノードたちとは別に秘密裏に暗躍していたが、その中で真の黒幕はDGの活動を利用しようとしたある星の兵器商人だった。


 それを知り抹殺しようとしたが失敗し、追ってから逃れる最中にここにたどり着き、ほかの仲間と合流して機会をうかがっていたことをヴァルターはハーネイト達に話した。


「もしやすると、その武器商人のボスがこの星にきているかもしれん。そうなればどうなるかわからんのでな。少しでも戦力が欲しかったのだ……その中で遺跡に、強大な力を秘めた人間が眠っていたのを見たのだ」


 ボスを追う中で彼らは、ある男と出会った。それはこの星出身の老人で、ある計画を阻止するために入った密偵であることを明かす。それは武器商人たちが、アクシミデロの古代人が生み出した文明とその技術を用いて恐ろしい戦士を誕生させようとしていたものであった。


 ここで一旦DGが攻め入った理由を整理すると、各勢力ごとにそれぞれ理由があるのと、共通した理由が存在する。旧派は純粋に、侵略活動を行い次元航行や古代バガルタ人の技術を盗もうとしていた。新派は本来旧派の行動を止めるために存在していたが、20年前のDG戦役で加わった魔女セファス、正確には血徒イエロスタにより、私怨を晴らすため霊量士たちの多くが洗脳され、遺跡をすべて破壊し次元融合装置の暴走を招こうとしていた。しかし一番の問題は、双方オーダインの魔の手から逃れようとしていたがゆえの行動であったと言える。


 そんな中で旧派の中でも離反者が相当出ていた。それがヴァルターたちである。魔女セファスの加入後にいつの間にかいたAM星の老人の話を聞いて、武器商人たちに利用される前にAM星に出向き対策を取ろうとした矢先、ハーネイトとDGたちの戦闘が勃発したという。


「スプリィーテス・ガンヴァレーノ・ヴェスカトリポカ……あの人も来ていたのですね」


「誰なんだ、その名前の長い人は」


「いつからいたのかわかりませんが、相当な実力を持つ中年の男性です」


 エレクトリールはスプリィーテスという男について知っていることを話した。この男がヴァルターたちを突き動かした原因といっても過言ではない。彼の話を盗み聞きしたヴァルターたちが、そのアクシミデロ人ことバガルタ人の力の謎の興味を持ち、決死の片道切符でこの星に降り立った。


「悪人にしか見えないのに、なぜか不思議な感じがするわね」


「でも気を付けねえとな。って、あれはハーネイト師匠! 」


 リシェルが部屋のドアをわずかに開け様子をうかがう。するとすでにハーネイトは研究者らしき男に対し剣を向けていた。


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