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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第10話 DG殲滅作戦会議

 機士国王の救出に成功し、敵幹部の一人、ユミロを仲間に加え入れたハーネイト。リノスで宿を取り、改めて何があったかを把握するため聴取を行うのであった。


 一行は日が沈む前にリノスに無事到着した。アンジェルが先に宿が空いているか確認を取るといい、街の中に駆け足で消えていった。


 ハーネイトたちは気配を極力消して街の入り口で待機していた。それからしばらくして彼女が戻ると、街の中にある宿屋にハーネイトらを案内した。先にアンジェルが宿の受付で部屋を取ったと伝える。


「お金は後払いだって。5人部屋でいいよね? 護衛の件もあるからね」


「ああ。ではひとまず休むか。宿の手配の方を任せてもらって済まないなアンジェル」


「いえいえ、この程度大丈夫ですよ。本当に、何かと何時も助けて頂きありがとうございますハーネイト様」


「彼がいなければ、今こうしていられない。久方ぶりの再会だ、色々話そうではないか」


 ハーネイトらは階段を登り、宿屋の2階の部屋に入ると、5人はそれぞれのベッドに腰を掛けて座ると、荷物をどさっと床やベッドの上に置いた。


 まだ疲労が取れないハーネイトは、大きく四肢を広げてバタンとベッドにうつ伏せで倒れこんでしまう。


 彼は他人を治療することに関しては桁違いの能力を持つ半面、自身に治療魔法をかけてもほとんど効き目がないという困った体質の持ち主、というよりは、他の魔法使いから呪いを受けており自身に治療、強化系の魔法をかけても効果がほとんどないと言う。


 その影響からか、いつも通りの覇気のある顔が今のところ見られずどこかやつれているように見えアンジェルはそれが気になっていたのであった。


「先ほどは、本当に助かった。もしハーネイトと、そこの青年が駆けつけていなかったら命運は尽きていただろう」


「結果的に無事でしたから、それでいいでしょう。それに王なのだからもっと堂々と」


「私はすでに王の座を失脚しているのだ。そうする必要がない」


 そうして、アレクサンドレアル6世はハーネイトに対し何が起きたのか、今度は詳細に説明した。

 

 およそ1ヶ月前、機士国で軍事クーデターが突如発生したこと、国王はジュラルミン軍事長官らに命を狙われ、幸いルズイークとアンジェルが王を救出し、命からがら逃げてきたと。


 もしものために、重要な王としての証拠品は手元にあり、そして他の主要な国々の代表も事情は概ね把握しているということを説明した。


「何があったのか、これで改めて理解できた。ジュラルミン。あれほどの人格者がなぜこのような暴挙に出るか。先ほどの話を整理して、状況からしても例の魔法使いに何かされた公算は高い。一応防衛用の魔法をかけておいたはずなのだが、それを上回る人物か」


「ああ。彼の影響力は軍関係者を中心に大きく、結果として私は失脚してしまった。争いのない他の国々の人と仲良く暮らしていける世界を作りたかったが、これではもう……」


 ハーネイトはそのジュラルミンと言う男を気に入っていた。魔獣に家族を殺され、魔獣管理政策と軍備増強を訴えていたのを今でも彼は覚えている。そしてえらくハーネイトのことを気に入っており、面倒をいろいろ見てもらったことを思い出す。


 機士国で暮らす際に家の提供や食事に連れて行ってもらったりしたことなど、父と息子の関係のように接していたことを思い出し、あの時はよかったなと言わんばかりに、懐かしんでいた。


 またアレクサンドレアルは、彼の変貌ぶりに困惑しつつも自身の掲げる理想の世界をもう作れないのかと半ば諦めかけていた。そんな王様の姿を見て、エレクトリールは一言述べる。


「諦めるのは、まだ早いのではと思いますよ王様? 機士国を乗っ取った奴らを倒して、また王として返り咲けばよい、それだけの話ですよ。それにDGが絡んでいるならなおのことです。変な魔法使いもぶっ飛ばせばよいのです。聞いたところ国王様はかなり民から信頼されているようですし、きっとうまくいきます」


「確かに、そなたの言うとおりかもしれないな。取り返さなければ、奴等は周囲の国を攻め始め、その戦禍が星をいずれ蝕むだろう。それだけは阻止せねば。不穏な言葉も聞いたし、奴らの実態に迫る好機でもあろう」


エレクトリールの突然の提案に驚き、一瞬言葉を失うも、その行動が必要であると考えた彼は語気を強め、現状の打開を考えるアレクサンドレアル6世であった。


「エレクトリールの言う通りだ。事態を放っておけば、取り返しのつかないことになる。DGの活動をこれ以上防がなければ、ユミロが体験したようなことがここでも起きる」


「そうだ。しかしそなたの一声で決心が付いた。名前は何と言うのか? そこのお主よ」


ハーネイトの言葉に覚悟と決心を決めるアレクサンドレアル6世は、力強い提案をしてくれた青年の名前を聞く。


「私はエレクトリール・フリッド・フラッガと言います」


「先ほどは本当に助かった。ありがとう、エレクトリール殿。勇敢なるその言葉、私も決心がついた。まことに頼もしいな」


「本当に助かったわ。あの敵の数、3人じゃ幾らなんでも切り抜けるのは難しかったわ。ありがとうエレクトリール」


「新たな部下か? 良い力を持っている。頼もしいぞ」


3人はエレクトリールの働きに感謝の言葉をかける。来て早々に大変な目にあっているにもかかわらず、この青年は自身らを助けてくれた。そしてあの言葉。彼らは感謝するしかなかった。


「いえいえ、よかったですよ。助けが間に合って、本当に。皆さん無事なのでよかったです」


「そうだな。エレクトリール、よくやった。今日はよく休んでくれ」


「そうですね、ゆっくりさせていただきます」


 エレクトリールは水をコップにいれて飲んでいた。戦いの後で相当喉が渇いているのか、何倍もコップに注いでは飲んでいる。


 どうもリンドブルグの件も含め、エレクトリールは普通の人よりも何倍も食べたり飲まないといけない体であることをハーネイトは把握した。


「しかして、エレクトリールはどういう経緯でハーネイトと共にいるのだ?一匹狼で有名なこの男がなぜ」


 アレクサンドレアル王の質問に2人は今までのことを話す。


 エレクトリールが、故郷の星を別の宇宙人に襲撃され、命からがらこの星にやってきたこと。例の結晶こと星の秘宝を持っていること。ハーネイトに助けられた後、事務所が襲撃を受けたこと。そして襲ってきた敵が、機士国の開発した機械兵だったことを詳細に説明した。


「そうして、今私は、ハーネイトさんと行動を共にしています」


「それは、大変な苦労があっただろう。しかも故郷を襲撃され逃げて来たとは、一体何が起きているのだ。DG侵略戦争の時以上の悲劇が起こるのだろうか」


 アレクサンドレアル6世は、エレクトリールを再度ねぎらいながら、今起きている事件について確認する。


「それとな、ハーネイト。これを見てくれ」


 ルズイークは、服のポケットから一枚の写真を取り出す。その写真には、事務所を襲った機械兵と全く同じマークが写っていた。星を二つに割く稲妻の絵にDGと大きく金色で強調したマークであった。


「あの事件の首謀者たちが名乗った組織名か。それとその写真に写るのは事務所を襲った機械兵のエンブレムマークだ、間違いな」


「そうか、国王を連れて逃避行中に敵の1人を打ち取ったのだが、そいつの服についていたものだ」


「DGか、この写真の服は機士国軍、しかしエンブレムは2つか。そうなると、機士国のクーデターもエレクトリールの故郷襲撃もうちの事務所襲撃も、全てDGの仕業。もう確定事項、動かぬ証拠だ」


 ハーネイトはこの事件は思ったよりも厄介であり、解決に時間がかかるかもしれないと考えた。しかし、彼の本来の力を開放すれば1日足らずで事件解決できる代物である。それを阻む問題は彼の体に忍び寄る限界であった。


 もし以前のような全盛期ならば、彼は1人で無茶して道理を通すようなことを行っていたであろう。しかし多忙に次ぐ多忙で疲れていたハーネイトにそれを行う余裕はなかった。それでも彼は、疲れていることを見せずにみんなの前で気丈に振舞っていた。


「そういうことになるだろう。しかし機士国を奪還するにしても圧倒的に兵力が足りない」


 すると国王は、両手を組みながら力なさげにそう呟く。DGは圧倒的な数の暴力で周辺の国家を占領するということを逃避行の中で確認していた。何より、一番問題なのはこちらの戦力不足でありそれを痛感していた。


 「そうなのよね。乗っ取られたとされる軍の一部は恐ろしいスピードで周囲の国家をいくつか侵略しているわ。かなり兵も装備も揃ってきていそうね。以前から計画していたとしか思えない速さだわ。本当に悔しいわね」


「敵の戦力が未知数な以上、俺でも迂闊には攻めることはできん。あの2人がいるなら話は別だけどな。話によれば、私のかつての仲間たちがDGやクーデター軍に対して武装蜂起しているというが」


「うーん、まだ侵略されていない所とかを回って、仲間、同胞と情報を集めつつ、一気に攻めるのはどうですかね? ユミロさんのように仲間に加える感じで」


 突然のエレクトリールの提案に、他の3人は一瞬言葉が詰まった。しかし、ハーネイトがそれに答えた。


 「その策は使えるだろうな。侵略を食い止め兵力を集め、情報も頂いて機士国を取り戻す。いい案だ。問題はどうして他に集めるか」


「向こうの戦力とこちらの今の戦力、集められうる戦力を鑑みて作戦を立てないとね。まあハーネイトの妙なカリスマ能力があれば問題なさそうだけれど」


 ハーネイトはエレクトリールの提案に乗った。そしてアンジェルも戦力差を埋めるためにそれは必要だといった。とはいっても機士国側の人間としては、彼が伝説を作ったとある戦いを見ている以上、あのときに使用した能力で一気に解決してほしいとも内心願ってはいたのである。


「どれだけ強力な仲間を集められるか、か。一騎当千級の実力者がいればよいだろうが。ハーネイト、旧友に手紙を出してみてはどうだ?私たちも第一特殊部隊のメンバー、そしてガルバルサス率いる軍団はどうにか手元に置いてありますが、その上であの個性豊かな集団をまとめていけばどうにかなるかもしれん」


ルズイークも少し考え、作戦に乗ることにした。そしてハーネイトに提案をする。機士国にいた際に出会ったエージェントたち、カイザルにアル・ポカネロス、ギリアム、グラヴィッツなどの優秀な人材と連絡を取り協力を取り付けたこと、さらに機士国王の祖父にあたる人物が率いる正規の軍についても、敵の手に落ちておらず隠密活動をしていることを告げた。


 それを聞いたハーネイトはそっと胸をなでおろした。それならば、思ったより早く解決できるだろう。そう彼は考えたからである。


「確かにな。手紙か、使い魔たちを総動員させるしかない。そいつらから更に人材について聞けばいいか。神威にフリージア、ナマステイ師匠にキース、あとはバイザーカーニアあたりでも声をかければ喜んできそうだな。マースメリアのギルド長にも連絡は入れたがそこは難しそうだ」


 ハーネイトはかつての長旅で多くの仲間を手に入れた。その中でもとりわけ強力で、存在自体が変態的な連中や以前1年間だけ魔法学の先生をしていた際に教えていた生徒たちについて声をかけようと考えていた。


 彼の人望はとりわけ熱いが、1つ問題点として変わり者と称される人材の構成割合が多い傾向にあることであった。しかし今はそうもいってもられない状況であり、ハーネイトは今までの仲間全員に声をかけるため、使い魔4匹を総動員しようと考えていた。


「そうですね。私たちで仲間集めやりましょうよ、ハーネイトさん?お仲間さん、たくさんいるそうですし」


 エレクトリールはもう一度、ハーネイトに確認をする。ハーネイトも、この状況から逆転するにはそういった作戦でなければ、事態の収拾には繋がらないと考えた。自身も疲弊している中、どの手段を取り、または捨てるかを必死に考えていた。


「そのつもりだ。忙しくなるが、やるしかない。国王、そういう作戦になりましたが、問題はないですか?」


「いや、それがいい。戦力が圧倒的に不足している以上、どうにかして共に戦う仲間を増やさなければいけない。この星の存亡に関わる事態、皆の力が必要だ。ハーネイト、エレクトリール、ルズイーク、アンジェル。私に力を、剣を預けてくれますか?」


「最初からそのつもりだ、解決屋として目的を達成して見せよう。ガムランの丘のようにいけばいいのだがな。仲間をある程度集めたら、攻勢と撹乱に打って出ますので。ヴァンとリリーにも連絡、入れておかないとな」


「私もです。故郷を襲ったドグマ・ジェネレーションを倒すためにも、一生懸命やります」


「私らは王に代々忠誠する一族、異存なぞありませぬ。この体、アレクサンドレアル王のために捧げます」


「私もです。王様の手となり足となり、王様の望むように働きます。お任せください、王様」


 ハーネイトから順番に、作戦に関して全力で実行する意思表明を国王の前で行う。


「ありがとう、私はそなたらのような者に出会えたことを誠に嬉しく思う。私も、出来るなりのことをする。エージェントたちからの情報も合わせ、効率よく進めよう」


「アレクサンドレアル王、此度の戦いは長く、険しいものになるかもしれません。しかし敗退は許されない。だからこそ粉骨砕身してでも敵を倒します」


 アレクサンドレアル6世の言葉に、ハーネイトは全力で戦おうとさらに意思を示す。


「分かった。しかし私からも願いがひとつある。各員、死ぬな。生きてまた元通りの暮らしをしよう。そしてこの男に大好きな休暇を上げないとなははは。みんな、よろしく頼む」


 王の言葉に4人は、はっ! とやや緊張した面持ちで返し、ピシッと敬礼をする。


「国王、提案ですが一度私の拠点に身を隠してはいかがですか?再度代わりの拠点を見つけるまでの間です。メイドたちには手紙で知らせてあります」


「うむ、そうだな。まだしばらくは身を隠さなければならん。よろしく頼む」


「問題ないですよ。早急に行って参ります。しかし敵に魔法使いがいると読むと、大掛かりな移動魔法は極秘作戦がばれそうだ。それに、全員が魔法の素質があるわけではない」


 ハーネイト曰く、敵の正確な規模と本拠地さえある程度分かれば、あえて派手に動くこともできそちらの方が早く片が付くと伝え、それまでは敵に動きをあまり悟られないように活動し戦力を増強仕立て直す旨を再度話した。


 そう言った矢先部屋のドアからノック音がした。それに対しアンジェルとルズイークが咄嗟に構えていた。


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