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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第135話 先への希望と不安


 ハーネイトとエヴィラが話しているその間も、全員が食事と交流を楽しみ、レストランの中は結局、多くの人が酔いつぶれていたのであった。仕方がないなと思いながら、リシェルとエレクトリールを部屋に運ぼうとする。


「やれやれ、後片付けは大変だな」


「よう相棒、パーティー楽しかったぜ」


「そりゃどうも。だけどみんなを部屋まで運ばないと」


「それくらい手伝ってやるぜ」


「俺も手伝う」


 魔法で人のサイズまで小さくなったユミロも含め、伯爵とハーネイトは手分けして事前に割り当てた部屋へ全員を運ぶのであった。


「ありがとうユミロ。本当に力持ちだね」


「こういうのは任せてくれ」


「そうか、頼もしいな」


 こうして各部屋に酔いつぶれたり爆睡していた仲間を運んだ彼らは、ホテルの屋上で夜風を浴びながら満天の星空を見て話をしていた。


 様々な色を発し存在を証明する星たち、その中にDGたちの故郷もあるのだろうか、どれだけの星が戦争で消えていったか。そう思いながらハーネイトはただただ、夜空を見つめていた。


「女神の世界か。まさかマジであるとはな」


「まだ確証はできないぞ、伯爵。だが、ここから切り離された世界か、そこに龍の力についての情報があるのなら」


「しかし、本当の話なら、俺たち……」


「真偽を確かめに行くしかない、それはもうわかっている。だが、不安なのは俺も同じだ」


「そうだな相棒。俺にも眠っていると言うなら、使いこなせれば」


 実際に見なければ信じないというハーネイトに対し、ユミロはいたらどうしようかと少しおびえていた。


 オーダインたちの話を聞く限り、主であるハーネイトはその女神と関係がある。そしてその力を引き継いでいるのではないかと考えていた。そうでないと今までの出来事について説明できない部分が多かったからである。


「今までもそうだった、そしてこれからもどうなるかは未知数で予定でしかない。だからこそ、選択次第で未来は変えられるとは、思わない?」


「おうおう、言うようになったじゃねえか。たとえ何が来ても、俺は守りてえものを守る。それだけさ」


「伯爵の戦う理由は至って単純で分かりやすいね。自分も、同じだけど」


「力を、とてつもない力を誰かのために使い続ける、それが使うための条件かもな」


 彼らはそうして、しばらく夜空を見ながら話を続けていたのであった。


 その頃、酒を飲みまくっていたリシェルとエレクトリールは13階にある部屋に運ばれて寝かされていたのであったが、頭が痛くてリシェルが目を覚ましたのであった。頭に手をかざしながら少しよろけつつベッドから立ち上がる。


「うぅ……頭痛いぜ。ってあれ、誰が部屋に運んでくれたのか」


「リシェルさん……ハーネイトさんですよ。運んでくれたのは」


「師匠?ま、まずかったな。しかしお酒とか全く飲まないからな師匠は」


 師匠に失礼なことをしたのではないかと少し青ざめるリシェルをエレクトリールはハハハと笑いながら、リシェルの発言に自身の発言を重ねる。


「そうみたいですね。相当なお金持ちとは聞いていましたが、その割に質素ですよね」


「それは、あの人の気質だろうな」


 昔から彼にまつわる噂の中で、事実といえるものの一つにその質素さがあった。豪遊とかあまりしないのかなと思い質問をしたが、ハーネイト本人はあまり興味がないといっていたことを思い出した。


「てか、もう朝なんだな」


「ええ。皆さんと一度分かれるのはさみしいです」


「だけど、すぐにまた会えるさ。俺も兄姉と話をしたらすぐに戻るぜ。師匠がなぜ銃を使えないか、理由ははっきりわかったからよ」


 リシェルいわく、ハーネイトはあまりに力が強すぎて既存の銃では耐えられないという。だったらそれに耐える銃を作れればいいだけの話であり、それについても調べるため一度帰国すると彼女に伝えた。


「ただでさえ規格外すぎる強さなのに……」


「まあそれはな。あの大きな鋼鉄の巨人、イタカか。あれに乗らなくても強そうだしな」


 幾度となく足掻き変身するあの魔女を、ハーネイトは己の持てる全てを持って止めた。何度も激戦を乗り越えてきた軍人、エレクとリールでさえも、あれほどの力を持った敵に遭遇したことはなく、実は足に震えが来ていたという。


 それでもあきらめず、勝利をもぎ取った彼が持つ未知の力がどうしても気になっていた。それでいて、更にあの機械の人形も持っている。その底知れぬ力に感動とおそれの両方を、彼女は抱いていた。


「リシェルさんは、師匠であるハーネイトさんをどうするつもりですか?」


「別に、より強くなるため協力し合う仲になるだけさ。そしていつか、一人であの化け物を倒せるくらいに強くなる。俺も、あの人のようにみんなを守れるようになりてえんだ。答えは、既に得たぜ」


「私も、そうですね。もっと勉強して、この星のことを知り尽くしたいです」


 今回の旅で、ようやく自分が何をなし、おのれができることが何かをしっかりと感じ取れた。リシェルもまた、ハーネイトの志を純粋に継ぐものとしてこれからも精進するとひそかに誓った。


 一方のエレクとリールも、自分の心の弱さが、多くの人に迷惑をかけた。だからこそ自身もリシェルたちのように強くなりたい。そして少しでもハーネイトの助けになりたい。だからこそ学ばなければと彼女は感じていた。

 

「しかしよう、テコリトル人が戦争屋だったとはな」


「あ、あれは昔の話です。今は……。元々戦うの、そんなに好きかといわれても。それに、私はあの人に仕えるのが一番の幸せだって気づきましたから」


「へっ、そうか。人は、変われるんだな。俺がいない間、師匠のことは頼んだぜ」


「はい、リシェルさん」


 そうして、夜明けの優しい光が差し込む窓を見ながら二人は話を続けていたのであった。


「いやあ、飲みすぎて辛いぜ」


「じゃあ飲むなよフリージア」


「んだと!ここの飯がおいしすぎるからあれだろうが」


 朝になり、故郷に帰還する人たちがロビーに集まっていた。レイフォン騎士団のフリージアは頭に手を当てながらそう言い、兄貴たちから総突っ込みを食らっていた。


「出迎えまでしてくれるとは済まないな、ハーネイト」


「私たちも事後処理があるのでな。今度、来てくれよな?」


「ああ。約束だ」


 そうしてレイフォン騎士団の5人はホテルを後にし本国に戻っていった。そしてリシェルとアルポカネも国に戻るとハーネイトらに告げる。


「師匠、今までありがとうございました」


「フッ、これからもだろう?私のためにあれを用意してくれるのだろう?期待している。それと、レミングスとケイミーさんによろしくと伝えといてくれ」


「え、師匠。兄と姉と知り合いなのですか?」


 まさか自身の兄と姉までも師匠の知り合いだとは思っていなかったリシェルは目を丸くした。そして悔しがるも、前に約束した銃の件に関して話をした。


「ま、まあな。それと、ボルナレロとホミルド以外は帰りたがっている。車を手配したから連れて行ってくれないか?」


「任せろ、ハーネイト。それと孫が世話になった」


「いえいえ、お孫さん、本当に強いですよ。私にはない力を持っていますからね」


「……教育の件、任せたぞ、魔導王」


「師匠、しばらくの別れですが、どうぞ健康には気をつけて。また倒れるような真似はご免ですよ」


 ハーネイトが一部の研究者を除いたほかの機士国出身研究者もまとめて連れて行ってほしいとアルたちに頼み、彼は快諾し連れていくことになった。にこっとオフの顔で微笑みハーネイトは彼らをホテルから見送る。


「そうだな。またな、二人とも」


「はい!」


「今度遊びに来てください、ハーネイト様!」


 そうしてリシェルたちは大型のトラックに乗りながら機士国までの長い道のりを疾走しミスティルトシティを後にした。


「リシェルか、あの二人から話は聞いていたが、彼は研究者としても向いているぞ。きっとな」


 リシェルを見送りながら、彼の兄であるレミングスを思い出していた。弟の件で悩んでいたことでまだ機士国で王に使えていた時期に相談に乗ったが、まさかそれがリシェルだったとは思わなかったハーネイト。けれど直感で、彼はアーテンアイフェルト家の血を継いでいるなと感じていた。


「ハーネイト総長、私らも帰還する」


「ロイ、それにみんな。今回はご苦労だった。これでまた株も上がったか?」


「だといいですがね。魔法協会の復興にしばらく時間を取られそうですね……。壊滅状態をどうすればよいか」


 実は一番被害が大きかったのが魔法協会である。何よりあの魔女セファスは協会を恨んでいた。それも元はジルバッドとの確執によるものだが、その怨念が形と為し、協会の幹部の3分の2が命を落とす結果となった。


「準備ができたら手伝う」


「早くお願いしますよ、先輩」


「ああ、そうする。この際、多くの組織を合流させたほうが良いのかもしれんな。その時は協力してくれ」


 この際、魔法協会を解体し新組織に併合させるべきではないかとハーネイトは考えていた。もともと問題も少なからずあった協会の運営方針だったが、今回の一件でとどめを刺されたも同然であった。


「ええ、勿論です。さあ、これから忙しくなるわよみんな」


「ええ、承知しております。皆のども、偉大なる戦士、ハーネイト様に敬礼!」


 裏方で活躍した魔法秘密結社バイザーカーニア。これからもよろしく頼むといい、握手をしてからロイとその部下は飛行魔法で西の方角に飛んで行ったのであった。


「あらあら、若い子ってのはいいわねえ。活気にあふれて、こちらまで元気をもらっちゃうわね」


「まあ、それは否定しないっすよ。先生、今度はブラッドルの試合、全力でぶつかってください」


「少しでも傷ついた民たちの心を、俺らのプレーで魅了して癒す」


「分かった。それもそうだな」


 ブラッドラーの3人はハーネイトや仲間たちと握手をし、試合に来てもらうように約束を取り付けてからホテルを後にし、彼らの故郷に戻っていった。


「本当に、お主の友人は面白い奴らばかりだ」


「ひ、日之国王?な、なぜ」


「なぜもなにも、八紋堀たちを連れてきたのは私だからな」


 一足遅れ、エレベーターから現れたのは夜之一と八紋堀、田所であった。彼らもお忍びで訪れていたようであり、思わずハーネイトは驚いていた。


「例の5か国協議だが、こちらで準備をしてもかまわないか?」


「では、その件についてはお願いします」


「よかろう。もはやこの星を守るには国という垣根は必要ない。形だけでよい。今後も期待しているぞ」


「はっ!ではお元気で、夜之一王様」


 星の存在を脅かす外敵は、国や立場を超えて協力しなければ排除できない。いくら優秀な戦士がいようと、一人では成し遂げられない。今まで一人で戦ってきたハーネイトがそのようなことを口にしたことに彼は驚きながらも、変わったなと温かいまなざしを向けていた。


「やれやれ、まだ固いところが抜けないな、阿奴は」


「それも彼らしいですな。さあて、トウガラシの栽培の続きを……」


「八紋堀、三十音に言いつけますよ」


「ぎぐっ!」


「ははは、影宗さんは相変わらずですね」


「お前らなあ、まったく。さあ、こちらも受けた被害が少なくない以上、復興に力を入れようではないか」


 そうして運転が一応できる八紋堀が王や同僚を乗せて4足歩行のからくり移動兵器「阿須頼」でホテルを後にした。


 主要な人物たちが帰った後ハーネイトは15階にある事務室に戻り、事情聴取の準備を始めていた。書記はエレクトリールに任せ、最初にだれを呼ぶか決めてから館内放送で最初の聴取を行う人物名をハーネイトは指名してから、部屋の中にある高級そうな黒革の椅子に座り、来るのを待っていた。

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