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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第133話 戦友たちとの交流


「驚きはしたわよ。あの時、あなたがどうなるか心配でたまらなかったからこそね。だけどね、それでもハーネイトはハーネイトでしょう?」


「大丈夫よ、義兄さん。貴方なら、その力をすべて使いこなせるわ」


「本当に兄貴はすごいや。だけど、無理して倒れないでほしいな」


 ハーネイトが新しい力、魔本変身を手に入れたことについて話題が上る。魔法とは違う、まがまがしくてそれで、強い波動を感じるその能力に彼女らは関心を示していた。


 それからそばにいつの間にいたアリスはハーネイトを上目遣いで見つめながら不安そうに彼にそう言った。


 城の中で彼が意識を失っていた時、誰もが彼がいなくなるかもしれないという恐怖をどこかに顔で浮かべる彼女らに、ハーネイトはその点について謝った。


「済まなかったな、あの時は。さあ、どんどん食べようじゃないか」


「ええ。ハーネイト」


「また後で話をしてほしいな」


「分かった、アリス」


 そうして会を楽しむようにと告げ、別のテーブルに移るハーネイト。少し気になっていたことがあり、自身の配下たちのいるテーブルに向かい彼らに声をかけた。


「3人とも、料理やお酒を楽しんでいますか?」


「ああ。本当に質の良い酒や魚だ。主殿、今回も無事に終わりましたな」


「途中死にかけたけど」


「主殿は無茶をしすぎですぞ。いつもひやひやさせられますからのう」


「ハーネイト様、ご無事で何よりです。帰ったらあなたの好きなパンケーキを焼きましょうかね」


 普段まじめな生活をしている彼らがどうなのか気になったが、それなりに食事を楽しんで話をしているところを見てほっとしたハーネイトは、ミロクやシャムロックに謝り、ミレイシアの言葉に喜んでいた。


「ああ、うれしいな。やはりミレイシアの焼いたパンケーキが一番だ」


「そういって下さるとありがたいです」


「少しは彼女も雰囲気が丸くなりましたね」


「しかし、体調管理といい、あの時の一件といい、もう少し厳しく教育をしなければなりませんね、フフフ」


「ま、え、嘘、だろ?その笑顔怖い、怖いって」


 いいムードかと思いきや、彼女になぜかスイッチが入り彼の肩をがっしりつかみながら恐ろしく凍てつく笑顔で見つめる。その光景は彼らの周囲が一瞬にして氷河期になったようで、それに顔が引きつるハーネイトであった。


「これはまだまだあれですな」


「そう簡単に人は変わりませんよ。ハハハ」


 2人のやり取りを見たミロクとシャムロックは少しため息をついてそう言う。けれども変わったことがあることはわかっていた。主であるハーネイトの表情が以前よりも豊かでより人らしくなったことに二人はほっとしていた。


「ふう、やはりミレイシアは怖い、マジ怖い」


「おいおい、またあの女メイドに何かされたのか?」


「い、いえ」


「確かに俺も恐怖を感じたぜ。よく雇ったな、確か元犯罪者だったよなあ」


「実は、そうではないのです。彼女は、自分と同じ血徒の血を浴びても何ともない存在で、汚染が広がるのを防ぐために各地で戦ってきただけなのです」


「そうだったのか、それならあれだな。しかし、血徒か。あのセファスという魔法使いまで支配されていたのがな」


 彼女から逃げてきたハーネイトは、優雅に食事を楽しむ機士国王と配下の近衛兵と目が合い話をする。


 ルズイークが右手にウィックという度の強い果実酒のボトルを手に持ちながらハーネイトの事務所で起きたことを話し、彼女が怖いことについて意見を共有した。


 また彼の質問に対しミレイシアは過去にそういう経緯で戦っていたことと、仕事面では何ら問題はないこと、料理の腕がいいことについて触れ、それに納得したルズイークはさらに酒を飲む。


「まあ、確かに特に落ち度はないな、ハハハ。いい部下を持ったな」


「兄さん、少しお酒が回ってませんか?ハーネイト、本当に今回もありがとう。機士国の民を代表して私がお礼を申し上げます」


「いやいや、しかし、今回の余波がどれだけ来るか……」


 ハーネイトが心配性であることは付き合いで分かっていた機士国王は彼の表情を見て、静かに微笑んでから落ち着くように諭すのであった。


「今焦っても仕方がない。エージェントたちには悪いが、追加で残りの拠点に残された情報の回収を命じている」


「だから今は体を休めてね」


「そうだぜハーネイト。働きすぎは毒だぜ」


「兄さんはもう少しまじめに仕事してくださいね」


「フッ、そう、だな。今度、釣りに行きましょうね」


「ああ、そうだったな。支度をしておこうかね」


 そうして改めて、休暇についての約束をしたハーネイトは手に持った皿に盛ったハムとサラダを食べながらみんなの様子をうかがう。楽しそうにしている中で、妙な空気を漂わせているエリアを見つけ何があったのか確かめに行った。


「ボルナレロ、ホミルド、そしてハイディーン……やはり、気まずいか?」


「全くないとは言えないな、ハーネイト」


「本来なら俺はこの場にいてはいけない」


「気持ちはわかるよ、だけどあまり細かいことは気にしないほうがいいかも……」


 研究者たちは今回の戦いで大きく貢献し、特にボルナレロたちの研究のおかげで早く敵の拠点を見つけ出せた。そのことについてまず礼をし、ハーネイトは彼らの活躍をねぎらった。


「変わったな、ハーネイト」


「以前よりも成長したな。どこまで成長できるか楽しみだなあ、ボルナレロよ」


「ええ。しかし、彼頼りではいけない時期が来ているのかもしれません」


 そして気まずいという彼らに対し気にするなといったことについて、以前の彼を知るものは性格に変化が生じていることに驚いていた。


 またハーネイトの師の1人であるホミルドは彼の今後が期待できるといい、それにボルナレロは彼だけでない英雄の存在も必要になるなといい、ハムを口に運びながら今までの戦士たちの戦力を脳内で分析していた。


「それは私自身、痛感しました。今まで自身の身がこうなるなんて考えたこともなかったですから。だからこそ、各地から猛者を集め教育及び解決屋の仕事を行う機関の設立が必要ではないかと考えました」


「考えているんだな。そういや近いうちに5か国協議があったが、そこで提案するのはどうだ?」


「そう、ですね。多くの人たちに呼び掛けたいですからね」


 実は彼が倒れてから以降、彼自身は戦いが終わった後、ある計画を考えるようになっていた。それは各地から優秀な戦士を集め、魔獣をはじめとした異世界の脅威に立ち向かう組織の設立であった。


 自身の活動にも限界はある。そしてそれぞれの地域で活動をする者もいるが連携や情報共有といった面でどうも弱い面があることは把握していた。


 そこで自身の今までのノウハウを多くの人に教え、今後自身に何かあっても、巨大な脅威に対抗できる人材を育成すればより早く勝負がつく。そう彼は考えていた。


 今回の戦いで新たな仲間ができた。そして敵側からも引き込んだ10人の強力な戦士たちがいる。彼らの居所を作るといった面でも、漠然としながらもこの先訪れるもっと恐ろしい脅威に対し必要だとハーネイトはボルナレロたちにそれを説明した。


 それについて話を聞いていた人たちは全員賛成し、もっと人を集めるために近いうちに行われる国家間の協議に参加すべきだと言われたハーネイトは、その通りだと言葉を返した。


「ハーネイト、こんな時に悪いが、いまだ行方不明な研究者が3人ぐらいいるんだ」


「何……?た、確かに、アーノルドやヴィンコッフがいないな」


「実は彼らは……」


 ハイディーンもそれを聞いて賛成した後、元気なくそう彼らに話した。彼が名を挙げた二人は研究仲間であり、また後輩でもあった。その二人の行方がまだわからないことについて彼は気が気でならなかったのであった。


「そうか、教えてくれてありがとう。君の仲間がそうなっていたとはな……見つけ次第連絡しよう」


「もし、あの連中の影響をもろに受けていたら、その時は……」


「大丈夫だ、どうにかしてやるよ、しかし、サインの奴はどこにいるんだ」


 もしかすると敵側に何かされたのかもしれない。敵のリーダーは倒れたものの、おそらく残党がいるだろうと考え、そいつらにまだ捕らえられているのではないかと考えていたハイディーン。ハーネイトは二人もできるだけ助けると約束した。同時に、彼はある男について心配していた。それからまた後で話をしようと約束をし、一旦その場を離れ食事をしながら歩き、弟子であるリシェルたちの下に足を運んだ。


「さて、さっそく嫌な予感が的中したが……。それにしてもリシェルたちは楽しんでいるかなっ……これは、うーん」


「宇宙海賊か、確かに興味あるな」


「ほう、だったら俺のところに来るか?」


 4人掛けの席で、リシェルとアルポカネ、エレクトリールとクロークスが座り中年の2人が話をしていた。そしてその隣で気まずそうな顔をする若い二人に声をかける。


「リシェル、エレクトリール、こっちに来ないか?」


「え、ええ」


「ふう、助かったっす。爺さんとクロークスのおっさんがなんか恐ろしい話をしていて空気が……」


「……楽しそうなのでそっとしておこうか。まあ大丈夫でしょう。同年代みたいだし、何か腹を割って話したいことがあるんでしょ」


 リシェルいわくアルはクロークスの話に興味をもって何か金儲けをしようと話を進めていたそうであり、その内容についていけてない状態であった。それについてエレクトリールが謝り説明をする。


「父さんは昔から破天荒で、予測のつかない人でした」


「みたいだな」


「また戦艦の修理が終わったら旅に出るそうです」


「そうなのか……行く前にせめて次元力の秘密を聞き出したいものだ」


 宇宙戦艦を呼び出し自在に砲撃を行う男、クロークス。流石彼女の父だけあってやることなすことが無茶苦茶であるところに血の繋がりがあるなとハーネイトは思いつつ、自身の親のことについて気になっていたのであった。


 それとさらなる力の飛躍のため次元力についても研究しようと決めたハーネイトはその由来について彼らから聞き出そうと考えていた。


「師匠、俺は一旦故郷に帰ります。姉さん、兄さんと話がしたいんです」


「ああ、分かった。思う存分話して、すっきりしてくるといい」


「ありがとうございます。いつでも、必要な時は呼んでください。短い間でしたが、あなたのもとで戦い改めて大切なことを学びました」


 リシェルはハーネイトに感謝していた。憧れの人とともに各地を駆け回り、貴重な体験ができたことに。そしてそれを今後に生かそうとしていた。


 ハーネイトはまだ彼に、新たな計画の話はしていなかったが、心なしかそれを察したりシェルはいつでも駆けつけて協力すると意思表示をしたのであった。


「師匠はこれからどうするのですか?」


「一旦リンドブルグに戻ってから、機士国と日之国を訪問して、あとは……また予定が頭の中でぐるぐるしている!!」


「お、落ち着いてください師匠」


「ハーネイトさんはメモをしないのですか?」

 

 またも彼の悪い癖が出て、二人はどうにか落ち着かせようとした。そして冷静になった彼は二人に済まないと謝った。


「これからはそうしよう…」


「貴方はしっかりしているのか抜けているのかわかりません」


「それはエレクトリールもだろう?」


「全く、2人はどこか似てますね。んじゃ俺は隊長の所に行ってきます」


 そうして、リシェルはルズイークについていきその場を離れた。二人が小声で話をしているのを見届けてから、椅子に座ったハーネイトは窓越しに外の様子を少し見ていた。エレクトリールも同じく外を見ながら、静かに彼に話しかけた。


「ハーネイトさん、今までだましていてごめんなさい……」


「何に、ごめんなさいといっているのか?」


「私自身のことも、あのアイテムのことも……いや、すべてです」


「そうか、少なくともな。私はエレクトリールが早めに来てくれたおかげで重要な人物の救出も、一連の異変に気付くこともできた。それについては感謝しているくらいだ」


 彼女の言葉に、ハーネイトは女神のように美しく微笑んだ後、感謝していることを告げ彼女を驚かせた。


「ですが……。それに私はもう故郷には戻りません」


「……戻らなくていいのか?」


「はい。正直私にはあの星は居場所がありませんでした。けれどここは違います。私のことを、ずっとお側においてください」


「……約束してくれるか?私は、失ったりいなくなるのがとても怖くて、たまらない。ずっとそばにいて、私を支えてくれるのか?」


 今まで抱いたことのなかった感情。エレクトリールはその芽生えたそれを大事にしようと、彼に尽くすことでそれを守ろうと考えていた。


「はい、勿論ですとも。ご迷惑をおかけした分恩はしっかり返さないとですね」


「ああ、そうしてくれ。さあ、たくさん食べるといい。料理をいつもよりかなり多めに作ってもらっているから気にするな」


「あ、ありがとうございます。ハーネイトさん、やはりあなたは最高です」


「フッ……」


 そうして、すべての料理を食べようとエレクトリールは彼の下を離れた。すごく嬉しそうに、片っ端からバイキングで食事をとっては猛烈な勢いで食べていた。その光景を離れて微笑みながら見ていたハーネイトは、思わずこうつぶやいた。


「エレクトリールか、かつてほかの星を侵略し技術を奪った異星人の末裔。吉と出るか、凶と出るか、彼女はわからないな」


 ハーネイトは、近いうちに多くの戦友が集まることを考えながら、彼女に対しても大きな期待を抱いていたのであった。


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