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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第132話 楽しい一時の始まりと友との再会


「ルテシア、ナイスフライトだったよ。さらに操縦の腕が上がったかい?」

「え、ええ。ハーネイト様。褒めて頂きありがとうございます」


 ミスティルトシティに数時間してやっと到着した彼らは、近郊にある広場にトランスポーターを着地させた。数十トンのペイロードを軽々と運べるこのVTOL輸送戦術機は魔法工学の技術と古代人の技術が合わさり生まれた最新鋭の装備であった。操縦するのに癖があるが、それを丁寧に操縦し、なおかつ飛行技術の発展を妨げている見えないオベリスクの影響を避けながら操縦して見せたルテシアの腕前をハーネイトは高く評価した。


 また、自分も製作に関わってきたとはいえ、再びこの星の空に鳥や竜以外のものを飛ばせたことについて喜びを隠せずにいられなかった。


 長い旅の中で、見えないオベリスクの影響範囲やその理由についても同時に調べ、膨大なデータをまとめた集大成がようやく実を結んだことに、今まで苦労してきたかいがあったなともこのとき彼は思っていた。


「ようやくついたぜ。さあ、やっとゆっくりできるな相棒」


「そうだかねえ、だけど、今は勝利を祝い、噛み締めよう」


「そうっすよ師匠。早く降りてホテルに行きましょうよ」


 そうして彼らは機体から降り、街中を吹きぬける生ぬるい南風を感じ戦いが終わったことを改めて感じていた。


「ようやく、一区切りだな」


「ええ。それと、ハーネイトさん、今まで、本当に申し訳ありませんでした」


 エレクトリールはハーネイトに対して、今まで隠していたことについて話し謝罪した。けれど彼は彼女を許した。


「……確かに、今までのことは容易に許されるものではない。DGにいたことを隠したことも、それ以前のことも。しかし、反省したのならばそれでいいんじゃないのか?前だけ見て、これからは生きていこう、お互いに、ね」


「……ありがとうございます。これからも、あなたのそばにいていいですか?」


「好きに、するといいさ。……それと、私に力をこれからも貸してくれ、エレクトリール。君からは、あの魔女のような怖さを感じない。それだけでもほっとする」


 同じ孤独を味わったもの同士だから、ハーネイトは強く言うことはなかった。そしてホテルの玄関前につくと従業員たちが彼らを出迎えた。そして涼しいホテルの中に入り、ハーネイトは全員がいるか確認をしていた。


「お待ちしておりました、ハーネイト様。すでに準備はできておりますよ」


「すまないな、いろいろ無理をさせて」


「確かにそうだな、だが、おめでとう。また歴史に名を刻んだな」


「あなたはあの時の。ヤカニさん、元気にしていましたか?」


 ロビーのソファーに座っていた一人の男が近寄ってきた。そう、リシェルとともに以前助けたゼルベット連合の商人ヤカニもこのウルシュトラを訪れていた。実はホテル側からの要請で会に必要な食材を集めてきてもらうように頼まれていたという。


「ああ、おかげさまでな。今回のパーティーに必要な食材を連合から集めてきた。どこぞの誰かさんが連絡してきてな」


「そうでしたか。お手数をおかけいたしましたね」


 ハーネイトは至って物腰柔らかく、口調もそれに応じた感じで話を進める。こういった姿勢が、様々な場面で彼を助けたといえよう。


「いやいや、しかしこれで流通も元通りになる。それとリシェル、あの時より顔つきが精悍になったな」


「そうっす、か。予想より戦いは早く終わりましたが、でも、自身の至らなさと世界の狭さを実感した旅でした」


「そう、か。だが、一つ一つが自身の糧となるだろう。私の仕事も、似たようなものだ」


 そして話をしている光景を見たリシェルが近寄り声をかける。そしてヤカニの言葉に対しまだ未熟ですと返す彼に、自身の体験談を踏まえた経験の大切さを改めて説くヤカニであった。


「空の旅、いいわねえ。使い魔とは違った景色。彼らに協力したおかげで、色々楽しめたわ」


「姉さん……もう。あれ、風魔さんと南雲さん、どうかしましたか?」


「え、あ、少し酔った、だけよ」


「まあ、大丈夫だお二人さん。それより早く会場に行こうぜ。お腹空いたよもう」


 一方で南雲と風魔、ミカエルとルシエルはすぐにソファーに座り、だらけきっていた。どうも忍者たちは少し酔っているようで、あまり気分がよくなさそうに見えた。


 戦いの中で、機士国や龍教団の人たち以外に傷を負ったのは忍者たちであり、その影響がまだ残っているようであった。けれど問題ないといい、いつ会が始まるか彼らは楽しみにしていた。そして機士国関係者も集まって話をしていた。


「こうも人望があると、さぞ大変だろうな」


「確かにそうですね。ですが、彼の今までの功績は、誰もが憧れるものですよ国王」


「そうよね。そして彼に匹敵、いや同等の力を持つ人たちがこんなにいたなんて、驚きだわ」


 今回の事件で、分かったこと、至らなかったことを実感させられた機士国の王とその側近。二度とこのような過ちを繰り返さないと決意しながら、ハーネイトのほかにも頼れる人材が多く存在していたことにほっと胸を撫で下ろしていた。


「今まで同じセリフを、私たちは何回言わされただろうな」


「夜之一か、来ていたのだな」


「ああ。私たちも件の研究者達の支援をしていてな」


「ボルナレロたちか、彼らには申し訳ないことをしたな」


 操られていたとはいえ、彼らに取り返しのつかないことをしてしまった機士国王は終始表情に影を落としていた。


「彼らはハーネイトの傘の下、一致団結して国の危機を救っていましたよ」


「ああ、だがいくら魔導師に洗脳されたとはいえ……」


「……確かに、あの一連の事件は爪痕を残した。しかしもう戦いは終わった」


「ボルナレロ氏、ホミルド氏、それに皆さん」


 地下室からエレベーターでボルナレロたちとアリスが上がってきて彼らに声をかけた。そして全員を代表し、ボルナレロが言葉を発する。


「この際、あの時のことは水に流しましょう。今は、全員が無事に帰ってこられたことを祝いましょう」


「確かに、そうだ」


「会場は2階のレストランだとな。おい、片づけ次第すぐに行くぞ、皆のども」


 ホミルドが他の研究者たちに声をかけ、パーディーの準備を進める。その光景を見たルズイークたちは以前よりも絆が深まっているのではないかと感じていた。そしてハーネイトは改めて、自身が思っていたよりも世界が広く、その分だけ素敵な人がいる。そう思っていたのであった。


「仲直り、できたみたいかな。今回の戦い、多くの事件、それに出会い。世界って、やはり計り知れないほどでかい」


「お帰り、ハーネイト。一時はどうなるかと思ったが、新しい力、見事だった」


「あ、ああ。ボルナレロ。君たちの力があったから、あれだけの大軍勢が一糸乱れぬ動きをとれた。あとで、食事をしながら新しいビジネスの話でもしないか?」


「フッ、そうだな。しかしパンケーキばかり食べていると体を壊すぞ?って、流石に宴会でそれはないな、すまん」

 

 ハーネイトが大の甘党なのは昔からの付き合いで分かるボルナレロ。体に気を使えと言いながら、今後の話についてあとで話を酌み交わそうと約束する。


「皆さん、料理と飲み物の準備できていますよ。2階に来てください」


「済まないなルテシア。皆さん、話の続きは会場に入ってからですよ」


「そうっすよ、折角豪華な食材と腕の立つ料理人を連れてきたんすからね。楽しみましょうね!」


 そしてパーティーの準備ができたことを知らせるためルテシアとアリスがホテルのロビーにいる全員に声をかける。そしてリシェルや南雲、魔女たちが続々と会場に向かう。


「……私たちは、参加する立場にはないわね」


「ううむ、もとは敵として争うはずだった」


「しかし、俺たちはあいつらのおかげで呪縛から解かれた」


「複雑な、立場ですねえ」


 そんな中、ホテルの片隅で集まっていたリリエットたちを見たハーネイトがどうしたのかと声をかけた。


「……来ないの?リリエットたち」


「……だって、私たちは元敵よ。それにハーネイトには、あの時とても申し訳ないことをしたわ。償いきれないわ」


「だけど、結果的に、味方になってくれたじゃないかみんな。君たちのおかげで、自分が何者か、迫るきっかけができた。それは、自分にとって一番大切な事だった、から」


 確かに事情が事情なら、命の奪い合いをしていた関係である彼らだが、ハーネイトの機転、そして能力。それが彼らを助け、結果として戦争の早期決着につながった。


 また、何よりハーネイト本人が悩んでいた、自分の出自についての謎がどんどん分かってきたことが何よりもうれしかったと言う。


 それをハーネイト本人は自覚したうえで、一度でも共に肩を並べ戦えば、戦友だろうと彼らにそう言ったのであった。


「しかし、いいのか?大将さんよ。厄介になるが……」


「DGは消えた。しかし故郷をなくした人も多い。俺も、ボガーたちもだ」


「ああ、それはわかっている。……それで、改めて聞くがどうしたい?」


 ハーネイトの寛大な処置、そして懐の大きさに感嘆するも、ボガーたちは内心申し訳ないと思っていた。そして彼らの境遇も把握したうえでそう彼らに質問をするハーネイト。その返答は、予想通りのものであった。


「俺たちもユミロと同じ、あんたの下で働きたい」


「……この星のことを、教えてほしい」


「……ああ。しかし実力はもう一度確認させてもらう。仕事柄、強さをどうしても求められるからな。それと多くの人に認めてもらうためには私と剣を交えて力を見せつけないと、いい仕事をもらえない。それがこの星の人たちの特徴だ。長い間、転移による事件で多くの人が苦しんでいた故にな」


 自身の旅の経験も踏まえた、この星で生き抜くための秘訣。それを彼らに教えるハーネイト。彼自身も彼らとの出会いで大きく成長したといえる。


 事情は複雑であれど、少しでもさらなる高みを目指したい。向上心の高いハーネイトは全員を迎え入れたかったのであった。それから、この星の出身でない人にもわかるように、この星の歴史やそういう考えに至った経緯を話した。


「了解、いいぜ。伊達に戦っていたわけじゃねえ」


「まあ、話はそのくらいにして、参加しましょうかね」


「今回の戦いもあれだったけど、異星人も転移生物も、脅威にしかならないよね。……これからは本来のDGの目的通り、ハーネイトみたいにみんなを救う存在として私たちもできることをしないとね。ハーネイト、改めて厄介になるけど組織の長として、頼んだわよ」


 ボガーとシャックスはそれぞれそういった後、リリエットは静かに、これからの決意を口に出した。それに一同は同じくうなづいた後、ハーネイトはユミロたちを連れてレストランに入る。


 すでに何人かは酒盛りを始めており、会場は大きくにぎわっていた。幾つもある大きな丸いテーブルには豪勢な料理と貴重なお酒の数々。


 これはハーネイトとバイザーカーニア、そしてゼぺティックス社の経理部が用意したものであった。勝利を共に、盛大に祝うのは彼らが毎日を必死に生きているからである。今日も勝って生き延びることができた。それを感じるための儀式でもあるといえる。


「おお、やっと主役が来た」


「リラム、ハルディナ、みんな来ていたのか」


「ええ。それにしても、私も折角手伝ったのに何にも声をかけてくれなかったのね、寂しいわダーリン?」


「すまない、ハルディナ。……ありがとう。あれから話は聞いた。相変わらず気閃グランシエロの威力はすさまじいな」


 ハーネイトは彼女らが来ていたことに驚いていたといいながら、リンドブルグの住民たちも奮戦し勝利に貢献したことを称えた。


「ハルディナ町長はダグニスから決戦の話を聞いて真っ先に駆け付けたんだ。私たちもついていくのがやっとでな」


「確かにそうだなリラムさん。それと俺たちも陰で戦っていたんだぜ。異郷の地に飛ばされて何やってんだかと思ったが、まあ悪くねえ」


「これでまたファンが増えますね、ハーネイトの兄貴!」


 リラムはハーネイトに、ハルディナ町長がいてもたってもいられずここまで来たことを話した。彼女は彼が町を出る時に渡したレジアナダの宝石の対の一つから感じた嫌な予感を感じて加勢に来たことを説明した。また婆羅賀とアリスはそう言いながらハーネイトたちの活躍をほめたたえていた。


「はは、みんなすごい行動力だね。ありがとう。今回の戦い、一人じゃ決してこうまではいかなかった」


「いいってことよ。落ち着いたらまた、息子たちとともに料理研究しようや。さあ、あそこのお嬢ちゃんたちが話したがっているみたいだ。俺らが作った料理も堪能してくれ」


「ああ。たまには甘いもの以外も食べないと、な」


 リラムは、息子とこのホテルで出会い協力してパーティー用の料理を作っていたという。彼自身は戦闘向きではあまりないため、役割分担ということで自分のできることを行っていたという。


 すると彼に対し笑顔で昔のようにまた研究をしようといい、ハーネイトはそうだなと言葉を返し笑顔を彼らに見せた。


「どう?みんな。食事は楽しんでいるかい?」


「ええ、噂には聞いていたけど、本当においしいわねこのホテルの料理は」


「まあな、この私が料理長だからな」


「俺は本業じゃねえが、大分板についちまったよ」


「……!テッサム、それにシザッツ!」


 バイザーカーニアの女性社員たちと話をするハーネイトに二人の男が近づき声をかけた。二人ともコックの格好をし、一人は金色短髪、もう一人は濃い灰色で少しウェーブがかかった褐色肌の男。


 彼らはハーネイトやゼぺティックスの友人であり、共に夢を目指し突き進んでいた料理士テッサムとカリスマ美容師シザッツであった。彼らはDGの侵攻により店を壊され、一時的にこのホテルに身を隠しながら仕事をしていたという。


「よう、我らがヒーローさん」


「しばらく見ない間に、いい顔つきになったな」


 もう10年近くも顔を合わせていなかったため、ハーネイトと二人は互いに驚いていた。しかし元気そうな顔を見合い、3人はフフッと笑いながら今まであったことを話す。


「あいつらのせいで店を壊されてな、都合よくバイザーカーニアの仲間に出会ってここを紹介してもらったのさ」


「活躍は聞いていたぜ。相変わらず鬼神の如き強さだな。地獄の鬼がロケット乗って逃げ出すくらいにな」


「そんな大げさな。しかし、つらい目にあったな。もっと私がしっかりしていれば……」


 彼らの説明を聞いたハーネイトは、もっと早く動けば彼らがそのような目に合わなかっただろうと悔しい表情を見せ、歯を食いしばっていた。しかしそれは問題ないと二人はいい、ハーネイトを励ました。


「まあ、人生そういう時もあるさ。それでハーネイト、少しは自分の正体分かったか?」


「ええ、おかげさまでね。だけど、頭の整理が今一追いつかなくて。とんでもない存在だってのは、分かったけど」


「それもそうだろうな。ハーネイトの秘められた力はもはや比較対象外だ」


「ゼぺティックス、お前もいたのか」


 魔女との戦い、そして遺跡で起きたことを話したハーネイトは、まだ頭の整理がつかないと正直な感想を述べた。口に出さないとやってられないといいながら大きく息を吐いた時、彼らの後ろから一人の男がやってきて話しかけた。


 その男はゼぺティックスであり、紺色のスーツを着こなしてきちっと正装でパーティーに参加していた。


「ああ。ハーネイト大先生から直々の依頼でな。大分働かされたが、これでまた通常通り営業できる」


「済まなかったなロジャー。おかげで多くの人員を効率よく展開できた。みんな、本当にやってくれたよ」


「いやいや、あのバカでかい化け物にとどめを刺したハーネイトこそ、な。あんなおぞましい化け物、私たちだけではどうしようもないからな。力の件で悩んでいるのは知っている。だが、俺は信じているぜ大先生。その力を、私利私欲に使うような男ではないことはな」


 自分たちの仕事はあくまで兵器を人を救う道具に作り替えることだといいながら、今回の任務は割に合わないといいつつも、初めてハーネイトが自身のことを頼ってくれたことに喜んでいた。いつもどこか一人で解決しようとしていた彼が変わったなと思い、ゼぺティックスは内心安心していた。


 そしてモニター越しで見た変貌した魔女の話をし、大型の脅威に対して対抗できる存在はやはりハーネイトぐらいしかいないだろうと言い彼の活躍を讃えたうえで、彼は力を誤って使う男ではないと信じていると言う。


「そうよねえ、まさかハーネイトが龍の力、だっけ?それで変身するとかびっくりよ」


「ええ、それと彼の体が心配だわ、姉さま。あれから問題はありませんか?義兄様?」


 話をしているハーネイトたちにそっと声をかけたのは、着替えて華やかなドレスを身にまとっていたミカエルとルシエルであった。


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