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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第128話 遺跡の番人アーロンVSハーネイト



「遺跡への脅威はこれでなくなったな。私の代わりに遺跡を守ってくれたことは礼を言おう」


 彼らの下にゆっくり向かう1人の若い男。茶髪と金髪で分けられた髪、青い服に黄色で不思議な模様が入っている、体に綺麗に密着したボディスーツ、そして腕に纏う光の帯。そしてそのまなざしは、見ただけで凍てついてしまうほどに冷たかった。


 大分体力を消耗しているハーネイトは警戒しつつ、まずは男の素性を探るため名前を聞き出そうとした。


「ああ、俺の名前はアーロン。アーロン・ジェイド・ヴェイン。この遺跡の番人、管理者だ」


「私は、ハーネイト。ハーネイト・ルシルクルフ・レーヴァテインだ」


「……貴様、古代人の力を、いや。なぜ龍因子を6つも持って無事でいるのだ?」


「それは私を作った親に聞きたい! 貴方も2つ、持っているでしょう」


「ほう、分かるのだな。しかし……まさか、お前あの龍討伐計画の実験体か? でないとそんな無茶な改造などできるはずがない。危険にもほどがあるからな」


 一体このアーロンという男が何を言っているのかハーネイトは頭を悩ませていた。数年前にある遺跡で究極の兵士を作る目的であらゆる改造を行うという研究の資料が見つかったことに驚いていたハーネイトであったが、その計画も利用されているのかと思うと戸惑ってしまう。


 オーダインの話もそうだが、それと同様で事実なのだろうかと疑わざるをえなかった。


「それが、俺というわけか?」


「……いいや、それは半分違う。計画被検体なら、鎖骨のあたりにリバースナンバーがあるからな。しかし、計画が危険なものであるとわかった以上、抹殺するしかない。恩人ではあるが、力を持つ以上脅威は排除すべきだ。2つの因子共鳴だけでも危険すぎる代物だぞ」


 自分がそうなのかと尋ね、しかし半分は違うと否定する。そしてそう彼が言った瞬間、突然アーロンが拳を突き出しながら突進し、ハーネイトのみぞおちを突き撃とうとしてきた。それに対して後方に瞬間移動しながら衝撃を消し、直撃を防いだ。しかしいきなりの攻撃に彼は憤りを隠せなかった。


「何をする!」


「貴様は、自身がどれだけ危険な存在かわかっているのか!」


「それは、重々承知の上だ! それでも、私はこの力を、誰かを、世界を助けるために、護るために使いたい、それだけだ!」


 アーロンはハーネイトの懐に入ると、強烈なブローをかます。しかしそれを刀で受け止め、わざと吹き飛ばされながら距離をとる。


 男の攻撃の動作が読めなかったハーネイトは、久しぶりに強敵に出会ったのかもしれないと、その表情をいつになく真剣なものにする。先ほどのセファスも恐ろしかったが、それとは別にこの男が、底知れない何かを秘めていることを感じていた。


「ほう、あくまでその強大過ぎる力を、他者や世界に捧げると言うのか。ヴィダールの連中が持つ考え方とは、違うな! だが、嫌いじゃねえ、そういう連中ばかりなら、あんなことは起きないだろうが」


「私もな! すごく悩んだよ。なんでこんなものがあるかってさ。何で生まれてすぐに、そんな異能の力を埋め込まれないといけないんだって。そのせいで辛い事ばかりっ! しかも大切な人を護れなくて、身体を狙われてっ!」


 今度はハーネイトが反撃を行う。刀を素早く連続で振るい無数の衝撃波を剣先から飛ばし、アーロンにすべてその攻撃を差し向ける。しかし彼は拳を連続で正面に向けて連打し、その衝撃で攻撃を相殺するな否や、空中に飛び上がり、強烈な飛び蹴りを繰り出す。


 しかしそれをハーネイトはバク宙しつつ鮮やかにかわし、イジェネートで形成した無銘の刀を数本回転させながら投擲しアーロンの動きを止めようとした。土煙に気配を溶かしつつ、距離をとるハーネイトは体力に余裕がないのを考慮しつつどう戦おうか算段していた。


 一体貴様に何がわかるか、そう。今までどれだけ苦しい思いをして生きてきたか、怒りを覚えつつも、それでもその力をできるだけ多くの人が幸せになれるように使うまでだと言葉を紡ぐ。 


「だけど、それでも認めてくれている人がいる。そして期待している人がいる。助けを求めている人がいる。だったらその力で、みんな幸せになれるように努力も工夫も、改善も進化もするさ!それが、亡き恩師と約束した、優しくて強きモナークになる資格だと、私は信じているんだ!」


「……ぐっ! そこまでとはな。しなくていい体験までしているようだが……、それでもぶれないか」


 その不規則な攻撃も、強烈なフックから放たれる青い衝撃波で吹き飛ばし、互いに地面に降り立った。そしてアーロンは盛大に突然に、笑い出したのであった。


「フ、フ、フハハハハハ!」


「何がおかしい!」


「いや、それだけ苦しんで生きてきたのに、なんてまっすぐで美しい心の持ち主だなと。本当にヴィダールの気運、いや、あの最悪のヴィダール、ソラの気運をもって生まれた者の言葉とは思えん。久しぶりに、すがすがしい感じがするほどだな」


 一体目の前にいる、青い服の青年は何を言っているのだろうか。ハーネイトはいらいらしながら武器の構えを変えて、無幻一刀流特有の逆手持ちになり次の攻撃に備える。


「それが、どうした!」


「フッ、その有り余る力を、私利私欲で使う者でないならば安心したが、もう少し見せて見ろ」


 まだアーロンの攻撃は続く。またも間合いを詰め、拳による連続のラッシュを仕掛ける。怒涛のラッシュが虚空を切り裂き、真空波が遠くまで飛び木々を激しく揺さぶる。それを刀と拳でいなし続けるも、時折フェイントを仕掛けられ、数発を体に受けてしまった。しかしさほどダメージを感じず、刹那の隙を伺いハーネイトは目にもとまらぬ速さで刀を振り上げ切り上げて、強烈な衝撃波でアーロンを吹き飛ばした。


「がは、ふ、ふふふ。それが全力か?」


「……ふざけた言葉を。翻ろ、紅蓮葬送!」


「ほう、背中から……! っ、それも龍の力か。あれは、かつて読んだ本にある龍の翼っ!」


 アーロンはすぐに構え、上空に飛んだハーネイトを目でとらえる。そして彼は空に赤き翼を広げながら急降下し突撃する。それに合わせ、広げた紅蓮葬送の形状を変え、巨大な拳に変えてから重力落下による力を合わせた強烈な一撃をアーロンにぶつけた。


「ぐ、ぐおおおおおお!!!」


「これでっ!」


「なかなかやるな。しかし、はああああああ!」


 アーロンは拳で一撃を受け止めながら流して、素早く右回りに回り込んで着地のスキをついてからハーネイトの顔面に全身全霊の一撃をぶつける。


「魔法衝壁三重盾!」


「ぐおっ! なんて強度だ」


 弧の一撃で終わらせるつもりだったが、計算が狂ったアーロンは後方に数回ひねりながらバク宙し、土煙を上げながら後方に滑り体勢を立て直した。


「しぶといな、もう! こうなったら、大魔法で蹴りをつけよう。昂る猛虎 吠える雷咆 その身宿りし輝光を解き放ち 黒雷纏いて万壊せよ! 大魔法21の号、黒雷虎こくらいこう


「唸れ、大気よ! コークスクリューブロウニングバースト!」


 ハーネイトは高速で魔法を詠唱し、手先から黒い雷を数本打ち出し、それに合わせアーロンは腰を低くし拳をぐっと引いて構え、腕を瞬時にひねりながら前方に強力な気をまとわせた気閃グランシエロを撃ち放った。それは彼らとの間の中央地点で触れ合い、強力な爆発を引き起こした。


 それに2人とも吹き飛ばされ、アーロンは遺跡の壁にたたきつけられ、ハーネイトはシャムロックと伯爵に受け止められた。


「すげえな、相棒。カッコいいじゃねえか。本当に、お前は理不尽な目に遭い続けても、恩師の言葉を護り続けてきたんやな。並大抵じゃできへんって」


「あの気閃、敵も見事だった。そしてあの男、どこかで見た覚えがあります、主殿」


「はあ、はあ……何て奴なんだ。2人とも、ありがとう」


 吹き飛ばされたのを受け止めてくれた二人に彼は礼を言いながら起き上がると、壁にたたきつけられたアーロンを見る。


 それからシャムロックは、アーロンを以前どこかで見たことがあったとそう告げる。


「ぐっ……、ぐ、いいだろう、合格だ、貴様」


「どういう、こと?」


 アーロンは口に溜まった血をぺっと吐き捨ててから、眼を閉じて微笑しながらそう言った。何が合格なのかと気になった彼はすぐに質問した。


「貴様は、この遺跡に入る資格、そして中にある装置を使用してもよいということだ。力を持ちながらそう振舞うなら、悪人にはとても思えぬのでな」


「まさか、あの男はハーネイトさんを試していたということですか?」


「かもしれないでござるな。遺跡の番人、か」


「まあ、それにしては若いわねえ。でも、ミレイシアさんと同じ気を感じるわ」


 一連のやり取りを静観していたエレクトリールたちは、アーロンの言葉を聞いてあの遺跡にいったい何が存在するのか興味津々であった。


 その中でミカエルは、アーロンから感じる気がハーネイト及び召使たちと同じものであることに気づいていた。だから、同じ種族同士で反応しあっていたのかと分析する。


「確かに、あの目の前にいる男は、私たちと同族です。しかし、彼はどこかで、かなり昔に見たことが……」


 その言葉に、空から降り立ったミレイシアが言葉を返しつつ、遺跡の前に立ちはだかる男の姿を見ていた。それはどこか、懐かさを感じている表情であった。


「……貴様も、この遺跡の中に何が存在しているか、薄々わかっているんじゃないのか?」


「次元融合装置か」


「ああ。あれはとてつもなく危険な装置だ。そう、かつて大消滅が起きた原因こそ、その装置の実験がもたらしたものだからだ」


「そ、それは本当なのか?」


 アーロンは遺跡の中にあるものが何なのか、そしてその危険性について話をした。ハーネイトも自身の生い立ちを探るため数々の遺跡を訪れていたが、古代人が滅亡した理由に真に迫ることはできていなかった。この次元融合という実験の資料は今までどの遺跡でも見つかってなかったというのも要因の一つである。


 またシャムロックたちは事件の目撃者であったものの、それを口にすることは決してなかった。それは、彼らにとっていまだ心に残る傷でもあったからである。


「じゃあなぜ、アーロンはこうしてここにずっといたのだ?」


「俺は、父によりここで長い間冷凍睡眠されていてな。父が、その実験の危険性に気づき私だけでも救おうと、ぎりぎりのタイミングでここに連れてこられてな」


 目の前の男が古代人ならば、なぜそこで番人をしているのかハーネイトは疑問を抱いていた。実は以前、この遺跡に足を運んだことがあったのである。


 それは約6年前で、その時は特に何も起きなかったという。そして遺跡の入り方がどうしてもわからず、その間に別の遺跡が見つかったとポプルたち遺跡調査組合から連絡を受け、一旦調査を保留にしていたのであった。それは、この中にある何かが、不気味なオーラを放っていたからでもある。

 

 なぜ今になって目覚め、こうして姿を現したのか、彼は丁寧に説明を行った。そして大消滅が起きた範囲についてと各地に点在する研究データの保管施設についての説明も行う。


「この砂漠と草原地帯が、かつてその古代文明のあったラー文明の跡地だったというわけか」


「ああ。だが俺たちの親は、各地にその研究成果を集めては保管し、管理していた。それが、お前らの言う遺跡というわけだ」


「道理で、調べても法則性が見られなかったというわけか」


 今まで6つの遺跡を調査し情報をまとめたハーネイトは、それぞれの遺跡で保管されていた情報が異なる点を思い出し、それとどう関係があるのか彼に問いただす。そして幾つも研究チームが存在し、派閥があったためそうして各拠点にチームごとの研究施設が存在することを明かした。


「ハーネイト、お前はアルレート遺跡は知っているか?」


「ああ、そこで、巨大な機械の巨人を見つけた」


「で、それはどこにある」


 彼の言う遺跡、アルレート遺跡に眠っていた鋼鉄の巨人。それはMFイタカのことだろうと思い、ハーネイトは場所について説明すると彼はほっとしたのか、他にも彼にいくつか質問をしていた。


「まさか、テコリトル星人の力まで行使できるとは。どういうことだ……」


「やはり、おかしいと思っていました。なぜあなたと伯爵さんがあの次元倉庫の力を行使できるのか、疑問を抱いていました」


 エレクトリールは彼らの話に割り込む形でハーネイトのそばに足を運ぶ。そして自身がその星人であることを明かし驚かれるも、話をしたのであった。


「かつて私たちテコリトル星人は、この星を侵略しようとしました。しかしあなた方の力が予想以上に強大で、結局は撤退しました。けれども、あなたたちの技術は回収し、それをもとに発展してきました。しかしなぜ、私たちの力を……」


「その力も、恐らく回収していたと言う見方もあるが、私はその次元を感知する力も、霊量士とお前らが言うヴィダールの力と関係があると見るぞ」


 そうオーダインが話し、改めてハーネイトの体の秘密を知ろうとするものがどんどん増えていくのであった。

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