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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第123話 血徒と化した魔法使いセファス


「あれは、不死の軍団かっ!」


「なんておぞましい。死霊術は協会では禁術扱いだわ、それを使うだなんて……とんでもないことをしてくれたわね」


「しかしあれは、この世界の魔法。この感じ、やはりお父さんの最初の弟子ね」


セファスオスキュラスが発動した死霊術により、草原に現れた無数の骸骨兵やゾンビの群れが大海嘯のように遺跡に迫る。それは同中にあるものすべてを飲み込み死に誘う陸の津波とも言えよう。既に遺跡の防衛に関しては全軍は把握していたため、50万以上の死者の軍勢に対しそれぞれが攻勢を仕掛けようとしていた。


「な、あれは死者の群れだと? ぬう、兵を一旦引かせるほかないな。敵の出方を窺わないとな」


「もしかすると紅儡を生み出す怪物、血徒かもしれん。……ああ、これはまずいかも」


「ようようそこのおじいさん!」


「誰だ貴様は」


「私はハルクス龍教団のマーフィーと言います。あの手の死者軍団に対抗する魔法をあなた方の兵士たちにかけたいのですがどうでしょうか? 光の魔法なら浄化できます。血の怪物となると少し工夫が必要ですが」


 そんな中、あまりの勢いに圧倒され、兵の配置を変更しようとしていたガルバルサス司令官は、空から翼竜に乗っておりてきた若い金髪碧眼の男と話をしていた。


 彼は例の龍教団において、龍騎隊のリーダーを務めるマーフィー・エルカルゴという男であり、龍教団が機士国および日之国と連携し、軍勢を包囲する作戦を行いたいと伝達してきたのであった。


 実はこのマーフィーも古代人の力を持っており、独自に対死霊、血徒用の魔法術を開発していると言う。彼も実は再葬機関という組織の長を務めていた時代のハーネイトの元部下であり、数少ない紅儡及び血海との戦闘を生き延びた優秀かつ強力な戦士でもある。


 そんな彼はハーネイトから紅儡にならない防御魔術を習っており、また通常兵器が一切効かない紅儡に致命傷を与える強化魔法を今いる人たちに施すと話す。


「ほう、いいだろう。やってくれ」


「了解しました。こちらは西側の防衛ラインを築いています。あなた方は東側から挟撃をお願いします」


「ふん、分かったとそちらのお偉いさんに言ってくれ」


 ガルバルサスは作戦の内容を聞き快諾し、至急全軍に伝えるように副官らに伝えた。そして通達を終えたマーフィーは翼竜に乗り、教団のいる部隊に戻っていったのであった。


「ハーネイトたちに後れを取るなお前ら!」


「おう! 勝利は我が王と、仕える英雄のためだけにあり!」


「然り! さあ、わが軍の勇猛たる兵士よ。死者に対し数人で確実に抑え込み撃破しろ。傷を受けたものは速やかに戻れ。よいな!龍教団の後方部隊が治療してくれると」


「了解しました! では、いくぞ!」


 マーフィーは撤退時に、機士国の兵たちに魔法で光属性の魔法を付与し、不死軍団に対して全武装が有効打になるように支援を行った。それを確認してから、ガルバルサスは全軍に対して命令を出した。


 先ほど彼がハーネイトから学んだ魔法の中には、一時的に古代人の力が薄い人でもある程度まで能力を引き出させるものがあり、また武器や防具に霊量子を付与させ攻防を補助する。といっても彼も自分たちの力がそういう物質だというのは知らないためあくまで特殊な能力を持っているなと思いつつ味方の支援を継続していた。


「往々、みんな元気にやってくれてるじゃねえか」


「そうね。ここまで多くの人が戦いに参加しているのは初めて見たわね」


「それにしても、ここまで死者の軍勢を操るとは。そしてあれはっ!」


伯爵とリリー、魔女たちは戦場を飛行しながら全体の状況を確認しては後方に伝えていた。そしてその軍勢の中で、奇妙な動きが見られた。突然弱小な魔獣が巨大化し、進軍を開始したのであった。


 そしてそれに気づいたエレクトリールやリシェルは通信を通じて仲間たちに敵の状態について伝えつつ、変化した魔獣を優先的に狙うように通達したのであった。


「ちっ、狙いはそれか。確かに理論上可能だが、そうなるとまずいな」


「デモライズカードを、ああして使うとはねえ」


「やるじゃねえか、あれならいくらでも化け物大量生産祭りだぜ!だが、美しくねえ、美しくねえな!」


 敵のやり方が気に食わないとカッと表情をまるで悪魔の形相に変えてから、伯爵は滑空しながら両手に力をためて、菌のノイズ弾を形成し発射しようとした。


「じゃけん、醸して喰らい殺す!」


「伯爵、少し待て!」


「へへ、こんなやつらは、ってぬおおおお!」


 しかしそれを地上からの魔獣及び機械兵による対空砲火で邪魔され、一旦体を分解して姿をくらませる伯爵。予想以上の反撃に少し苦笑いしつつも、すぐに体勢を立て直した。


「ちっ、なんだあれは」


「敵の軍勢、なんて火力なの。でも、ここで引くなんてできないわよね」


「ああ、だがこちらの魔法は昇華し、進化している。誇りに思えリリー。今まで教えた中で一番優秀な君なら」


「ええ、分かったわ師匠。伯爵と合流してきます。どうかご武運を」


「まずは遺跡に迫る連中を押し戻す!」


「了解!」


 そうして散開した後、ミカエルたちと合流したハーネイトは飛行しながらペン型投げナイフを上空から投擲し、敵の陣形を崩そうとする。そして魔女飛行隊に対し徹底的な魔法爆撃を行うように命令を出した。


「ハーネイト師匠たちもやってるな。これほどの戦力が瞬時に現れるとか反則だぜ」


「とりあえず、遺跡の入り口は2つだけみたいですね。私も、全身全霊で戦います」


「エレクトリール、ああ。わかった。ハーネイト師匠に勝利と休暇を!」


「行くぜ、迫り繰るあの軍勢を焼き払う」


 リシェルとエレクトリールはやや戦線から下がり、敵を狙いやすい高台まで移動すると、再度迫りくる敵の軍勢に対し銃撃や電撃を無慈悲に放っていく。


 その間にも副司令官でもある伯爵は、全員に分散して敵の戦力を削るように命令を出し、各自散開したのであった。


「皆さん、好き勝手にやっていますね」


「一見統率がないように見えるが、それでもうまく敵の大軍勢を包囲しつつある」


「確かに不思議ですね。ですがこちらも後れを取るわけにはいきませぬ。あの軍勢を食い止めなければ、他の国にも被害が出ますゆえ」


「そうですね。では、皆さん。私たちも行きましょう」


 大森林帯の中から数人の男の声がし、次の瞬間草原地帯を爆走する男たちがいた。そう、先ほど合流していた日之国の剣士たちである八紋堀と田所、郷田とアポロネスが戦線に駆け付け、敵の陣形を崩そうと各自攻撃を仕掛ける。


「ぬっ、こうも数が多いと、やり、づらいのう!」


「八紋堀、ここは少し下がった方がよいのでは?」


「おかしいな、あれの気配はするが紅儡はまだ出てきておらん」


 しかし圧倒的な死霊の軍勢に包囲されつつあった4人。そして田所の意見を聞きつつも、八紋堀は二振りの刀を巧みに振るい、文切流「大文字切り」で敵の包囲網を一撃で蹴散らし、それに続き同僚たちも鍛えられた剣技で魔獣と死霊の混成部隊に強烈な強襲を仕掛けていた。


「さあ、見つけたぞ。死霊使い!」


「くッ、だがしかし、貴様らはここで死んでもらう!」


 そんな中飛行魔法を使いながら逃げていたセファスオスキュラスは、追いつかれると考え急に方向転換をし、手にした杖を突き出し迎撃の構えを取っていた。


 いよいよ、DGを長い間裏から操り、かつての侵略戦争に関して味方を裏切り敵に寝返り、術を完成させるために紅儡を生み出す怪物に身を貸した恐ろしい魔導師との対決が始まる。

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