表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
123/209

第119話 魔女の罠・死の箱舟と古代兵器MFイタカ


「遅れて済まなかった。全員無事か?」


「ああ、どうにかな。しかし手ごたえがなさすぎるぜ相棒。これなら慎重に事を進める必要、なかったんじゃねえのか?」


「DGの戦力を、私たちは過大に評価していたのかもしれません」


「いや……、油断はするな風魔。魔法使いというのは、幾つも罠を張る周到な者が多い」


 ハーネイトは全員の無事を確認しながら、巨大な灰色の結界の方を見ていた。それから伯爵が、敵の防御がひどく手薄で罠を張っている可能性が大であることを告げた。


「私たちの仲間は、ひーふーみ、ゴールドマンを除いて全員いるわね。ということは」


「残りはあの結界の中だ。きっとな」


 リリエットとボガーノードは仲間たちの無事を確認しつつ、残りの幹部がすべてあの中にいることとみていた。


 その時、残っていた1番と2番塔が破壊され、爆炎と爆風が彼らに襲い掛かってきたのであった。それをハーネイトは瞬時に紅蓮葬送で全員を覆うように守る。


「しまった、残りの塔が破壊された」


「誰が攻撃した。まあいい、ド派手にやろうかね」


「ボルナレロと考えた作戦は、裏目だったのか?」


「おー、あの時の男。そうだ、魔法使いの罠にはまったとみていいが、残りは4人だけだ。全員でボコろうぜ」


マントの中でハーネイトはブラッドと目が合い、厄介な相手がいると思いながらも、そうは言ってられないと考えそれ以上何か言うのをやめた。その時であった。大地が少しずつ揺れ始め、木々が揺さぶられ、鳥たちが空に逃げるかのように羽ばたき飛んでいく。


「仕方ない。って地面が揺れている!」


「地震か。いやこれは……俺たちの周囲が浮いているぞ」


「もしかして、これが罠ってわけ?」


「全員無事に合流できたはいいが、まずいぞこれは」


 全員がその激しい地面の揺れに驚いていた。そして紅蓮葬送を解除し、全員でその光景を目撃した。それは拠点とその周囲が徐々に空中に浮かんできていることであった。大地は震えながら上昇し、周りとの土地を切り離すかのように空に向かって旅立っていく。


 リヴァイルたちが作戦に参加した人すべてがいるか確認し、それが終わると同時に、敵の巨城とその周辺は完全に、大地から切り離された。


「げ、少しずつ上に上がっているぞあれ」


「いかんな、もしかすると彼らは罠に……」


「ハーネイトさん!」


 一方そのころ、運よく影響範囲から免れたエレクトリールたちはその光景を見て、助けに行こうと思ったが間に合わず、追跡することに決めたのであった。


「ははーん、こうして強い連中を一網打尽にするつもりか。だが結界の切れた今、あれを壊せばいいだけだよな?」


「そうみたいだぜ。残りの連中に目にもの見せつけてやる。ってあれは!」


 結界が消滅しながら空に浮かぼうとする拠点。そしてその結界の中には、紫色の不気味な、所々骨や革の見える悪趣味な2つの巨塔がある城が見えた。


 その中から、巨大機動機械兵器「グラム」が起動し、こちらに向かってくるのが見えた。4足のキャタピラ型の足を稼働させ、中央部の砲塔からは両腕が伸びている、全長30m級の巨大兵器。かつて機士国が日之国とまだ関係が険悪であった頃に作られた秘密兵器が、敵の手に渡っていたのであった。


「まさかこのような代物と出くわすとは……あれを使う時が来たか!」


 だがハーネイトは、不敵な笑みを浮かべると空に向かって指パッチンをした。すると突然、空に紫色の亀裂が走り、そこから白銀が美しく光る、機械の巨人が地面に降り立つ。それはその空中要塞を激しく揺らしたのであった。


「……こうなるとは、半分も予想できていなかったが、しかし。だからこそこいつの出番が到来した!今こそ、力を見せろ。古から蘇りし機械の魔人、MFマグネットファイター・イタカ!」


 その白い機械巨人は、盛大に土煙を巻き上げながら降り立つな否や、グラムに向かって走り出すと腰部に内蔵していたシュトラールブレイドを取り出し展開する。

 

 その鋼の巨人ことイタカは、背中と足にある魔粒子ブースターを最大出力で噴射し、猛スピードで突貫してからグラムを切り裂こうと両腕の光剣で襲い掛かる。しかしグラムも腕に装着している剣や銃を使いイタカを破壊しようとする。


 だが圧倒的にイタカが速い。残像すら残らないほどの回避軌道でそれらをよけると、次の瞬間空中から、出力を増幅させた光剣二振りでグラムの両腕を切り裂き吹き飛ばし、よろけたところに胸のコアに対して華麗な回転切りを繰り出し、鮮やかにグラムをバラバラに切り捨てたのであった。


 更にその回転の反動で後方に鮮やかにステップし、右手の掌をグラムのほうに突き出すと、凄まじい威力の赤き魔閃を収束放射し、グラムを光の奔流に飲み込み跡形もなく蒸発させたのであった。


 その光景に、ほぼ全員が唖然としていた。この男は、まだ他に切り札を持っていたのか。その強大な力を前にその場から動くことができなかったという。


「古代遺跡にあった、今は失われし超技術が一つ。それがこの機動兵器だ。イタカ、みんなを回収して地面に戻ってくれ。ウルグサスにラー遺跡の方の警戒も怠らないようにと言われたが、残りは急いでそちらに向かって。いやな予感がする」


「マスター、俺はやれます。っていてて」


「無理をするな南雲、そしてリリーも戻っておけ。いいか、今から幹部と戦い、この移動している拠点をぶっ壊す。ハーネイトの指示に従え!」


「不測の事態を考えるとここは引いた方がいいぜお前ら。だが霊界人、いや、霊量士としてのけじめをつける!」


「私もよ。帰るときはハーネイトに任せるわ」


 そうしてハーネイトと伯爵、そしてユミロとボガー、シャックスとリリエット、ブラッド5人はその場に残り、それ以外の人たちはイタカの手のひらに乗ると空中要塞から降りて、指示通りラー遺跡に行ったのであった。


 イタカは操縦者と認めたものに対して音声で指示を出すこともできる。そして乗り込み操縦すれば、更に真の力を発揮できるという。


 今までこの古代人が作り上げた超兵器を出さなかったのは、これを知られることで敵が対策し、事態が混迷を深めるのを防ぎたかったからという理由であった。それにこの古代兵器自体、まだ謎が多くすべてを解明できていないという。


 だが、のちにこの兵器がとある存在が作り出した恐るべき戦闘兵器だということがわかるのだがまだハーネイトはそのことを知らずに運用していた。


「さあ、ここでけりをつけよう。ゴールドマンの洗脳を解き、魔法使いを討伐する」


「だったらわしらも、加わるぞ」


「来たぜ、あの時の借りは返す」


 そしてハーネイトたちの前に突然フューゲルと、そしてDカイザーが突如現れたのであった。漆黒の瘴気に身を包んでいた彼らは、それを解除するとハーネイトのもとに近寄った。


「あ、あんたは!」


「久しいのう。噂に聞いておったが、逞しくなったな」


「さあ、さっさと終わらせて帰ろうぜ。未来の龍王さんよぉ」


 突然のことで驚くハーネイトに対し、カイザーとフューゲルがにこやかにそういいながら、巨大な塔を見ていた。


「どちらにしろ、早く倒そうぜ」


「真に倒すべきは、それか」


「御託は言い、行くぞ」


「さあ、このまま突撃するわよ」


 そうして、向こうから迫ってくる敵に対し全員が武器を構えた。そしてハーネイトは霊量子の力を身にまとい始める。


 間もなく、城の方からパラディウムとカミオン、そしてゴールドマンがすでに霊憑した姿でハーネイトたちの目の前に現れた。


「よくぞ貴様ら、ここまで来たな。それと裏切り者!」


「グヌヌ、ヌオオオォォォ!」


「父さん、もうやめてよ!こんなことしても、誰も幸せにならないし、死んだお母さんと弟は戻ってこないのよ!」


「リリ、エット……っ!」


 ハーネイトは3人の様子を見て、顔を引きつらせていた。思ったよりも魔法使いによる影響が強く、一人で治せるか少し不安になってきたのであった。そしてリリエットが3人に声をかける。


「そちらこそ、魔法使いにいいようにされているのですよ」


「そうだぜ、目を覚ましな」


「ひどい魔法浸食だ。ここまでくると、治せるかどうか、いや、手段も方法も1つだけはある」


「父さん、いい加減に目を覚まして!」


 その中でも特に、金色の装甲を身にまとうゴールドマンの容態が気になっていた。完全に理性を無くし言葉もまともに発せられない状況であり、魔法浸食の末期であると診断する。そしてリリエットがゴールドマンに向かって元に戻ってほしいと激しく言葉をぶつける。


 しかしゴールドマンは聞く耳持たず、金色夜叉という能力で周囲の霊量子を集めてから、胸から巨大な光線をうち放った。


「っつ、なっ、娘の顔も忘れたの? だったら、ロザード・エスパーディア!」


「ぐぬうう!」


「天鎖陣! これで先ずは動きを」


 2人はそれを見切り、左右に分かれてからそれぞれ技を繰り出し、ゴールドマンの動きを止めた。それに無理やり抗おうとするも、ゴールドマンはその力をなぜか出せずにいた。


「みんな、あの戦形変化を使う! 時間を少しだけ稼いで!」


「分かったぜ相棒! くらえ、サルモネラスパークボルト! 高圧の電気やで、ビリビリするやろ」


「ここで、全てを終わらせる! 来い、我が鬼霊たちよ」


「ここで引けるか、神獣突王ウル・アガリアマラ


「天使の裁きだ、ガミオン・フラッシュボム!」


 ハーネイトの龍の変身の時間を稼ぐべく、伯爵やボガーノード、シャックスとユミロもパラディウムとガミオンと戦い、数の差で圧倒していたのであった。パラディウムは幻獣の力を借り、強烈な突撃を仕掛け、ガミオンは後方から光の爆弾を無差別にばらまく。


 それに対し伯爵は菌電光剣で攻撃し、ボガーノードがそれに合わせ鬼槍を振り回し、地面から鬼霊を幾つも召喚しとりつかせようとする。


「儚く散りなさい、レインアローー! ユミロ、今です!」


「おう! 地壊震撃!!」


 そしてあっという間に、パラディウムとガミオンの二人は相当深手を負い、これ以上戦えなくなっていた。シャックスとユミロの連携で隙が生まれた間に、伯爵の電撃がパラディウムの胸を貫き、ボガーノードが地面に刺した槍から現れた鬼霊によりガミオンは呪いをかけられ、体力を大幅に消耗していたからである。


「おとなしく投降するのです」


「お前ら、真の敵、魔法使い! 目を覚ませ、ヌ、あれは、や、止めろ! 元に戻れなくなる、ぞ!」

 

 シャックスとユミロが倒れている2人にそう声をかけたが、ユミロが彼らの手にしていたものを見て後退する。


 それは、ボノフが変身に使用したのと同じ、融合型のデモライズカードであった。そしてガミオンは胸に、パラディウムは左腕にそれを素早く張り付けた。


「ぐは、このままでは。ならば、あ、あれを!」


「そうだな、この力を持って。お前らを、抹殺してくれる!」


「止めろ、それは使うなああああああ! ……ちっ、リリエット、どうにかゴールドマンだけでも止めるんだ。他は、間に合わないっ……」


「ええ!」


 そしてゴールドマンもその動きにつられようとしていた時、リリエットの桃色輝夜紅姫がゴールドマンに抱きつき動きを止めた。すると、ハーネイトの足元にあの時発動した、特殊な魔法陣が描かれ、その陣の中で緑色の光と風に包まれたハーネイトは、あの戦形変化を使うのであった。


戦形変化フォームアウト! 緑嵐竜帝ワイヴァス・ヴェルートゥロス!!!」


「そ、そうか! この力ならあのボノフの時のように!」


「行けえ! 相棒!」


緑風再聖ルメットブリズ・プランタニエール


「っ、がっ!」


「な、んと……すがすがしい、風、何だ」


「うぐあああああ! がはっ、は、ああ。お、俺は一体。な、何をしていた。リリ、エット……うぐっ」


「父さん、父さん!」


「大丈夫だ、魔法が解けたショックで気絶しているだけだ。こちらで回収しよう」


 2人に抱きかかえられ、洗脳の解けたゴールドマンとその部下2人は意識を失った。完全に魔法使いの呪縛を解いたのを確認し、変身を解いたハーネイトは彼らを保護することにした。


 それがリリエットとの約束だったからである。父さんを助けてほしい。彼女はそう彼に依頼した。そしてその願いは今果たされたのであった。


 もしこの力を手にしてなかったら、最悪全員倒すしかなかったかもしれないと思うと、この緑の龍の力について、彼は少しだけ誇らしく、嬉しい気持ちになれたと言う。


 しかしまだ問題は残っている。奇跡の力ともいえる、緑龍の力で3人を魔法使いの洗脳とカードの力から解放して見せたが、この浮いている大地を放置しておけば何処に落下し、甚大な被害を出すだろうと思い、そうはさせないと、思い切った行動に出たのであった。


「この一撃でとどめを刺そう。久しぶりの100番台だ。この浮遊要塞ごと壊す! 星の魔法、その力を使って!」


 ハーネイトは、地面に落下する前に影響を最小限にしようと、伯爵たちに逃げる準備を出してから空中に高く飛びあがったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ