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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第116話 1番塔の戦い 遊撃隊VSエヴィラ侯爵&零 前編


 そして重要な1番塔の戦いが始まろうとしていた。一番兵力が多く偏っているため、伯爵はここで戦力を分散させようか迷っていた。だがここは感覚を信じ、彼は一斉突撃を選択した。


 しかしここで、伯爵にとって最大の問題が発生していた。


「うげげげげげ!! ま、まずい」


「どうした伯爵」


「お前ら、あれとだけは絶対に戦うな。ハーネイトクラスの治癒能力者がいなければ全員死ぬ。てかなんでこんなところに……エヴィラ……っ! 風の噂であの事件によって死んだと思っていたが、何故生きている」


 彼は他の仲間たちに対し警告を発しつつ距離をとる。あれだけの力を持つ伯爵がそういう対応をとることに南雲たちは驚いていたがそれもそのはず、目の前にいる紅い日傘をさしている貴族のような女性こそエヴィラという恐ろしい存在であったというのが理由である。


「一人だけですが、あれは不吉ですね。と言いますか、あんな人いました?」


「分からぬ。しかし伯爵の言うことが本当ならば、ここは彼に任せよう。回復はミカエルとルシエルに任せ、彼を囮に塔の破壊を。そして怪盗たちとルズイークたちはかく乱を頼む」


「ああ、しかし、あれは俺たちが倒す」


 南雲と風魔は、塔の上にいた黒い忍を見つめていた。そう、彼こそが里の忍を手にかけた重罪人、零であった。そして伯爵にあれは自身らの手で倒すと告げ、伯爵はただうなづいた。そして指示を改めて行った。


「あれが零という忍か。わかった、そいつは南雲と風魔に任せる。全員只者ではないな。各自慎重に、大胆に仕掛けるのだ」


「俺はここで支援砲撃だ。相手が何だろうと撃ち抜く。ベイリックスからの超遠距離狙撃、見せてくれる」


「私もここで支援砲撃をします。落雷にご注意を」


「了解した。防衛ラインはしっかり守れよ」


 エレクトリールとリシェルは自分たちの役割を伝えた後後方に下がり、支援砲撃の準備を始める。


「さあて、なんでおめえがいるんだ。エヴィラ。ヴァリオラを追ってきたのか? っ、頭が痛てえな、ちっ」


「あら、まさかと思ったけれど、よりによってあなたね。ククク、ここまで来た甲斐はあったわ。サルモネラ家の唯一の生き残りさん。あの時全員命を落としたと思っていたけれど、無事でよかったわ。あれも持っているみたいだし、できれば戦いたくはないわね」


「何の目的で貴様はDGに属している。手を組んだとか、悪い冗談はよせよ? そもそもあの一件でお前の部下がなぜか反乱を起こして襲われて命を落としたと聞いていたがな」


 伯爵はエヴィラの言葉に対し苛立ちを覚えつつ逆に問いただしながら何故DG側についているのか事情を聞こうとする。


「ああ、そのことね。あの鍵を持つであろう貴方と、私たちが探しているU=ONEの力を施すことができる予言の神子探しに放浪していたらここに来てね。偶然その、DGという組織とスプリィーテスに助けられて人探しをしているって伝えたら、私の意図を分かってくれたのか協力してくれた。それだけのことよ。大分感知能力が衰えたのかしら」


「……そういうことか。というかお前らのフレームは一部の奴を除いて索敵系統はへたっぴだろう。それと悪いが、あんたには消えてもらうぜ。鍵っては分からねえが邪魔をするならお前だろうと倒してやるぜ」


 伯爵は少し虚勢を張りつつ強がりながらその場で飛び上がると、彼女めがけて急降下しながら手元で微生物を凝縮した剣を形成する。


 なぜあの女がいる。そしてDGに加担しているのか、謎は尽きないがそれどころではない。速やかに倒す。ただそれだけを目的とし、更に巨大な戦斧を菌で作り出し、彼女にたたきつける。


「馬鹿な真似を。私たちはほぼ無敵だけど、同族同士争えば死ぬことをわかっているのかしら?」


「ああ、だからこそ。蹴りをつけてやる。あいつらを止められず、混乱をまき散らした無能な女帝め! 」


「私は罠に嵌められたの! あいつら、あれに洗脳されて……だから責任もってあいつらを処刑する。だから」


「気を付けて、伯爵」


「ああ、じゃあ行くぜ!」


 伯爵はそういうと更に作った武器に稲妻をまとわせつつ、エヴィラ侯爵めがけて一目散に突貫する。しかし彼女の菌壁がそれを阻む。


「けっ、防御が堅てえ。てめえはあの件からすっこんでいろ。お前らごときがあの後継者ってのを探せるものかよ」


「それはこっちのセリフよ! それとももう、あの予言の神子……そんなのはいないのかしら。それでもあれに洗脳された同胞を止めるためには! DGも私が話した神子の話は気になっていたみたいだけど、だからこそ私が先にそれを手に入れる!」


 エヴィラ侯爵は伯爵に向けて扇状に広がる血の沼を生み出し伯爵を飲み込もうとする。それをかわすため上空に飛びあがるも、そこから生えた無数の血の槍が伯爵に襲い掛かる。


 その時ベイリックスの方から黄色の閃光、そして上空から強烈な雷がエヴィラ侯爵を襲い、伯爵に迫る攻撃を防いだ。


「キャアア! うっ、だが、こんなものっ!」


「遅い、穿て我が眷属。菌帝神槍!」


「だ、だがこの程度。これで終わりにするわ、血闘術・血肉死槍!」


「ごは、っ……。くそ、まともに食らったか。やっぱりやべえな、がっ」


 リシェルたちの支援攻撃の隙を突いた伯爵はエヴィラに強烈な一撃をぶちかますも、彼女の反撃にあい血の槍で胴体を貫かれ半ば相打ちの状態になっていた。互いに深手を負い、片膝を突きながらも睨みつけることを互いにやめない状態であった。


「ぎ、ぐ……っ、私は一人孤独に、彷徨って探してきたのに。貴方もだけど、予言の神子も探すべきもの。呪いをかけられ、あの破滅の未来を知った私たちを治せる希望の使徒。あらゆる生物が不幸にならない方法、なのよ。貴方も、オベリスを知っているなら分かるでしょう」


「悪い、リリー。しくじっちまったぜ。がっ、な、それは、どういうことだ」


「今治すわね。大魔法91の号・万里癒風!」


「……仕方ないわね。ルシエル、全員で回復魔法を」


「ええ、行きます!」


 伯爵の様子を見た3人の魔女たちは急いで大魔法で伯爵の傷を癒そうとした。そして効果はてきめんであり、伯爵は元の状態に戻った。そして菌転移で後方に回避し再度武器を構えながら彼女たちに感謝した。


 これは事前にハーネイトが情報を入手し、伯爵に似た能力を持つ者がいることを知り、保険をかけて魔法使いを重点的に配置していたからであり、事前の打ち合わせがなければ連携を取るのが難しい状況であったと言える。


 誤算としては、その存在がエヴィラであったことであったが、それも対処した伯爵はうれしそうな顔をしていた。


 またハーネイトも、伯爵から体の特性を聞き、また秘かに魔法をかけて効果のほどを確かめていた。だからこそ伯爵は死を免れたのであった。


 そうして相棒以外にも、ある程度までなら受けた傷を治せるものがいることに彼はニヤッとしていた。


 彼らと手を組めば、恐れるものは何もない。目的を達成するにはちょうどいい。そう思いフフッと伯爵は邪悪な笑みを見せつつも、傷ついたエヴィラの目の前に立ち彼女を睨む。


 すると彼女は伯爵に対しある昔話を切り出す。それは彼にとって思い出したくない一件であった。


「っ、何故あの日、貴方たちの住むところであの事件が起きたか分かる?」


「あの日のことか。知らねえよ。お前らがなんかすげえでかい龍引き連れてやってきたのは覚えとるが」


「その時、既にその龍たちに操られていたのよ。私とルベオラ、それにあと数名を残して他の仲間は、残念ながら」


 エヴィラ曰く、昔伯爵たちの一族を襲った同胞はある龍に操られており、それを止めるための方法を探していたという。そのカギの1つが伯爵であり、しかしもう1人本来の目的で探さないといけない存在がいることについて話をし、それと関係があるかもしれないDGの中に入り情報を集めつつ保護しないといけないその対象について接触を図ろうとしていたと話す。 

 

「U=ONEって知っているかしら」


「U=ONE、お前らが言う神子が使えるであろう奇跡そのものか。俺もそれは欲しいと思っているがな。あれを知る者なら、全員探すため動くだろうがよ」


「血徒はその力を求め、それを施せる存在がいつ生まれるか待ちながら活動していたのもしっているわよね。その力があれば龍の支配から解放されるし呪いが解けるのも分かっているはず」


「ああ。俺たちなら誰もが求める力だが、どうもそれじゃないのかってのがいるんだよな」


 何故血徒という存在がいるのか、それはある同胞が出会った龍頭の神人から自分たちのある呪いを解くための方法があることを知り、しかしあまりに膨大な力を消費するが故それを効率よく施せる後継者という存在を護りその力を得るというのが目的であったとエヴィラは話す。


「え、まさか……あの、伯爵、いえ、エンテリカ王子。貴方もその力が必要になるわ。だけど、その前に今置かれている状況をどうにかしないと」


「ああ? どういうことやねん」


「ふふふ、実はあの魔法使い、この塔一体に貴方たちを一気に集めてから、まとめて処分するつもりらしい、わよ。しかも、その魔法使いがどうも洗脳された同胞の1人に操られているかもしれないわ。だから、DGに所属して調査していたのよ、ぐっ、そろそろ限界かしら、ね」


「な、なんやと? ふざけやがって、だがよ、まずはこれや! 大魔法が91の号っ……! 見様見真似だが、これでもある程度治せるみてえだ」


 死にゆくエヴィラの体を伯爵は、なんとまだハーネイトが教えていなかった大魔法。その中でもある程度センスがないと使えず、彼のもっとも得意としていた回復魔法を詠唱し、その癒しの風でエヴィラの体を治してあげたのであった。


 その光景に全員が目を丸くしていた。けれどやはり人の体でない伯爵がそれを行うのは無理があったらしく、少し体がよろける。それをリリーが咄嗟に支え、お疲れさまと軽く頭を撫でた。


「嘘、伯爵いつの間に」


「まあ、見様見真似さ。さあ、俺らとともに来るんだ。敗者に文句を言う権利はないで、エヴィラ。お前がまだ、予言の子ってのを護りたい意思があるなら俺についてこいや。恐らく、あいつこそ……」


「しかた、ないわね。だけど……。じきにこの一帯は空中に浮かび上がるわ。同時にあの結界も解けるだろうけど。っ、Dの後継者、きっと近くにいるはず。目星がついている、というなら、あんたに賭けてもいいかもね」


「それが、U=ONEを施せる存在ってのか」


「貴方と同じ、胸にある力、装置を持つ存在。その者の1人がそうみたい」


「っ、やはり思い当たる節がありまくるなったく、また面倒ごとが増えた。ハーネイトにどう説明すりゃ……」


 エヴィラは早くここから逃げるようにと伝えつつ、伯爵のほかに探している存在の特徴について彼に述べる。そう、それはハーネイトであった。


 伯爵はエヴィラを抱きかかえ、しんどそうにそうつぶやく。なぜ自分はハーネイトと惹かれあったのか、前々から思っていたがエヴィラの話を聞き、改めてもしかすると自分は既に探すべきものを見つけたのではないかと思い苦笑していた。


 その光景の一部始終を見ていたミカエルたちは、ハーネイトと互角以上に戦える存在がまだいくらでもいるということに動揺を隠せずにいた。


 そんな中、第一塔の門番を退けた頃、南雲と風魔は探していた裏切り者の忍、零と対峙していたのであった。

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