表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
114/209

第110話 ジュラルミンの事情聴取と解放宣言

 ハーネイトはジュラルミンを抱きかかえ、寝室のある部屋に連れて行き、ベッドに彼をそっと寝かせてから洗脳解除の魔法術式を行った。そのあとミリムとガルドランドに事情を聴き、魔法使いの正体について探ろうとしていた。


「その魔法使いは、一度だけ前に見ましたが死の雰囲気をまとっていましたよ。死霊使いそのものですね。それと、あの紅儡を生み出す怪物の気配もしました。だとするとやばいっすね」


「あれは、いけない。ハーネイト様、なにか魔法使いで心当たりになるものは?」


「うーん、情報がまだ少ないからなんとも言えない。がどうも相当長生きかつ、かなり前から計画を企てていたのは間違いない。だが血徒絡みとなると、解散したとはいえ再葬機関の長であった私が処理せねばな」


「それもそうですね。しかし、それほどの高度な洗脳力を持つものは数えて数人しかいない」


「セファスオスキュラス、そう名乗っていました」


「その名前、調べれば何かわかるかもしれない。……いや、思い出した。師匠が、そういやその名前を言っていた覚えがある。どういう魔法使いかこちらで調べるとしてだ。さて2人とも、なにか欲しいものはあるか?」


 セファスオスキュラス。ハーネイトは幼いころ師匠であるジルバッドから一度だけその名前を聞いた覚えがあった。そのため後で師匠の遺産の中にヒントがないかどうか確認しようと考えた。


 そして彼らのおかげで早くに魔法使いにたどり着けたため、以前から彼らが欲しがっていたものをこの際あげようと考えていたのであった。彼らもまたハーネイトが教えた生徒である。


「あ、え、えと」


「ハーネイトファンクラブの会員の申し込みとサインがほしいですな」


「それで、いいのか二人とも」


「もちろん、ですよ」


 ハーネイトはポケットから携帯を取り出し、アリスの連絡先を紙にメモってから二人に手渡した。


「これがダグニスの連絡先だ。あとは、どこにサインを?」


 ミリムとガルドランドは色紙を持ってきており、ハーネイトは手早くサインを書いてあげた。


「これでよいか」


「ありがとう、ございました」


「流石ですね、後生大事にします」


 二人はハーネイトに深く礼をした。そしてジュラルミンが意識を取り戻し、うっすらと目を開けた。


「う、うう…」


「ハーネイトさん、ジュラルミンが目を覚ましました」


「お前、は。ハーネイト、なのか?」


「そうですよ、ジュラルミンさん」


 ハーネイトが優しく声をかけ、ジュラルミンはゆっくりと背を起こした。


「私は、一体何をしていたのだろうか。……覚えておらぬ」


「敵も相当強い魔法使いだな。ヴァンの件といい、ひどいな」


「なんだと? わしに何があったのか、っ、頭痛がひどいな」


 ジュラルミンの質問に、ハーネイトは一連の事件の流れと詳細について1時間ほど話をした。


「そうか、それは、取り返しのつかない、大変なことをしてしまった……。国王に対する感情を敵に利用、されたのか」


「その魔法使いが来てからもう、あなたたちは敵の手に落ちていたと考えられる。私がまだ機士国にいれば、防げたのに」


「過ぎたことは、仕方がないものだ。互いにな。しかし既にやつらに相当な支援がいっておるはずだ」


 ジュラルミンは自身の不甲斐なさにいら立っていた。それに対してハーネイトは今からでも遅くないと彼に進言した。


「今からでも関係を断ち切り孤立させることは意味のあることだと思います。敵の兵力は半分ほど機械兵頼りみたいで、それの補給をつぶせば相手は戦略の見直しを迫られるはずです。それと彼らに捕まっていた研究者たちは救出できています」


 その報告を聞き、ジュラルミンの顔に笑顔が戻った。かつて彼が在籍していた時からその手腕は卓越していたものだとジュラルミンは感じていたが、今回もその力を振るっていることに安心していたのであった。 


「そうか、お主はいつも頼もしいな。息子のことを思い出す」


「ジュラルミン長官に家族がいたのですか?」


「ああ、昔な」


 ジュラルミンはミリムとガルドランドに昔あった話をしてあげた。ジュラルミンには若いころ妻子がいたが、魔獣に殺されそれ以降は独り身であったこと。そしてハーネイトのことを息子だと思っていることを彼らに告げたのであった。


「そんなことがあったなんて」


「だからな、ハーネイトがわしにとっては息子みたいなものだ。そして、家族の仇をとってくれたのだ」


「また、落ち着いたら以前のように食事したいですね。ジュラルミン」


「そうだな、息子よ。あのいつもの店でな」


 2人はよく通っていたレストランのことを思い出し、戦いが終わったら久しぶりに水入らずで今までにあったことを話したいと互いに思っていたのであった。


「この事態を納めるには、みんなの力が必要です。まずは占領国の解放とDGの侵攻を多くの国に伝えないと行けません」


「わかった、手紙の方はお主に任せる。西大陸の方は私に任せろ」


「私たちも道具とか手配してきます」


「俺は他のやつらに知らせよう。ハーネイト様が来ているとわかればみんな押し寄せてきますよ」


「わかった、素早く行動に移って。それと敵から私たちに宣戦布告の文が来ている。だから隠密にな。敵の混乱に乗じて、一気に片付ける」


 彼のその発言にその場にいた人全員が彼らしいなと思いながら、それぞれが行うべき役割を行うべく各自部屋を後にした。


 それからハーネイトとジュラルミンは宮殿内にある特別放送室まで足を運び、国民全員に対し緊急放送を行った。


「私は、ジュラルミン軍事長官だ。私は長らくある組織の罠にはまり、洗脳されていた。その名はDG。かつてこの星を襲いに来た宇宙人たちだ」


放送を聞いた市民に同様が広がる。高齢の人の一部はその事件を知っていたものの、それ以外の市民は現在ただ事ではない事態が起きていることに恐怖を感じていた。


「それに関し、あの偉大なハーネイト様より発表がある」


 その発言を聞き、国民たちはざわついていた。あの伝説の男がこの地に再び現れたのかと。そして箝口令が敷かれていたためにそのような事態に陥っているとまで誰もが気付かずに動揺していた。


「皆さん、聞こえていますか?この世界は今DGという宇宙人たちの襲撃にあっています。各地で侵略活動や研究者をとらえ非道な兵器を作り、町や国をそれで襲っています。また、ジュラルミンも敵の魔法使いの罠にはまりDGの思うように操られていました」


 ハーネイトの言葉に対しジュラルミンに対し国民たちは怒号を向けていた。


「ジュラルミンは即刻辞職しろ!」


「何をやっていたんだ貴様は!」


「魔法使い、やはり悪い人もいるのね。あの黒いフードの女、やっぱりあれだったわ」


「皆さん、この一件は私にも責任があります。ジュラルミンは被害者です。そして真の敵は、DGと死霊を操る魔法使いです」


ハーネイトの声を聞き、ジュラルミンについて騒いでいた人たちはおとなしくなり、DGを倒すぞと言う声が少しずつ上がってきた。


「私はアレクサンドレアル6世の指揮下のもと、DG討伐作戦を実行している。そこで皆さんにお願いがあります」


「生きていたのか、王は」


「ハーネイト様からのお願い?」


「聞こうじゃないかね。魔法犯罪を取り締まる、伝説級の魔法使いであり……かつて血の災厄という脅威から多くの命を救った彼が、私たちに要請するとは大切な何かがあるのだろう」


「そうよね、皆ちゃんと聞きましょう」


 全員は静かに、街の至る場所にあるモニターにくぎ付けになっていた。


「まず、ここにいる機士国の民たちは魔獣の襲撃に備え防衛に力を注ぐこと、そしてジュラルミンのことを悪く言わないこと。それと改めて、今一度私に力を貸してほしい。この事態を早期決着させ、以前の暮らしを取り戻すために。これ以上傷付き悲しむ人がいなくなるように、だから、お願いします!」


 ハーネイトは、今やるべきことについて話をする。今回の一連の事件は全て、元魔法協会に所属し追放された魔法使いであると話したうえで、それは自分たちが片をつけると言う。


「こちらも魔法使いに洗脳されていた敵幹部を数名確保している。今起きている問題は、あの偉大な魔法使い、そして我が師匠であったジルバッドをも倒したという邪悪な魔女が引き起こしたとみて間違いない。ここに証拠がある。だからこそ、今こそみんなで手を取り合い、できることをそれぞれしてほしい」


 ハーネイトの演説は多くの国民から拍手をもらい、町中から様々な歓声があがる。彼のおかげで数年前も救われているため、彼を慕う者しかここにはいない。彼の高く、しかし強い声は確実に民衆の心を高揚させていく。


 彼の一声で国が動くなどという言葉もあるほど彼の影響力はすさまじく、あっという間に国民たちは意思を統一して一致団結していた。彼のカリスマ力はもはや呪いの域とも言えるものであり、彼が今まで苦労しながらも無事に旅や戦いができたのはこの力によるものが大きかった。


「これより私とその仲間は敵の本拠地に乗り込む。しかしこの先何が起こるかわからない。だからこそみんなで手を取り合い、大切なものを守るのです。それと、敵の魔法使いが血徒に感染している可能性もあります。あの血海事件を繰り返さないためにも十分に注意を払ってください」


「おう!そうだ」


「私たちになにかできることを探さないと」


「ハーネイト様からの頼みなら断れねえ、お前ら!門の防衛にいくぞ」


「あの血海を生み出した、血の怪物?怖いわ……でも、ハーネイトがいるなら私も!」


「だが、ハーネイト様とその仲間たちならばあの時のように倒せるはずだ。問題は、仮に血徒が魔法使いを操っているとして、その理由が気になるな」


「ええ、これは独自に調査した方がいいかしら。彼らの役に立てるよう、皆で情報をかき集めないと」


ジュラルミンとハーネイトの演説は多大な効果をもたらし、機士国民は協力しあい事態に当たっていた。


「これでひとまず。さあ、次はDGか。白い男の影響で相当弱っているがまだ何か策があるかもしれない」


「しかし、魔法使いの方はどうするのだハーネイト」


「やつが逃げる際発信器をつけました。ボルナレロの開発した探索システムで居所はバッチリわかります。あ、済まない、彼から連絡だ」


ハーネイトは自信ありげにそう伝えるものの、魔法使いの出方次第ではどうなるかわからないと内心、かなり戦々恐々としていた。そして手にした携帯端末から連絡が入り、それにすぐに出た。


「ボルナレロか、どうした」


「現在各部隊は順調に指示通り、例の拠点に向かっています。最果ての部隊もトランスポーターにより迅速に移動。あと半日あれば部隊の展開は完了です。それとガルバルサスからも通信です。念のため以前の指示通り遺跡の方の防衛に当たると」


「流石だな。優秀な人材が集まると楽でいいね」


「はは。しかし1つ問題があります」


 ボルナレロは敵の拠点を完全に割り出したはいいが、強大な5つのエネルギー反応を拠点の周囲で確認していた。それがどうも本拠点の結界の動力源ではないかと彼は考察し、破壊することで内部への侵入が容易になるのではないかと考えたのだ。


「そうか、しかしそれは結界の外にあるんだな?」


「そうですね。この観測結果からすると、結界は魔導師の一撃でなら破壊可能かと。大魔法か、それに匹敵する何かをぶつければよいはずです」


「ならば5部隊に分かれ、各部隊に魔法使いを一人ずつ配置、結界の破壊後に突撃を仕掛ける算段で。こちらも今からそちらへ向かう。ボルナレロとアリスは指揮を頼む。それとこちら側も出撃命令を」


「了解しました。それと伯爵たちがすでに拠点の方に向かっています。迅速でありがたい。さあ、ここからが本番ですな」


 そうしてハーネイトは連絡を切り、彼らに今後やるべきことを伝えた。


「さあ、ここからが忙しい。3人はとにかくガルバルサスたちと連携してある遺跡の防衛に回ってほしい」


「あの手紙に書いてあったあそこですね。魔法使いが何を企もうと、ハーネイトさんの前に敵はなしです」


「フッ、そこまでか。それとロイ首領からの報告だが、魔法協会が壊滅的な被害を被っているらしい」


 ハーネイトは追加で指示を出し、ウルグサスの言う遺跡の防衛に当たるように命じる。そして彼らが所属する組織のボスからの連絡を聞き、ミリムとガルドランドは驚きを禁じ得ない表情を見せつつも、冷静に立ち振る舞った。


「……そちらの調査はBKの仲間に任せましょう。今は敵に対して電撃的に攻め込まないといけないっすね。それと、ハーネイトさん。侵略しているように見せかけて、北大陸の西半分は独自に部隊を編成して現在南下中です。そちらにも指示を出していただければ包囲も容易です。総勢120万はくだらない、大軍勢ですよ」


「通信機器の魔法電周波さえ教えてくれればこちらでつなげよう」


「これがそのバンドです」


「分かった、では行ってくる。我らの勝利を誓って、今行かん!」


 ハーネイトはそういうと3人に別れを告げて宮殿の外に出て、ウルグサスが待機している場所まで戻っていった。


「ではわしらも非常招集をかけるかのう。今までの分、きっちり借りを返そうではないかね」


「では各方面に手紙を書いて包囲網作成と行きます」


 ジュラルミンたちも至急日之国やマーカジャノ、アリューシャンなどの領主に向けて手紙を書くことにした。


 この動きによりDGは兵力も資金も後ろ盾を無くし完全に孤立させることに成功した。しかし肝心な問題はまだ防げていなかったのである。


 魔法協会を襲い、魔導師セファスオスキュラスは魔力生成器を盗み出し、機士国からもいくつかの巨大兵器や数千人の猛者の遺骨などを掘り出していたのであった。


 この動きが後々どう影響してくるのか、ハーネイトたちはまだ知る由もなかったのであった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ