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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第109話 機士国強襲作戦!


 会議終了後、ハーネイトは早速機士国に忍び込む作戦を実行に移そうとしていた。


「さあ、ここからが本番だ」


 ハーネイトはそう思い、一旦仲間たちを集め、これから行われる決戦について作戦を指示するため、館内放送で3階の会議室に集まるように、全員に指示を出した。


「いよいよ始まるな、ハハハ」


「さあ、あいつらコテンパンにしてやるわよ。覚悟なさい!」


「リリー殿も気合入ってますな。拙者も、そうです。零……なんとしてでも止めなければならぬ」


「まだ、懸念が残るけど、今がチャンスなのはわかるわ。ここで止めないと、あいつらは全てを滅茶苦茶にする」


「これより、作戦についての説明を行う。全員静粛に」


「おうおう、どんな作戦だ相棒」


 ハーネイトは伯爵たちに、今回行う作戦についてを説明し始めた。


「ああ、今回の作戦は電撃包囲殲滅作戦だ」


「電撃?」


「包囲?」

 

 今回の作戦は、戦力を分散させた後、迅速に集中させ、敵の選択能力をはぎ取りつつ制圧するものであり、それには全員が息を合わせて作戦を遂行しなければならないことをハーネイトは説明していく。


「ああ、ボルナレロたち研究者の尽力のおかげで、長らく居所がつかめなかった敵の居場所をようやく見つけることができた。そこで敵が戦力を更に集める前に、混乱に陥れ仕留める算段だ」


 ハーネイトが攻勢に出られなかった理由の1つ、敵拠点の場所が不明であったことであるが、今回研究者たちの協力のおかげでようやく判明した。それをまだ敵に知られていない。それをアドバンテージとみなしハーネイト以外が敵拠点まで先に集結し強襲の布陣を取る。


 その一方でハーネイトは、機士国の開放を先に行い敵のペースを乱したうえで、あとから単騎で拠点に迫り決戦に持ち込むというなかなかに奇怪な作戦であった。というか普通このような作戦をとる戦術家はいないはずである。


「先生、機士国がまだ敵の手に渡っているのはどうするのですかい?」


「アーディン、それは心配するな。あれは、私一人で制圧する」


「師匠、それってどういうことだ」


「その通りのことだ。リシェル、君の兄と姉はエージェントが保護している。それと、試したいことがあってな」


「ヴァンの洗脳を解いた、あの術式ね」


「そうだ、あれからさらに研究し、一人でどうにか解呪できるように術式を新たに作った。もしそれでだめでも、新たな戦形変化という手もある。緑の変身なら呪いを解くことはできる」


 不測の事態に備え、ハーネイトは新たな術式を組んでそれを利用し、敵戦線の崩壊を狙うことを告げる。


「マジすか、早いっすよ先生」


「それで、私たちは? ハーネイトさん」


「エレクトリールたちは、ここから西に向かってくれ。ボルナレロの指示を聞き、拠点のある近くの高地までゼぺティックスの率いる輸送部隊に運んでもらう」

 

 そして今回の作戦の肝となる、ボルナレロたちと伯爵ら遊撃隊の連携についてもどのように行われるか、丁寧に説明を進めていく。


「それで、拠点を包囲し叩くわけですか、問題は戦力差です」


「包囲戦ね、戦力比が敵の2,3倍以上こちらが優勢でないと確か効果がないわよハーネイト。どうなのかしら、分かっているの?」


「義兄さん、策があるのですか?」

 

 敵拠点の包囲をする以上、戦力比の問題が付きまとうが、それについて先にハーネイトは、昔からの友達や協力関係にある人たちの支援を取り付け、すでに準備ができていることを話す。


「ああ、私たちのほかに、北から一騎当千級の猛者たちをありったけ集めてきた。そいつらの戦力を含め、あとはガルバルサスのおじさんたちが率いる機士国軍を合わせれば、敵は確実に戦意を失う。私も、すべての力を出して1人で西から押し込む。魔法爆撃ならいけるでしょう」


「あー、それだけいればあいつらもひとたまりないな。戦力的に向こうの4倍から6倍は期待できるっすね。ハーネイト師匠は交友関係広くてすごいっすね」


「リシェルさんの言う通りかも。話が本当なら、一気に叩けますね」


 ハーネイトの説明をすべて聞いたリシェルたちは、この作戦が成功すればDGの力を再起不能になるまで追い込めるのではないかと考え、各員は真剣な面持ちになった。


「しかし、普通はこんな作戦立てませんよ」


「エレクトリール、それは君もだろう? ハーネイト師匠も含めハチャメチャな力を持っているんですし、だからそういう奇策も使えるわけだし」


「えへへ。私は、貴方の指示に従うまでです。いいですよ、滅茶苦茶に暴れてやりましょう」


「まあいいわ、盛大に暴れていいのよね?」


「勿論だ。全員、全力を尽くして拠点を制圧してくれ」


 そうして、全員に作戦指示を言い渡したハーネイトは、部屋を後にしてホテルの外に出た。


 ここまで、予定以上に時間がかかった。自身の至らなさが予定より長引かせてしまった。反省することばかりだと思いつつ、けれどもこれでおしまいにできる。だからこそ、最後まで気を抜かずに行こう。そう決意を固め、彼はコートのポケットからとあるアイテムをとりだした。


「これを使えば、ウルグサスが来てくれるわけか」


 ハーネイトは日の国の事件後、旅立つ前に伯爵から笛のようなものを渡してもらっていた。これを吹けば霧の龍を呼ぶことができると言う。ハーネイトが倒れた際に、伯爵がそれを預かっていたのを、彼に譲ってもらったという。


 彼が作戦について強気に出られるようになったのは、このアイテムも理由の一つであるという。自身の魔力を抑えておけば、この龍に乗ることで高高度から、気づかれずに機士国まで侵入できる。霧の龍が生み出す独特な霧が、熟達した魔導師ですらその目と感覚を狂わせ魔法探知をほぼ不可能にする。それが作戦の鍵の一つであった。


 そしてミスティルトの外でその笛を思いっきり吹いてみた。するとしばらくして、急に足元が暗くなり、空を見上げた。そこにはあのウルグサスが降り立とうとしていた。


「私を呼ぶ声がした。ハーネイトよ。如何様な要件だ」


「機士国まで私を運んでほしい」


「魔法での移動に制限はもうないが、それでもか?」


「ああ、もう一度龍の背中にのって見たい。それと魔力と体力の温存を図りたい。お願いします」


「そうか、承知した。では早く背中に乗るのだ神御子」


「た、頼みます」


 そうしてウルグサスはハーネイトを背中にのせると勢いよく羽ばたき、上空に飛び上がった。そしてそのまま機士国のある方角に向かった。霊量士たちは一時的に、異空間の中に待機してもらい、必要に応じて出てもらえるようにしていた。


「飛行魔法でもこの高度は難しい。素晴らしい景色だ」


「そうであるな」


「こんなに美しい星を、あんなやつらに滅茶苦茶にさせない」


「守護者、としての発言か?」


「守護者?」


ハーネイトは龍の背中から、はるか下の美しい景色をずっと見ていた。そしてウルグサスの言葉に、以前会った際に言われた言葉を思い出していた。


「自身が世界を守る役目を背負っていることを、どの程度理解しているのか、それが気になるのだ。どうなのか?」


「どうなのか、といわれましても。まだよくわからないことばかりです。しかし私はみんなの居場所、世界を守りたい。そこに私の居場所があると思っていますから。この6つの龍の力、意味は絶対にあるはず。変身を使いこなせれば、と思っています」


「それも、そうだな。居場所か……それでいい。守りたいものを守るために、その脅威の力を使うのならば見守ろう。どんな力も、使い方で結果が変わるのだからな」


 ウルグサスはハーネイトの言葉を聞き、かつて住んでいた世界のことを思い出した。そして彼の信念が単純かつ清らかなものであることにホッとしていたのである。


 そうして北大陸の南側を飛行するウルグサス。山脈をかわしながら風を切るように飛び進んでいく。


 移動中もハーネイトとウルグサスは互いに地上を監視していた。するとなにやら巨大な物体が見えた。ウルグサスに指示をだし、低空に移ると、そこには巨大な魔物がなにかに襲いかかっていた。


「あれは、グラホーズ」


「でかすぎる。しかも人と車が見えるな。どうする」


「無論助けにいく。もしかすると」


 ハーネイトが救援に向かったその頃、研究者たちを連れてきていたカイザルとアルは、巨大魔獣「グラホーズ」に行く手を阻まれていた。このままでは先に進めない。そう思っていた矢先、空に巨大な龍の姿が映り、そのあとすぐに何かが龍の背中から落ちてきたのを二人は目撃していた。


「なんだ、あれは」


「龍から人が降ってきた、こっちに向かってくるぞ!」


「ぶったきれ、エクセリオンキャリバー!」


「ヒィィィィィィィン!」

 

  ハーネイトは上空から勢いをつけ、エクセリオンキャリバーの刀身を長くしグラボーズの脳天を思いっきり叩ききり、胴体までも一瞬で真っ二つにした。


「とぅ、っと。危なかった」


「ハーネイトか!」


「やはりね、アル、カイザル。けがはないか?」


「まあなんとかな」


「言われたとおり、研究者たち、総勢45名をつれてきた。しかし数名連絡がとれない。あのハイディーンという男の行方がまだわからん」


「そう、か。了解した。あとはこっちに任せてくれ」


ハーネイトは転移魔法の術式をすぐに唱え、アルたちをミスティルトに移動させようとする。


「転移魔法か、ではあとは頼む」


「では、ミスティルトまで転送します。例のホテルにアルさんは案内をお願いします」


「任せておけ」


そうして、2人と研究者45人はミスティルトまで魔法により転送され、無事に保護できたのであった。


「もうよいか?」


「はい。では。急ぎましょう」


 ハーネイトは飛翔し、龍の背中に乗ると今度こそ機士国に向かい、約5時間かけて機士国の上空に到達した。時間は夕暮れ時であり、日の光が橙色に輝いているのを彼は美しいと感じて空を見続けていた。


 そして久しぶりに訪れた機士国の様子を確認し、ミリムたちに前に指示した通り統制が取れていると確認した。


「特に街中に変化なしか、ウルグサス、そろそろ降りる」


「ああ。私はどこにいればよいか?」


「できればあの山の辺りか、上空で待機をお願いしますウルグサスさん」


「了解した」


「では、行くぞ!」


 ハーネイトは背中から勢いよく飛びつつ、風を身にまといながら機士国の中央部にある宮殿に向かって滑空して突撃していく。


「ジュラルミンはそこか、確かにここからでも異様な魔力を感じる。いや、誰かいるな」


落ちながら宮殿の中を探ると、異常な魔力がかつて王のいた部屋から発せられているのを感じスピードを上げる。


 この感覚、前に戦ったブラッドバーンたちから発していた気と同じものであり、なおかつそれよりもさらに恐ろしいものであると彼は感じていた。


「嫌な予感しかしない。そして、情報はやはり本当だったと」


スピードを落とし、音もなくスタッと地面に着地し、魔法で瞬間転移し機士国で働いていた際によくいた部屋でもある執務室にワープしようとしていた。


 そのとき、その執務室にはジュラルミンと、黒ずくめで大量の髪が床まで届くほどの、仮面を被った魔法使いらしき者がいた。そして意識が朦朧となったジュラルミンの首を魔法のロープで縛り絞め殺そうとしていたのであった。


「期待外れにもほどがある。もう貴様の価値などないわ!」


 黒ずくめの魔法使いがジュラルミンに止めをさそうとしたとき、ハーネイトがワープに成功し部屋の中に突然現れた。そしてその光景を見るとすかさずペン型投げナイフを飛ばしジュラルミンの首を絞めていたロープを切断した。


「おい、その男に何をしようとした?」


「誰だ貴様は!」


「あんたと同じ魔法使いさ。この男を洗脳したのは貴様か?」


「だとしたらどうするのだ?」


そう魔法使いが言うとすかさずハーネイトの動きを封じようと魔法をかけようとするが、それよりも早くハーネイトは瞬影を使い間合いを詰め刀で魔法使いを数回切りつけた。


「遅い!」


「ぐあああ!」


 すると騒ぎを聞き付け駆けつけたミリムとガルドランドが部屋にはいりその光景を目撃する。


「ジュラルミン様!」


「貴様、何をしている!」


 2人は腰に携えていた拳銃を構え、魔力を込めた鉛弾を数発、魔法使いに発射し更に追い討ちをかけ、弾丸が数発当たり魔法使いは膝を地面につく。


「ぐっ、はっ。貴様、覚えていろ! 貴様だけはこの手で、おのれっ!」


「待て、おい!」


 手負いの魔法使いは転移魔法を使い一瞬にして姿を消した。追いかけようとしたがジュラルミンの手当てが先だとして追撃をやめた。


 その代わりに伯爵の真似をして魔法使いの体の一部に金属を張り付け、どこにいるのかわかるように細工をしていた。もしこれが、ボルナレロたちの検知した魔力の乱れの中心地と重なるのであれば、そいつこそが宣戦布告をかけてきた魔導師であることは確定的であった。


 ようやく正体に迫れる。そう彼は考えていた。今まで遠い回り道をしてきた。けれどようやくすべてがつながる。だからこそ諦めない。彼の決意は如何様な金属よりも固かった。


「ハーネイト様!」


「来てくださったのですね?」


「ああ、手紙、読んできたよ。お陰で謎が解けた。さすがバイザーカーニアの優等生」


 ハーネイトはそういい、ジュラルミンの洗脳を解き傷を治すため大魔法の91番を使い、術の発動に伴い緑色の風が部屋中を満たし、傷を負っていたジュラルミンの体がスーッと治っていった。


「ふう、これでいいはずだ」


「ありがとうございました。手紙が届いてよかったです」


「こちらこそだ。君たちの行動が多くの人の命をこれから救うことになる。教えてくれて、助かった」


「いえいえ」


「まずはジュラルミンをベッドに寝かせよう。それから話をまた聞かせてくれ」


 そうしてハーネイトは重傷のジュラルミンを抱え、部屋を後にした。それにミリムとガルドランドも後についていった。




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