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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第108話 ゼぺティックスとの再会


「ハーネイトさん、お客さんですよ! 」


 彼女はフロントに数人のお客さんが来ていることをハーネイトに伝えに来たのであった。


「お前か、ハーネイトは今眠りに入ったところみたいなんだがな」


「困りましたね。そのお客さんとハーネイトさんのメイドたちが少々揉めているようなんです」


「それはまずいな」


「お、起きてくださいハーネイトさん! 」


「んみゃ、今新しい解体新書作ってるところ、むにゃ…」


 ボガーとエレクトリールは急いでハーネイトを起こそうとするが彼の珍しく、しかも意味不明な寝言の内容に二人は首をかしげていた。


「一体どんな夢を見ているのだ?」


「か、解体新書?なんでしょうかそれは。ってハーネイトさん、起きないとこうですよ!」


 呼びかけに応じずしびれを切らせたエレクトリールは、ハーネイトの頬を指でつねってから電撃を軽く流し込む。


「ぎゃあああああ!びりびりする!ってエレクトリールか、なぜ?」


「なぜじゃないですよ。ゼぺティックスと言う人がホテルのロビーに来ているのです。そしてハーネイトさんのことを呼んでいましたので来た次第です」


 彼女の電撃ですっかり目が覚めたハーネイトはそのことに驚いてすぐに立ち上がる。この人はしっかり者なのか、抜けているのか。どちらなのだろうかエレクトリールは不思議に感じていた。


「な、もう来たのか。早いな。わかった、すぐに向かおう」


 ハーネイトはそう言うと駆け足で屋上を出て一階のロビーに向かう。


「やれやれです」


「同感だ」


 それからエレクトリールとボガーノードは屋上で楽しそうに遊んでいるユミロを見ながら話をしていた。その頃ロビーでは険悪な雰囲気がその領域を支配していた。


「おや、貴方は噂に聞くハーネイトさんのバトラーですか?」


「如何にもそうだが、なぜあのゼぺティックスがこんなところに遠路遥々お越しになられたのかが気になってのう。バイザーカーニアの邪魔をしに来たのですかい?まあわしは孫の面倒を見ておるだけじゃがの」


「それは、ハーネイトさんがこちらに支援要請の手紙を送ってきたからですよ」


 ミロクが二人の人物と話をしている。無精ひげを生やした男とメガネが素敵な若い女性が彼に対し話をしていた。


「あなた達は自身のやるべきことだけをやっていればよいのです」


「だからそのために来たのですが、悪名高い魔女のメイドさん?」


「小娘、ここでやり合いましょうか?私を知っているという事は、相応の覚悟を抱いて目の前に立たないと命がありませんわよ」


「それはいい提案ですね。私はハーネイト様のそばにいたい、だけど貴女たちが邪魔……!」

 

 そうして互いに寒気をもたらす形相を時折のぞかせながら、ミレイシアとルテシアがにらみ合い徐々に距離を詰める。それに割り込む形でハーネイトがエレベーターのドアから出てきた。


「済まない遅れて。ああ、久しぶりだなゼぺティックス。トランスポーターの支援要請、受け入れてくれたのだな?」


「そうだ、あの英雄王、ハーネイト直々の頼みとあってはね。人員の輸送だけでしたらこちらの活動に影響も特にない。世界を乱す奴らを片付けないと、こちらも安心して仕事ができないのでね。だから、いつでも声をかけてくれ」


「それはいい。ではその時はよろしく頼んだぞゼペティックス」


「ああ。其れでDGさんの方はどうなのだ?」


 ゼぺティックスの問いかけにハーネイトは軽く笑顔でこう話す。このゼぺティックスという男は、ハーネイトが旅を初めて1年弱、13歳の時に出会った7歳年上の発明家である。


 2人は互いに夢を語り合い、その目標のために力を合わせようとしていた仲間でもあり、またハーネイトとは別の意味で曲者、あるいは切れ者と言える存在でもあった。ハーネイトの力添えで目指していた事業を起こし、今やその会社の代表取締役として、毎日多忙な日々を過ごしているという。


 そんな多忙な彼が、ハーネイトの頼みを聞いてここまでやってきたのであった。


「今のところそれなりにこちらが優勢。かな。敵幹部を計5人こちら側の者にしたし、敵がほぼ虫の息と言うか、孤立無援に近い状態だ。作戦に必要な要素はすべてそろったよ。気を抜くことはできないが」


「それはいいが、毎度のことだがハーネイトの人材運用術は奇抜と言うか、破天荒と言うか。大丈夫なのか?内部で何かないといいのだが」


「今のところはね。でも大丈夫だよ」


 ハーネイトはまたも悪魔の笑顔でゼぺティックスに心配ないと告げる。その顔を見て、彼はそれ以上言葉を出せなかった。そして、初めて出会った時に見せた笑顔と今の彼の顔を重ね、ゼペテイックスは安心したかのように不っと笑った。


「じゃあ、みんな15階の部屋に来て。最大級の作戦を発令する」


「おお、いよいよですか、ハーネイト様」


「儂にも出番はあるだろうな?」


「いいわね、ストレス発散にもってこいだわ。いつでも人形兵4020騎は動かせます」


 ハーネイトのその言葉に、シャムロックたちは意気込んでいた。それぞれが異常に高い戦闘能力を持ち得意分野も違う3人。普段は仲が悪いこともあるが、戦いにおいてはそれが嘘であるかのように高度な連携を見せるのであった。


「血の気の多い召使たちだな」


「割といつもこんな感じだよ」


「気苦労が、耐えなさそうだ。ではこちらは指定した都市に一機ずつ配置しておく。いつでも動かせるように部下たちに銘じておくから、早くあんな連中を黙らしてくれ」


「ああ、もちろんだとも。そして終わったら、おいしいものでも食べながら話がしたいね」


「ハーネイト様……折角会えたのに」


 ハーネイトとゼぺティックスの会話を聞いていたルテシアは、肩を落としてため息をついていた。折角命の恩人に会えたのに、まともに話す時間がないなんてとがっかりしていたのであった。


 彼女にとって、目の前にいる二人の男は救世主と何ら変わらないほどの存在であった。すると彼女の表情に気づき、ハーネイトがルテシアに声をかける。


「ルテシアか、立派になったな。そうだな、旧友とルテシアを合わせて、昔話でもしたいね」


「約束、ですよ。でも、一目会えてよかったです」


「ああ。あの時に助けた少女がここまで成長してくれるとは驚きだ。これからも頼むぞ」


「はい!ハーネイト様」


「では私たちは一旦ここを出る。しかし魔法使いか。気を付けてくれよ」


 そういい、ゼぺティックスとルテシアはホテルを後にした。これから始まる決戦の前に、ハーネイトに指示されたとおりに人員を輸送するため、新型にしてアクシミデロにおいて珍しい航空輸送機、トランスポーターⅢの最終点検に入るため、彼らは急いで各部隊に命令を伝えるのであった。




 そんな中、DGの方では幹部会が結界の中にある拠点の大会議室で行われていた。


「計画始動からはや2か月、しかしこの体たらくはどうした。DGの名が泣くぞ」


「白い男がここまで来ているうえに、謎の集団がこちらの幹部を計5名も手元に置いたらしくて」


「ふ、ふざけたまねを。まるであいつみたいじゃないか。でその正体はつかめたのかね?」


「い、いえ。それを知っている人物、ボガーノードまでがその者の支配下になったようで、その際に技術徴収官ボノスが融合型デモライズカードを使用した後行方不明になり、ガンダス城の研究拠点も消滅しました」


「ああ、そうかい。30年前のあの勢いはどこへやら。そして機士国の連中もまともに機能していない。こうなったらジュラルミンも抹殺してくれようかね。それに計画に必要なものはすべてそろった。用済みだ。宣戦布告もしたが、どうするかねえ」


 黒いケーブを纏い顔が見えないようにフードで頭部を覆っている女性らしき魔法使い、憎悪に身を包んでいるかのように邪悪な気をはなっていた。徴収官たちからの報告を聞き、予定よりもかなり作戦が遅れていることに相当憤っていたようであった。


 ちなみにあのデモライズカードを使った徴収官、トラヴァン・ボノフ・ボノスという大男はハーネイトに助けられ悔しさとカードの危険性に関する話を聞かされておらず憤り、DGを離反してやるとその場を後にし、同じく離反した仲間の元に身を寄せているらしい。下手すれば爆発して死んでいたのを、ハーネイトの緑龍の力で助けられたことに、彼は戸惑いと感謝をしていたようである。


「少しは落ち着いたらどうですかいな、セファス」


「私の名前を気安く呼ばないで頂戴。私はジルバッドに、いや世界に復讐するためあなた達と手を組んだのよ。もしもこのような状態が続いたら私も黙っていはいませんよ」


 セファスと言う魔法使いに対してパラディウムがそうなだめる。しかし彼女の怒りは収まることを知らなかった。


「それは分かっておる。おい、ヴァイドラや。遺跡のありかは分かったか?」


「はい、パラディウム様。ここから1000kmほど南下した場所に巨大な構造物を発見したと偵察兵から入電がありました。おそらくそこではないかと。問題はそこに番人がいるようでして、すでに数名の偵察兵と機械兵が……」


 緑色の軍服を着たヴァイドラと言う男がパラディウムの質問にそう言葉を返した。どうも彼らはその、遺跡という場所に攻め込もうとしているようである。しかしそこにいる一人の男により、まともに近づくことさえもできない状況であると彼女に説明した。


「番人など、デモライズカードをつけたアンデッドや魔獣で撃ち滅ぼしてしまえ」


「まあそうですな。計画のためにも退けぬ、退けぬのだ」


「しかし敵に回ったとみられるユミロとボガーノード、そして徴収官の一人を殺したミザイルたちの

処遇はどうしますかね」


「ふん、裏切り者には死あるのみだ。容赦せん」


「ああ。これ以上離反者が出ないように監視を怠らない方がいい」


 パラディウムは、その遺跡を守る男を抹殺するために、ヴァイドラに命令を下す。そしてDGの会議はまだ終わることを知らず、延々と話が進んでいた。白い男のこと、謎の勢力のこと、そして霊宝玉のことと議題が移り、再度話をするということで全員が了承し、部屋から幹部たちが出て行った。


「やれやれ。霊界人の世界の創造は時間がかかるのう」


「そうですな。何せ数がそこまでいないものですからねえ」


「しかし、少しでも同志を増やしたいのう。そして未来を支配するのはこの霊界人、いや、ヴィダールの我らだとな。そして、あのエヴィラから聞いたソラが生み出したという龍王候補、ハーネイト。あ奴をどうするか」


 部屋の中に残ったゴールドマンとファーレンという男がそう話をしていた。実は彼らも、ハーネイトがもしかすると霊量子を操る存在、つまり同族であるのではないかと推測を立てていた。それは、彼の下に多くの霊量士が集いつつあることを把握したからであった。


 一方その頃、エレクトリールはボガーノードと屋上でしばし話をしていた。


「あなたもかなりの苦労人ですね」


「それなら貴女だな。こうしてまともに話をしたのは初めてだが、似た者同士、仲良くしてくれるとありがたい。過去のことは、この際水に流そう。旧派と新派、今はそんなことで争っている場合じゃねえ」


 二人は互いに今までの不幸話をする中で仲を深めていった。最初は警戒していたエレクトリールも次第にその表情を緩ませていった。ボガーノードが着ている黒地に様々な花やモミジの葉の模様をあしらった長袖の上着が時折砂漠からの強風でたなびいている。


「ええ、世界の命運がかかっていますからね。しかし寝返ったら容赦しませんよ」


「それはない。というか貴様がそれを言える口か?俺はあの霊界人どものやり方と思想が気に食わないのでな。いくら自身たちが優れているからと言っても、他の命を奪うことはないだろうと。それと俺はそう思ったことは一度もない。あくまで人は人だし、獣は獣。それぞれいいところも悪いところもあるのさ」


 ボガーノードの言葉になぜか彼女はほっとした感情を抱いていた。どこかでハーネイトと似ているところがあることに。似たもの同士が集まるとはよく聞くが、今のこの状況がまさにそうなのだろうかと思い、うれしそうな表情を見せていた。


「だから安心しな。それにハーネイトはいい上司だ。以前は一人で行動していたと聞いていたが、彼は会社の運営でもした方が向いていると思うがね。士気の上げ方については文句ない。だが、王様は、彼にはまだ荷が重たいんじゃないかねえ。心に傷を負っている以上、あまり期待をかけるのもなあ」


「そ、そうですね。彼はまず、治療をしないといけないでしょう。傍にいて思いましたが、どうも不安定な感じがしまして」


「ああ、シャックスやユミロ、リリエットは相当あれに肩入れしているみたいだが、少しは若い彼のことも考えてやれよとは思うがな。あとフューゲルとか言ったな、あれもだな」


「……そう、ですね。私、あの人に期待を押し付けすぎたのかもしれません。なまじ力があると言いますか、あの雰囲気と優しさ、大らかさに惹かれて、大切な物が見えなくなっていたかも」


「気持ちはわかるが、な。まあ、お互い死なない程度にうまく立ち回ろう。できれば残りの執行官もすべて引き込みたい。洗脳を受けているならば解除すれば本来の目的を思い出すはずだ」


 あまりにハーネイトの潜在能力が高いことを、力を使う者たちは既に認識していた。それが故に、もしかすると大きなことを成し遂げてくれるのではないか。そう誰もが思い、どうしても期待を寄せてしまう。


 けれども彼は周りの人のように平穏に暮らしたいため、どうしてもそこで食い違いが生じることになった。


 元々彼は教師として働いたり、魔法などで人助けをする仕事が一番向いていると自身でそう言っている。しかしずっと、その願いは本当には叶っていない。


 そしてボガーノードのその言葉の中にフューゲルと言う言葉を聞いたエレクトリールはそのことについて、以前であったことについて話をした。


「何だと、通りで霊界人とは違った妙な気がするわけか。まあいい。仲間になったのなら別にいい。おっと、上官が戻って来なすったぜ」


 そう話していたボガーノードとエレクトリールは、ハーネイトの姿を見てからゆっくりと立ち上がったのであった。




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