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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第107話 決戦前の下準備



その頃ハーネイトは、ボルナレロとホミルドを連れて地下に続くエレベーターに乗り、降りてから薄暗い廊下を歩いて、大きな扉のある部屋を二人に案内した。


「おお、これは大きい部屋だ」


「もしかしてここが新しい研究室か?」


 二人の言葉にハーネイトは優しくうなずき、その扉を開け電気をつける。するとそこには綺麗に机や椅子、そしていくつかの用具が棚に収められた実験室があった。


「これは、なかなか」


「電気も換気もしっかり設備整えているよ。それとね。はっ!」


「何をする気だハーネイトよ」


 ホミルドがハーネイトの様子を見て身構える。すると彼は机や地面にガンダス城にあったコンピューターや実験機材などを召喚し、それを魔法できれいに並べ上げる。


「ほい、どうかしら?二人とも?」


 ハーネイトが笑顔で、わざとあざといモーションで二人に話しかける。


「だからその色っぽい声はやめておけと前にあれほど言っただろう、ハーネイト。不思議な気分に、なる」


「ふむ、これだけあればある程度の研究はできるし解析も余裕だ。しかし、あの時に出会った少年がここまで大成するとはな。わしは感動している」


「これから増える研究者たちに少しでも楽に働いてもらえるために準備しておきました。改めて、ホミルド師匠。ご元気で何よりです」


 ハーネイトはこうなることを見越して、予告状を手にしたその日にすぐ地下室を魔法で整理整頓し、次元力で召喚した機材や机などを並べていた。少しでも研究者たちの士気を上げてもらい、DG討伐に必要な発信機やGISシステムの更なる構築に全力を注いでもらいたいからと言う彼のささやかなプレゼントであった。


「うむ、風の噂で医療や教育などでも活躍しているのは聞いておったぞ。あの時色々教えた甲斐はあったなあ。それと孫たちがお世話になった。改めて礼を言う」


「えへへ、それとボルナレロ、GISシステムの方頼んだ。それを逐次RTMGISで監視してほしい。それとこれを。魔力観測プログラムだ。これをベースの地図データレイヤーに乗せて表示してみてくれ」


 ハーネイトはボルナレロにあるデータディスクを手渡した。その中にはボルナレロの開発した超広域GISレーダーに組み込ませるあるプログラムが入っていた。


 ハーネイトは。敵が魔法使いであることを理解した時から、敵が結界を張ってくることはすでに見抜いており、またそれが隠蔽迷彩型だと探すのに非常に時間がかかることも理解していた。幾つも結界には種類があるが、それが最も厄介なものであった。


 しかし長年の経験から、その魔力の乱れを見つけるという逆転の発想でそれを見つけられれば、そこが拠点ではないかと考え、独自にそういったシステムを魔法工学で開発していたのであった。


 彼が渡したこのデータは、かつてボルナレロと共に開発し星の各地に設置しているレーダーとリンクさせて、ボルナレロの祖父が開発した地図データの上に重ねることにより初めて効力を発揮するものであり、広範囲に魔力の波を発射し、帰ってくる反応を瞬時にソフトウェアを組み込んだ画面上に表示させて、敵の魔力運用拠点をあぶりだす代物である。


 地図を構成するデータは多種多様だが、必要なデータだけを随時重ね合わせ表示できるこのGISという代物は、圧倒的な応用力を秘めていた。

 

「これがお前の切り札か。よくやるな。確かにこれで燻り出すことはできそうだな」


「敵が強いほど大気中や、その周辺の魔力の乱れは顕著になります。それを利用するのです。もし異変があれば連絡して。そういやダグニスも来ていたな」


 ボルナレロにそうして組み込んだプログラムの説明を行ってからハーネイトは携帯を取り出しダグニスに連絡をかけた。


「兄貴!一体どこに行っていたのですか。もう」


「悪かった、そしてダグニスに頼みたいことがある。ウルシュトラは分かるか?」


「あのホテルですか?15分ほどで向かえますが」


「わかった。地下室で博士たちが研究をするからその補佐に入ってほしい」


「そういう仕事ですか?え、ええ。わかりました。では行きますね。それとロイ首領からの報告書です。あとで目を通してください」


 ハーネイトはダグニスに連絡をし、ここに来てもらうことにした。そして十数分後にダグニスはホテルの地下室にやってきたのであった。


「来ましたよ、ハーネイトの兄貴。はい、これが報告書です」


「済まないな。あのGISタブレットは持っているか?」


「はい、ありますよ」


「実は敵を追い込むのにそのGISを使うのだが、その敵の動きについて観察をお願いしたい。それと以前から欲しがっていた強力な通信機器をアリスにあげよう。これで各地のみんなとより連絡が取りやすいはずだ。コンピューターもあるし、好きにやってくれ」


 ダグニスは仕事内容に少し不満があったものの、ハーネイトのプレゼントに目を輝かせ、快諾することにした。本当はずっとそばで支援をしたい。けれどまだ未熟な自分に何ができるのか、それを考えると今はこの形で彼を、師匠を応援すべきだと彼女は考えたのであった。


「えへへ、これで連絡取り放題です!」


「そういうことで、よろしくお願いいたします。ホミルド博士はけが人が出た際の治療や合成魔獣の弱点や性質などに関する報告書の作成をお願いします」


「うむ、了解した」


 そうしてハーネイトは部屋を後にし、15階の部屋に戻った。次に機士国王や夜之一、藍之進らに連絡や手紙を書かなければならなかった。そして専用の部屋の中で小一時間手紙を書き続け、ニャルゴやウェンドリット、ワニム・フニムを呼び出し使いをさせた。


「ふう、とりあえず連絡はいい。あとは、報告書の確認とさらに幹部たちと話でもするか」


 ハーネイトはコートを着て、部屋を出ると屋上に向かう。道中でリシェルやボガーノード、南雲たちの話が聞こえ微笑ましく思いながら、数分で屋上に出て、そこで召喚ペンからユミロを召喚する。


「うがああああ!」


「ふう、やっと召喚ペン使わなくても呼び出したままに出来る」


 そのことはにユミロは少し不満な顔をしていた。


「もう少し、あの中に入っていてもいい。そっちの方が、みんなといられる。それがいい」


「そう、か。確かにあの部屋の中じゃユミロは大きすぎるからね。みんなの声ってあの中でも聞こえるの?」


「そこまで、じゃない。けど近くにいるのは分かる。それでいい。だけど、DGのボスと戦う時、絶対呼び出せ。みんなの仇、とらねばならない。あいつらさえ来なければ、誰も死なずに済んだ…っ」


 そういい彼は真剣なまなざしをハーネイトに向けた。何が何でも、故郷を破壊したやつを許さないという強い思いが肌を通じても、目を通じても伝わってくるのであった、


「勿論だよ。ユミロ。その時はよろしく」


「うむ。ハーネイト。ありが、とう。しばらく、この屋上にいたい」


「うん、わかった。気が済んだらペンの中に戻ってきてね」


 そう言い、ハーネイトは次の用事を済ませるため部屋に戻ろうとした。しかし屋上にあるドアを開けようとした時、目の前にボガーノードが現れた。


「ハーネイト、ここにいたか」


「あ、ああ。ちょうどよかった。聞きたいことがあってな」


 ハーネイトはホテルの屋上に座り、そこから見える砂漠を眺めつつボガーノードに話をする。


「敵の幹部の中でも、5人の執行官と予備役の5人だっけ。どのくらい強いのだ?」


「まちまちだが、どいつもこいつも破格の力を持っている。ゴールドマンとその副官は特に手ごわい。それとモルジアナとアルティナ、ブラッドバーンは好戦的だから要注意だ。詳しいことはリリエットに聞いてほしいのだがな」


「敵にそういうのがいるのか。面白い」


「それと、俺の持つ能力に似た感覚をあの装甲から感じた」


 ボガーノードのまたも興味深い言葉にハーネイトはそのことについて尋ねる。


「あの霊を物質化する力という奴か、リリエットがそのような力を使っているのを見たが」


「そりゃ、そうだろうな。霊界人、いや、いまは霊量士といったほうがいいか。やつの中にはそれができるのが多いのさ。それはあんたにもできるはずだ」


 ハーネイトは少し時間をおいてからその発言に驚いた。確かに薄々実感はあったものの、そこまではっきり言われて少しだけ動揺していたのであった。


「それはありうるかもしれねえな。それと、今のところ、あの幹部たちに十分に勝てる勝算はある」


「だが用心はしないといけない。というかボガーノード。かなり変わっているな。霊を従えたり戦術に利用したり、初見でそれをされていたらさぞこちらも苦労しただろうな」


「それはそちらの変身能力もだろう?全く別人になっていたようだが、あれはどういうトリックだ」


 ボガーノードはガンダス城でハーネイトが見せた能力について相当気になっていたようで、ハーネイトは仕方なく大まかに仕組みを話すことにした。


「なに?魂を膨大なデータとして保管し、それにあの金属を霊量子化してその者の肉体を作り力を借りるか。相当恐ろしいな。霊装化よりも複雑かつ、多くの変身ができそうだが、龍の力というのだけで負荷になっていそうなのがあれだな」


「霊量子化?」


「目に見えないようなものを物質として顕現させたり、今形があるものを霊体に替える分解と再構築の一例だ。ハーネイトはそれを金属に対しても行えるというのだな。俺ら霊量士は大気中の霊量子を糧に多様な能力を発揮できるのだが、ハーネイトもすでに使えるはず、万物を構築する最も基本となる物質を、俺らは操れる資格があるのさ」


「よくそこまで教えてくれるね。今もし、ここで戦ったらいくらその霊量子化が厄介でもこちらが有利だと思うのだけれど」


 ハーネイトは自身に対しそんなに重要な情報を話して、問題はないのかとボガーノードの顔を見ながら少しだけ雰囲気を変える。そして彼の話に、非常に関心を示していた。もしかすると、古代人が持つ金属などの元素を操り作り出す力は、ボガーたちの能力と成り立ちが同じなのではないか、どこかでそれを確信し、改めてその力の成り立ちを理解したいと彼は考えていた。


「まあ細かいことはあまり気にしなさんなよ。流れに身を任せるというのも楽しいものだ。それにハーネイトは戦う気などないだろう?」


「神経質だとでもいうのかい?こちらもワンマンでやっているならそのような感じでやれるさ。しかし人を率いる責任上、それだけじゃだめだなと」


「そこが難しいところか。しかしこのままあの胸糞悪い上司のもとにいるかと思ったら、こういう流れになった。人生は分からなくて予測不可能だ」


 ボガーノードのその言葉にハーネイトは同感した。確かに自身の出生も謎ばかりで嫌なこともあったけれど、こうして多くの仲間がいるという事実は昔の自身から見れば予測できなかったことだと思っていた。


「そうか。それも、そうか。しかしボガーノード、なぜそれほどの力がありながら上の方になれなかったのか?力で圧倒すればよかったのでは?」


「それがうまくいっていたら牛耳っていたさ。しかし奴らの上の方は全員著名な武器商人の一族だ。それも複数のな。所詮負けたところから実力で成り上がろうとしても、上の奴らが何が何でもそれを阻止するのさ。それと、奴らからしても俺の正体を知れば侵略者としか言いようがない」


「DGか、元は対侵略者の同盟。そしてそこまで今は堕落している。悲しい話だ。霊界も、別の世界にあるというわけか。うーん、ここまで複雑になると何も考えたくなくなってきた」


「そうだな。それでこの先はどうするのだ?」


「それは後で全員の前で説明する。今は少し寝かせてくれ」


 そう言い、ハーネイトは屋上に大の字になって、青空を見ながらひと眠りする。


「しかし、俺らを恐れないとはな。よほど心が座っているのか、気にしないのかわからないな。だがそっちの方が、接しやすい。器の広さか」


 ボガーノードは無防備に寝ているハーネイトを見て彼について思っていることを口に出した。ある意味とんでもない力を持つ男の下につくとはと苦笑もしていたが、それもありかと今の現状を彼は受け入れることにした。


 そしてボガーノードも寝転がろうとした時、屋上に新たに人が来た。それはエレクトリールであり。少し息を切らしていた。そしてかなり急いでいる様子であった。


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