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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第101話 ボガーノードの加入と資料確保


「はあ、はあ。この男を連れて後で尋問せねばな」


 ハーネイトは倒れたヴァンに手をかざし、紫色の空間に転送した。それからふと彼は、大きく空いた廊下の天井を見上げ、星空を少し見つめていた。


 敵の力量はある程度分かったものの、依然として脅威であることに変わりはない。それに同業者との戦闘はやりづらい。そう思い改めて気を引き締める彼であった。敵の親玉が精神支配系の同業者ほど面倒な物はないと彼は嫌そうな顔をしていた。


「また仲間が増えるのか、恐ろしいわ」


「どうかわからない。しかし、かなり強引に洗脳して連れてきている可能性が出てきた。ますます、魔法使いとして許せない。魔法は、自分の私利私欲だけに使ってはいけない。それ自体が過ぎた力だから……」


 伯爵の言葉に、ハーネイトはそう返しながら、魔法を非人道的に使っている敵の魔法使いに怒りを覚えていた。


 ジルバッドの教えに反する魔法使いは、魔法の秩序のために討伐しなければならない。他人の幸福のために魔法はあり、己の欲に極力使うな。だからこそ、そういう相手に対して全力で戦わないといけない。魔法使いとしての誇りをかけて全力で臨むまで、そうハーネイトは思っていた。


「しっかしよ、こうなるとは思わなかったぜ。さあて、俺様もこちら側につくかね。真の敵も分かったことだし、早く他の仲間も助けないと。それに、対象の考えはよく分かったしついていってうまくやれそうだ」


「そうか、ではついてきてくれ、ボガーノード。待遇は約束する」


 ボガーノードがハーネイトたちの下に加わると宣言し、ハーネイトの目の前に来た。


「真に悪いのは、ゴールドマンではなくその魔法使い。どちらにせよ、やつとは因縁があるのでな……その前にボガーノード、この研究所の機材とかをありったけ回収したいのだが、そういうものはどこにあるのだ?案内してほしいのだけど?」


「それはこの廊下の先を左に曲がって、2階にある巨大な部屋にそういうものがある。ついてきてくれ。もうこの場所は放棄せざるを得ないだろうしな」


「それはそうだろうが、長年DGにいたのだろう? ……いいのか?」


 ハーネイトは一応確認を取った。その言葉にボガーノードは笑いながら思っていたことを口にし始めた。


「ああ、別にいいさ。俺も正直ユミロと同じ気持ちだ。それと先ほどの答えだが、ハーネイトはDGの上級貴族たち。つまり欲にとらわれ他人を不幸にするような存在にはならない気がするぜ。ユミロはそういうのを非常に嫌うんだ。そいつが懐いている時点で答えは見えたものだ。だからそういうところだけは、今のままでも問題ないんじゃないのかね」


「そう、か。敵にアドバイスと言うか、いろいろ言われるのは2度目だな。って、もう味方だよね!」


 ハーネイトはボガーノードの言葉を聞き、心の中で何度も復唱していた。


「俺も、運ぶの手伝う。行こうマスター」


「ありがとうユミロ。じゃあ機材を一か所にまとめてくれないかい? 私の能力で保管しやすいからさ」


「了解、した!」


 ボガーノードはハーネイトの不安について、今のままなら暴君になることはないだろうと、ユミロの懐き具合からそれを察しつつ、2人のやり取りを不思議なまなざしで見つめていた。


「噂を聞いた時から思っていたけど、あれほど変わり者もいないというか、人が良すぎない? ……昔から、お人好しなところは変わらないわね」


「そう、ですね。どこか子供のような純粋ささえ感じるといいますかね。けれど、それで今はいいと思いますよ。あの力を暴走されては困りますし」


 そのやり取りを見ていたリリエットとシャックスがそう思って話をした。そして昔の面影がまだ残っていると、彼女はボソッと独り言をつぶやきながらハーネイトたちの後を追いかけた。


「伯爵たちもいくよ。早く回収してシャムロックの所まで戻るんだ。それとミカエルとルシエルはリシェル、エレクトリール、ギリアムを連れて先に戻って。ミロクたちからの連絡がつかないのだ」


「え、ええ。ではみんな使い魔に乗って !急ぐわよ」


 ミカエルとルシエルの指示でリシェルたちが乗り込むと、穴が開いた天井から脱出しベイリックスのある方向に飛んで行った。


「では残りのみんなは手早く回収を」


「いいぜ、任せとけ」


 そうして残った人たちで研究所内にある機材や装置の一部を回収するために、ボガーノードの案内でその部屋に到着した。そしてそこにはすでにエフィリーネがいて部屋の中に会ったDGの資料を集め終えていた。


「もう、先生おっそーいよ。待ちくたびれたよ」


「済まなかったな。不測の事態に巻き込まれてな。こういう時に限って、能力があってよかったなと思う」


 エフィリーネに軽く謝りながら、周囲を確認しどれだけ使えそうな機材があるかを把握するハーネイト。それについてボガーノードが先ほどのヴァンの件も含め、ハーネイトの能力について正直に思っていたことを口にした。


「あらゆる物体を出し入れ自由とか反則だろそれ」


「物心ついていた時からこれだからね」


「あ、ああ、そうか」


 しかし彼の言葉を聞き、ボガーノードはそうなのかと思わず心の中で納得していたのであった。それでも、ハーネイトが身に宿す力の幾つかについてかなり警戒をしていたのは確かであった。

 

「ハーネイト、力すごい」


 ユミロとボガーノードが機材をひとまとめにして、ハーネイトが次元空間にそれを一つずつ転送した。それを見てボガーノードは目を丸くしていた。どういう原理か全くわからなかった彼らは、ただただ消えていく装置を見ていたのであった。


「こっちもいいぜ」


「改造人間の資料? こんなものまであったのね。趣味が悪いわ」


「改造人間については、今回の戦いでは見当たらなかった。未然に防げたのならばいいがな。じゃあ帰ろう」


「そうだな伯爵。えーと、ユミロたち、あの空間に戻って。空飛べないでしょう?」


 研究資料や機材などを確保し終え、ユミロたち幹部をペンにより紫色の空間に転送するとハーネイトの合図とともに一旦城を後にし、飛行魔法で夜空を自由に駆けていく。そしてシャムロックたちが待機しているところまで向かっていた。


 しかし周辺の様子を確認したハーネイトは違和感を覚えていた。妙に生物の気配が多い。しかも魔獣が通常よりも多く存在していることに気づくと再度戦闘モードに切り替える。


「何者かに包囲されている? 気配、それに熱源が妙に多いな、急ぐぞ!」


 ハーネイトは伯爵たちに命令を出しつつ、自身も移動速度を速める。そして紫色の空間に転送された4人は、ヴァンの容態を見ていた。


「とりあえず疲れて寝ている感じね」


「少なくともこの中は、安全だ。それよりも外がおかしい。妙な気配、多数いる」


「そうですね。この視線、雰囲気。この中ですらわかる。となればいやな予感がしますね」


「まあ、必要とあらば呼び出されるでしょう。今のうちに治療しておきましょうか。しかし、龍の力……わずかに霊量士たちも持っているのが気になる。それが、ヴィダールの力を使うための条件なのでしょうかね?」


 4人が鋭い感覚でそう感じ、ヴァンの応急治療を行うリリエットであった。そのおよそ1時間ほど前、シャムロックたちは二人の博士と話をしていた。


「あなた方がハーネイトに仕える召使たちか。しかし面妖な」


「誰が、面妖ですって?」


「悪い、口が滑ったな。しかし助かった」


「私まで助け出してくれるとはな。事前に他の研究者は別ルートで希望者は避難させておいたが、数人説得しておいとけばよかったな」


 ボルナレロ達はトレーラーの中で温かいコーヒーを飲みながら3人のメイドとアーディン、ルシフェルたちと話をしていた。メイドたちのあまりの異様さというか、気迫の強さに思わずボルナレロは口を滑らせた。そしてほかの研究者たちについてどうなったか、彼らに説明したのであった。


「しかしおじさんたちが無事で何よりです」


「だが面倒なことだらけですな。魔獣に変身するカード、合成獣、改造人間、魔獣操作。敵にこれだけのカードがあるのは厄介ですなあ」


 アーディンはボルナレロとホミルドから聞いた話を整理しつつ、事態の複雑さに、年齢に似合わない風貌に皺を更に寄せた。


「それをハーネイト様がどうするか、ですな」


「あまり彼に働かせすぎるとそろそろ過労死しそうなんですがね」


「それなら、現に数日前主殿は倒れました」


「うぉい嘘だろ!? あーあ、だから言わんこっちゃないって」


「むむ、やはり無理を重ねておったか。昔から我慢しすぎる所はあったからのう」


 シャムロックの言葉に博士2人は同時に声を上げた。いつか絶対そうなるだろうと二人とも思ってはいたのだが、それでも実際にそうなったと話を聞かされて心配な心境であった彼らであった。


「少しは自身の体をいたわれとあれほど昔から言っていたのにな」


「しかし先ほど会った彼の表情は健康そのものだった。誰が治したのだろうか。あやつ魔法使いと喧嘩して呪われておるからのう」


「ああ、それは」


 ミロクが伯爵について説明しようとしていた矢先に、ミカエルやリシェルが帰ってきて、トレーラーのドアを開けて入ってきた。


「おお、戻ってきたか」


「はい、ただいま戻りました。ハーネイトたちもすぐに来るわ。それよりもシャムロックさん、例のレーダーを確認してほしいのです」


「わかった。さて、と。むむむむ、これは一体!」


 シャムロックはミカエルの言葉を聞き探知レーダーを確認した。するとすぐにレーダー上に映る無数の光点に気づきすぐさま運転席に乗り込んだ。


「いかん、包囲されている。一旦引くぞ!」


「何ですって?」


「一体誰が!」


 ルシエルたちが驚く中、シャムロックは車をいきなり猛スピードで走らせて、一旦数十キロ先にある街道の方に出ようとしていた。


 主や伯爵が戻っていない以上、いくら歴戦の戦士たるシャムロックでもレーダーに映った魔力反応の数では対応が難しい。そう考え一旦距離を取ることにしたのであった。


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