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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第100話 DG執行官ヴァンVSハーネイト


「それは、昔からだな。実は彼はアレクサンドレアル様から代わりに王様になってみるかと言われ、即座に拒否したという」


ハーネイトが旅のため機士国を去る前に、アレクサンドレアル6世は彼に対し少しだけ冗談交じりに一国の王になってはみないかと提案してきたのだった。


 王曰く、彼に王になってもらった方がより多くの民を幸せにできるのではないかと感じており、自身の力不足を鑑みてそういったのである。


 しかし彼はその提案を即答で拒否し、すさまじい剣幕で王に説教したという。あなたがいるから、民が同じ方向を見て歩んでいける。自身にはまだそれは難しい。戦うのは得意だけれど、率いるのは、苦手なんだと。誰かを信じきれない傷付いた状態でそうなってもみんなを不幸にすると、そうハーネイトは思いを打ち明けたと言う。


 ギリアムもその場にいたため、今でもその一連の出来事を覚えていた。


「その頃から、王として何が必要か模索し悩んでいたのですね、ハーネイトさんは」


「それを聞いて、機士国王もまた上に立つ者の資質とは何かを考えさせられたってさ。そのおかげか色々住みやすくなったけどな」


「自身の力量がまだ至らぬと分かって、常にだれかの幸せを願うために提案を避けるか、か。そこまで奉仕し続けるその精神が、恐ろしくもあるが信頼に足る力でもあるな」


 エレクトリールとリシェルは向かい合いながら空を見つつ、まだ10代でそう考えを持っていたことに驚きボガーも彼の精神性について違和感を覚えながらも大した男だと頷きながら認める。


「ハッハッハ、仕方ないな。まあそれも彼らしさだろう。しかしあの連中、本来敵なのだろう?」


 そうギリアムが言ったとき、ハーネイトがやってきて彼に話しかけた。


「確かにそうです。ですが彼らも被害者のようです。そしてお久しぶりですギリアムさん」


「ああ、そうだな。……あの時に比べ、少しは顔つきも逞しくなったか?英雄王。しかし被害者だと?」


 リシェルからギリアムの話を聞いて、無事かどうか不安であったが彼の顔を見て、ハーネイトは安堵の表情を浮かべた。彼もギリアムと付き合いが長く、王に仕えていた際には鍛錬の相手としてよく刃を交えていたという。


「む、ハーネイトがそこまで言うのならば本当なのだろう。同じ魔力反応か。しかしそのような手練れの魔法使いなどすぐにわかろう」


「実はそれについて魔法協会に問い合わせたのですが、どうも連絡がつかないのです。バイザーカーニアを向かわせていますが、すべての魔法使いの情報はそこにあるため照合には時間がかかりそうです」


「それなら仕方ないな。しかしどうする?」


 その時、廊下の奥から無数の機械兵、そして一人の背の高い、やや煤けた茶色のカウボーイハットをかぶった男がゆっくりと、ほとんど足音を立てずに歩いてきたのであった。


「貴様らか。ここで暴れていたのは」


 その男がハーネイトたちに声をかけてきた。男は背中に何かを背負い、そこからケーブルらしきもの両脇から一本づつ伸び、それが手にしていた拳銃とつながっていた。ハーネイトに似ているがより青みを強調したコート、そして派手な装飾品を首や腕に着けていた。


 しかし雰囲気はどこかいつも穏やかに、落ち着いているハーネイトのものにかなり近いものであった。


「ヴァン! 何故貴様がここに」


「それは、こちらのセリフだ。それに、シャックス、リリエット。そして、あれはユミロか。なぜそこにいる。そして、そこの写真の男。ハーネイト!」


 ヴァンという男は突然手にした銃をハーネイトに向け、高圧の水レーザーを数発発射した。それをハーネイトは全員を守るように前に立ち、紅蓮葬送で壁を作りその一撃を防いだ。


「っ……! いきなり発砲とは、どういうことだ?」


「フッ、その程度は防ぐか。ならこれはどうだ!」


 ヴァンは両手の銃を構え、無数の水レーザー、そして水の弾丸を大量斉射した。さすがのハーネイトも紅蓮葬送だけで防ぐのが難しく、藍染叢雲を突き出し魔閃を数発発射しそれを止めようとする。

 

 だがそれを見切られ、今度はヴァンが空中に飛びあがり上から巨大な水の玉を銃口を合わせてから発射した。


「舐めたまねを……!弧月流・十六夜乱月!」


 ハーネイトは素早く刀を構え、その水の玉を離れた所から16回も瞬時に切り刻み攻撃を阻止した。


「なかなかの火力だ。しかも、あいつからジュラルミンの写真と同じような邪気を感じる。いいところに被検体が来たな」


「解除するのですか?」


「やるしかなさそうだ。大魔法を放つために少し囮になってくれみんな。リリー、42番を撃ってくれ、こっちは6番で行く。しかし相手もヴァンと名乗るか、ややこしいなおい」


「了解!」


 そしてすぐさま陣形を変え、ハーネイトとリリー、リシェルとシャックスは後方に、それ以外は前に来て彼らを守るように壁を作った。


「どけ、俺は、そこの男に用がある。脅威になる前に、貴様、倒す!」


「ああ?何言ってんだガキが。さっさと家に帰りな」


「ヴァン、貴方洗脳されているのよ、気づかないの!」


「お、俺は、い、ぐ、うおおおおおああああああ!」


 ヴァンから放たれる邪気の量が増え、全員が思わず一歩後ずさる。だが伯爵は地面に手を付け、菌でできた縄でヴァンの足元を拘束する。そして上空にいたミカエルとルシエルが拘束系の大魔法を使用した。


「光の縄、自在の幻。うねり跳ねて獲物を捕らえろ、光環の蛇が一切の動きを縛る!大魔法87の号・蛇光縄じゃこうなわ


「異界の彼方 誘う魔天、異形の存在ここに来りて 捕らえ潰し排せよ紫の悪牙。大魔法73号・異界魔手いかいましゅ

 

 ミカエルの蛇光縄が腕を、ルシエルの異界魔手がまとわりつくように彼の全身を拘束する。


「ぐおおおおおお!」


「暴走しそうだな。ユミロ、盾になって防いでくれ」


「了解…っ!」


 ボガーが不測の事態に備えユミロを前に立たせ、そしてそれに気づき伯爵も菌の壁を形成する。それでもヴァンは力をため、今にも先ほどよりも強力な攻撃を行おうとしていた。


「今だ、鏡の檻 歪む世界、あらゆる現象は逆さまに逆しまに。入れ替わる恐怖に狂い這い蹲れ!大魔法が6番の号・反転事象陣!」


 ハーネイトの詠唱でヴァンの足元に魔法陣が幾重にも展開され、一瞬その場が光る。この魔法陣はあらゆる現象をさかさま、つまり反転させる能力を持っている。


「ぐ、ふううう、ぐぬぬぬぬ!」


「魔法耐性か、リリー! 42番撃て!」


「氷の鏡檻 真実の姿。己を映し顧みる薄氷の幻、立ち返れ揺り戻れあるべき姿に。大魔法42の号・止氷幻鏡」


 彼の魔法抵抗を削ぎ、なおかつ己自身の姿を見つめてもらうために、リリーは42番の大魔法によりヴァンの周囲に氷でできた鏡を囲むように形成した。


「ぐ、お、お、俺は……なぜ。なぜここにいる。そ、そうか!」


 ヴァンはそういいながら頭を抱えてその場に膝をついた。


「俺は、ぐ……。自然、守るため。精霊と、心通わせ…て。星を守ろうとした。だが、なぜ、なぜ!ここはどこなんだ!」


 ヴァンは止氷幻鏡により映し出された自身の姿を見て激しく錯乱していた。ここはどこなんだ、俺の故郷は……。彼は今自身が置かれている状況にかなり動揺していた。


「かなり前から、洗脳の影響を受けていた可能性があるな。この取り乱しよう」


「だけど大魔法、一応効きそうね。やはり犯人はこの星の同業者ね」


「ああ。さて、どうしようか」


 ミカエルの指摘に対しそうだなと返すハーネイト。予想以上に効果があったため驚いていたが、すぐに急いで彼のもとに駆け寄り状態を確認した。


 すると胸の部分にネックレスのようなものを見つけた。そしてそれを手に取るとそこから魔法使いの魔力が流れているのを感じていた。それをハーネイトは彼から外し、よく観察してみた。


「お前は一体……何者なんだ……っ! 」 


 そういい、ヴァンは気を失いその場に崩れたのであった。

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