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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第98話 戦形変化・緑嵐竜帝(ワイヴァス・ヴェルートゥロス)


「目覚めなさい、我が娘の力を継いだ者よ」


「貴女が、ウルグサスの言っていた……アルフシエラ、様?」


 はっきりと聞こえるその声、その正体はウルグサスの言う恐ろしいヴィダールの神柱、ソラの母に当たるアルフシエラという主神の物であった。


「すでに龍の力を十二分に使える貴方ならば、鍛錬次第で埋め込まれし力の制御も容易です。さあ、緑の龍の力を使うのです。癒しと再生、風と緑を支配する世界の霊龍、その因子を」


戦形変化フォームアウトなしには難しい相手、なのですか。……やってやるよ、どのみち6つの力を操れないといけないんだったら!」


 するとハーネイトはボガーたちに僅かな時間足止めをして欲しいと要請する。それを承諾したボガーたちはすぐに攻撃と妨害を仕掛けた。


 その間にハーネイトは精神を集中させ、あの時変身した時のことを思い出しながら内なる力の1つと対面し、緑色に光る龍因子の宝玉に触れる。すると自身の足元に魔法陣が描かれていき、6角形の陣の先端にある緑色の紋章が激しく光りだす。


戦形変化フォームアウト! 緑嵐竜帝ワイヴァス・ヴェルートゥロス


 それと同時に、彼は緑色の光柱と強風に身を包まれ、新たな姿を披露する。紅蓮葬送が4枚になり、色も緑色に変化したのを肩の後ろ部分と腰の部分に左右対称に翼のように展開され、各種腕や足には緑色を主体とした龍の鎧や爪を模した装具、ヘッドパーツなどが装備され、常に風のバリアを展開している緑色の龍魔と化したのであった。


 ボガーノードとリリエットは目の前に起きた光景に頭が若干追いついていなかったが、すぐに把握しハーネイトの恐ろしさを目で見た。


 するとボガーはハーネイトの霊量士としての力の高さに驚き、彼女から何があったのか話を聞いて、この戦士こそが同じ力を持つものとして、上に立つべきだ。そう考えていたのであった。


緑風嵐弾ブロースシュトーム!」


 ハーネイトは右手を前方に掲げ突き出すと、風の衝撃弾を数発ボノフに打ち込み抵抗力を削ぐ。


「ゴハ、ウググググッ!」


「一気に片を付ける……! 決戦戯シュペルヴアトゥーク緑風再聖ルメットブリズ・プランタニエール


 ハーネイトは手にしていた錫杖槍を手元で回転させた後、両腕を重ね武器を前方に構えつつ1つにして強力な竜巻の渦を前方に射出する。


 その猛烈な緑嵐の力でDカードの浸食を受けたボノフの体を一度破壊してから超再生させDカードの影響を一気に取り除き、敵の変身を解除させ同時にダウンさせたのであった。


 この技は対象に回復と状態異常除去を与えるか、純粋に嵐として攻撃用に使うかを打ち分けられるという使い勝手のいい性能を持ちまた珍しい回復技でもある。


 それからすぐに変身が解けたハーネイトは、その場で膝をつくがDカードの力を防ぎ切ったことにどこか笑顔であった。龍の力の中には、自分が求める何時でも色あせない強さがあるかもしれない。それが優しくて強き王としての道に必要ならば、どこかで折り合いをつけて向き合い使うしかないのだろうと判断する。


「すごい、な。それも力、なのか」


「そうだね、ユミロ。っ、消費の激しさはすさまじいが、それでもこの有り余る力、フフフ」


「ひゅう、フューゲルから情報は聞いていたが、それ以上に強いなあんたは」


「な、あいつのこと、知っているのか」


 ユミロはハーネイトの力がここまであるとは思わず、頼もしく感じていた。そしてボガーノードは目の前にいた男が以前フューゲルから話を聞いた以上に、強大な力を持っていたことに驚嘆していた。


「名は、なんという。緑髪の戦士よ」


「ハーネイト。ハーネイト・ルシルクルフ・レーヴァテインだ」


 ハーネイトは、先ほどの戦闘の荒ぶりを冷静に収めつつ、静かに言い放った。そしてボガーノードに名前を名乗らせようとする。


「あなたの名前は?」


「俺か、俺の名はボガーノード。ボガーノード・ライナスと言うが、正式にはボガーノード・シュヴェルアイディック・イローデッド、だ。ボガーでいい」


「ボガーノードか。いつどこで、私のことを知った」


 その問いかけにボガーノードはクククと少し笑いながらハーネイトの顔を見る。


「それは、あの海が一望できる辺境の街でだ。フューゲルから連絡を受けてな」


「まさか、お前がリンドブルグにあの機械兵を差し向けたのか」


「そういうことになるな」


 そうボガーノードが言った瞬間、ハーネイトが血相を変えて彼に詰め寄り大声である言葉をぶつける。


「そのせいで私の休暇つぶれたじゃないかこの馬鹿!!!!!!」


「うおおおおお、いきなりなんだ!」


「ちょ、こ、声大きいわよ!」


 ハーネイトは休暇を潰された恨みを込めてボガーノードの耳元で、大声でそう叫んだ。その大声は城の外まで聞こえヴァンたちも突然のことに驚いていた。しかしその声の内容を聞いた伯爵も魔女たちも、くすくすと笑っていたという。


「がは、あんたに何の事情があるかわからんが、徴収官の命令は絶対でな。ある宇宙人の持つアイテムを回収する命令を受けていたのだ。部下であるフューゲルたちに回収命令を出していたが、ある男が全部兵を倒したと報告が来ていた。そのせいで俺は執行官から降格させられたんでな」


「はあ……。それは私だ」


「だろうな、報告通りだ。しかしこんなところでお目にかかるとは、しかし思ったより美丈夫だな、色男さん」


 ボガーノードは頭をくらくらさせながらもハーネイトになぜリンドブルグを襲ったかを説明した。そうでもしないとまた大声で叫ばれそうだと警戒していた。


「べ、別にそんな、ことはない。しかしなぜ、ボガーノード。あの男と対立していた。一応仲間、なのだろう?」


 ハーネイトの問いかけに対しボガーノードは。がれきが散乱する城の廊下の床にゆっくりと座り、ハーネイトたちに幾つか説明をした。


 幹部の中でも徴収官と言う役職の権限は執行官の次に絶対であり、何が何でも技術や兵器になるようなものを集めさせるように部下にひどい仕打ちをするものが多いこと、更にかつて部下だったボノフも彼が降格すると以前よりも陰湿な嫌がらせをしてきたという。


 またボノフがエレクトリールや大王様が所属していた旧派、つまり古参である戦争屋の集団の中でも特に過激な「黒の男」というグループにいたことを説明した。


 つまり、もともと仲が悪かった同士だったが、リンドブルグの一件でさらに悪化した結果がこれであったということであった。


「はあ、貴方たちも結構ややこしいのですね。しかしなぜその宇宙人を確保しろと命令が?」


「それはゴールドマンが言ってきた話だ。本部から霊宝玉を持った裏切者がこの星に来ていると。数年前に隕石に乗じてここに来た俺たちも驚いていた。俺たちの上官でもあり、テコリトル星におけるDGの総隊長でもあった、エレクトリールがな」


「だが、本部はエレクトリールがきた前後、いや。その前にすでに壊滅していたと彼女から聞いたが」


 ハーネイトはホテルの屋上の会話の中で、エレクトリールが話したことを覚えていた。実はエレクトリールが負傷したのは裏切者の討伐部隊というよりは白い男による侵略であり、彼女は白い男と対峙したという。そして彼から聞いた話を聞き、戦争屋の派閥の本拠点がある星はすでに壊滅したと言い、投降するようにと言われたという。


 そのため、ボガーノードたちの話とエレクトリールの話が妙に食い違うことに気づいたハーネイトは何か裏にあるのではないかと考えていた。


「なんだと? じゃあすでに戦争屋としてのDGは消滅していたのか」


「そこまでは聞いていなかったわ。そうなるとおかしいわねその命令」


「まさか、例の魔法使いが裏で何かしているのかもしれません」


「可能性がゼロじゃないってのが……」


 ハーネイトはそういい、悩んだ顔をしていた。魔法使いの詳細が不明な以上、下手に出るとこちらが窮地に立たされる可能性もある。


 魔法使い同士の戦闘はかなり危険であり、いくら総合的に魔法戦において無類の強さを持つ彼でも用心せざるを得なかった。


 彼は属性魔法に関しては圧倒的な火力をもって放てるが、絡め手といえる補助魔法と自身にかける分の回復魔法が苦手であった。これは魔女の呪いによるものが大きいがこの影響は少なくなくハーネイトも頭を抱えている。


 その代わり魔眼で色々と代用できるが、体力と精神力消費が激しいためおいそれとは使用できない。アンジェルたちを裏から精神支配で操っていた魔法使いに関して、彼は相当に用心すべき相手であると彼は考えていた。

 

 だからこそ、やはり情報がまだ足りない。一刻も早く解析と情報収集を急がねばと思い彼の表情が若干曇る。


「だとしたら、残りの幹部たち、危ないな。シノにモルテリア、ウリュウにアルティナ、ヨハンが不気味なオーラに包まれていたのは俺も見ていた。ヴァンとエヴィラ、ブラッドバーンはまだどうにかなるかもしれんが」


「どうするのだ、ハーネイト」


「せめてその影響が薄い3人をこちらに引き込んで戦線を維持し、その間に他の人たちを俺たち魔法使いの魔法で洗脳解除なりなんなりするしかないぞ。それか、今見せた変身の力でも治せるかもな」


 全く策がないわけではないとハーネイトは全員に説明したのだが、本人は自信のほどはそこまでなかった。そもそも精神系魔法を彼は使うことはほとんどなく、すべて魔眼の力で行ってきたためその点については弱いところがあった。


 その力で強制的に解除すればいいのかもしれないが、その余りある力を行使し続けた場合の影響を考慮すると、迂闊に使っていいものではないと彼は考えていたのであった。


 しかし、今の龍の力ならば自身の医療魔法の風とあの力を合わせることで絶大な回復及び状態異常解除の力を得ることができるかもしれないと思うと、少し勇気が湧いてきたと言う。


「魔法使いか。ブラッドバーンが言っていたが、確かにあの黒づくめの不気味な女。あれは近寄りたくねえ」


「しかし魔法はこちらもよく分からない。霊量子でどうにかできるものなのかしら」


「試そうにも被検体がいない。大魔法の反転事象陣か止氷幻鏡なら洗脳を解除できる公算はある。その魔法使いが、果たしてこの星生まれかどうかで変わるけど、たぶん行ける」


 そして大魔法の中にも、そういった状態異常を解消する魔法があることを伝えた。


「一応手立てはあるのね。モルテリアとアルティナが心配よ。彼女たちまだ若いもの、抵抗力がないのだったら、問題だわ」


「シノとゴールドマンも結構年を食っている。あまりそのような負担は体に答えかねない」


「なあ、シャックス。何か気にならないか?」


「ええ。影響を強く受けている人たちの、年齢層ですね」


 シャックスとハーネイトは、影響を強く受けている年齢層が若者と中年以降に偏っていることに気づいた。


 そこからハーネイトは、敵も支配系の魔法についてはそこまで熟練した腕前を持っていないと踏んだ。その根拠としては、一流の術者なら年齢や性別関係なく洗脳できるはずであるというものである。


「そうなるとますます早く魔法使いの居所を掴んで仕留めないと。しかしジュラルミンたちも危ないなそれだと。どう動くか」


「とにかく増援が来る前に撤退しましょう」


「そうだな」


 ハーネイトたちはその場から動こうとしていたそのとき、壊れた天井から何かが勢いよく降ってきた。着地の衝撃で埃を巻き上げながら、ゆっくりとこちら側に歩いてくるそれは、こちら側の方を凝視していたのであった。


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