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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第96話 博士たちの救出と敵幹部同士の内乱


 エレクトリールが背後から大猿に襲われそうになったそのとき、突然一人の男が木の上から大猿に襲いかかり、腕につけた剣で猿の左腕を素早く切り落とした。


「グオアアアアアアアア!」


 驚きと痛みで悶絶し声を上げる大猿に男は更なる追い打ちをかけて、手の甲に装備した不気味な音を立てる細長い直剣を素早く振り回し、肉を飴細工のように切り分け大猿を一瞬で肉片に変えた。


 その男の体に、サルの血液が付着しそれが月明かりに照らされて異様な雰囲気を放っている。


「あ、ありがとうございます」


「例には及ばんが、大丈夫か?二人とも。ってお前は!」


「その声、まさかギリアムさん!」


「お前こそ、本当にリシェルなのか?」


「はい、リシェル・トラヴァコス・アーテンアイフェルトです。かつてあなたの生徒だった、長腕のリシェルです」


 リシェルは探していたギリアムと再会する。しかし彼の体をよく見て、リシェルは疑問に思った点を口にする。どう見ても彼の体の約七割が機械化されているように見えており、数年の間にいったい何があったのか気になっていたのであった。


「ぎ、ギリアムさん、その体は」


「ああ、これはパワードスーツというものだ。研究者たちが極秘に開発したものでな。おもろいでこれ。しかしあの城の中は、ガチで体ごと改造された人間が数体いるとかなんとか。早くしないと捕らえられた人たちは全員改造されかねん。あと怪しいアイテムの製造もおこなわれている」


 ギリアムのその言葉に、二人は震え上がる。よもやそんな実験や研究まで行われていることに絶句していた。魔獣を利用するだけでなく、機士国の技術まで悪用されている実情を知ったリシェルは、その表情を曇らせていた。


「それは、許せませんね。リシェルさん、徹底的にやりましょう」


「それは賛成だが、冷静にな」


「そうだ。とにかくまずは包囲を切り抜けていかないとな。行くぞ!」


 ギリアムの一声でリシェルの目つきが鋭く変わる。そしてアルティメッターを両手で持ちガトリング砲を展開する。それに合わせギリアムとエレクトリールもそれぞれブレイドとイマージュトリガー2本を用いて巨大な双剣を呼び出す。暗くなった森の中、3人は的確に標的をとらえた。


「そうですね、こいつを食らえ!アルティメッター・バーストガトリング!」


「エレクトリックツヴァイセイバー!」


「高周波ロングブレイド!」


 3人はそれぞれ技を繰り出し分厚い魔獣の包囲を崩す。閃光が森の中を走り、斬撃や銃撃が木々をなぎ倒し周囲の地形すら変える。


 それから周囲にこれ以上敵が存在しないか確認したのち、ギリアムが2人の体を掴むとパワードスーツに備え付けられたブースターで勢いよく空に上がる。そして城の裏庭まで彼らを運んだのであった。


「あれは、大きいわね」


「やります? 姉さん?」


 一方でミカエルたちは巨獣の姿を見て、すぐに魔法の詠唱を行いながら、距離を使い魔を用いて調整する。


「これでもくらいなさい!鳳凰の焔 灼熱の羽、巻き込み爆ぜて散華せよ! 紅炎の妖鳥が灰塵に還す。大魔法33の号「紅鳳凰飛燕翔べにほうおうひえんしょう


「暁の日 陽炎の幻。焦がし燃ゆる天の火よ、一点に集い解き放たれろ! 大魔法18番「赤光天砲しゃっこうてんほう!」


 二人がそれぞれ放つ大魔法が巨獣に向かって一直線に、ミカエルの放った紅鳳凰は巨大な火の鳥となり巨獣を業火で包み込み、ルシエルの放った赤口天砲が獣の皮膚を激しく燃やし、黒く焦がした。その一撃は有効なようで、巨大魔獣は体を大きく動かし悶絶していた。


「おっ、2人ともやるやん。んじゃかっこよく決めたるか!」


ヴァンは巧みに間合いを詰めながら突撃しつつ周囲に存在する微生物に指示を出して、凝縮し手にそれぞれ長い刀身の双剣を作り出すと、キメラを数回素早く切り裂く。


「これで仕舞いだ、双剣菌舞!」


「グウオオオオオアアアア!」


「おっと、そんなもの効かへんでぇ。あーあ、いわんこっちゃない。爪、溶けていくぜ」


 城の広場にいるマルゴウスという3種混合のキメラは魔法に抵抗しながら、巨大な爪を伯爵に振るいまくる。その一撃は強風となり斬撃と衝撃を伯爵に与える。しかし彼の肉体に物理攻撃など効かず、逆に爪が微生物に侵食されボロボロになっていくのであった。彼に触れることは死を意味する。


 微生物を操る彼の体は、おびただしいほどの無害、有害な微生物が内包されており、触れた個所から腐り果ててしまうのである。もちろん外部の微生物も利用しており、そんなことを知らない敵はまんまと彼の術中にはまり自滅していくのである。


「ふはははは、効かぬ効かぬ。インド王、じゃなくて引導渡してやるよ。醸して喰らうぜ、死菌滅砲(サルモネラブレイザー)ーーーーー!」


 ヴァンはその場で重心を低くして構えると左腕に力をためて、体内にため込んでいる微生物を限界まで手元で収束すると一気に放射し、マルゴウスの巨大な胴体を貫通する特大の気体レーザーを発射した。


「グアアアアア! ア、アアア。ガゥ……」


「ああ、ついでにこれもや。醸せ、我が眷属よ。……日和見の反乱劇!」


 伯爵の怒涛の攻撃により、キメラは内部から微生物で食い尽くされ、力尽きそのまま動かなくなった。


 これは日和見菌と呼ばれる特定の状況下でのみ有害性を発揮する微生物に指示を出し、対象の内側から醸して分解する戦闘微術の奥義ともいえる戦技である。


「な、何て力なの? 彼は何者なの……次元が違う」


「巨獣相手に一方的とか、ハーネイト義兄さんと実力は変わらないわね。ヴァンオーヘインを倒しただけのことはある。味方でよかったね」


 その光景を見た魔女2人は絶句するも、すぐに周辺の警戒に戻る。


その頃ボルナレロとホミルドはというと、場内の侵入警報を聞くと事前にまとめていた資料を持ち出そうとしていた。その前にハーネイトに連絡を取り、ある程度タイミングは計っていたがそれでも、ハーネイトが来るのが遅いと少し不満そうであった。


「やっと来てくれたな。これで私も安心できる」


「そういう時こそ気を付けるのだぞボルナレロ」


 既にデータは電子媒体にも、紙媒体のも確保した。今後の新たな研究にも役に立ちそうなものも合わせ、その数は膨大であった。また2人の手で盗んだデータは敵が再利用不可能になるほどにデータを消去した。そして部屋を出て、城門に向かおうとする2人、そこに立ちはだかるように巨大な肥満体系の男が大廊下の中央に現れる。


「貴様ら、どこへいこうというのだね?」


「抵抗するなら撃つぞ」


「覚悟するんだな!」


 DGの上級幹部ボノスとDG兵数人がボルナレロとホミルドの進行ルート上に立ちはだかり銃口を向け、動くなと脅す。


「くっ、計られたか」


「悪いが、これ以上貴様らの計画に付き合う気はない」


「だったら、ここでくたばれ!」


 ボノフが手にしている巨大な銃をボルナレロ達に向けようとした時、何かが2人の背後から飛んですり抜けた。とその瞬間、突然凄まじい衝撃が走り、ボノフは大きく後方に吹き飛ばされた。


「バカでかい宇宙人だな。シュペルディンの威力とくと味わえ! さあ、2人ともこちらに早く」


 その声を聴いて、ボルナレロは奴が来たと確信した。そして慌てるDG兵に紅蓮の布爪が襲い掛かり荒れ狂うように、DG兵を薙ぎ払い切り裂く。そう、ハーネイトたちがボルナレロの所まで到着したのであった。


「博士!」


「おお、エフィリーネか。ルシフェルにアーディンも。よく来てくれた」


「まずはこのデカ物を倒すぞ!」


 アーディンは手にしていた仕込み杖でボノフの懐に入り込むと胴体を素早く数回切り裂き距離を取る。


「ぐはは、そんな軽い剣など効かぬ!」


 ボノフはこぶしに力を入れて、衝撃波を打ち込んできた。一撃でひねりつぶすかというほどの一撃。しかしすでにハーネイトはそれを予測し次のアクションを取っていた。


「弧月流・弧月斬閃!」


 ボノフの衝撃波に合わせ、ハーネイトは弧月流・弧月斬閃を放ち鋭い魔力の真空刃により攻撃を相殺してアーディンを助けつつ近くに置いてあった資材の陰に隠れ間合いを調整する。その一撃にボノフは不気味な笑みを浮かべた。


「そこのデカ物さん、あんたもこの星を滅茶苦茶にするつもりか?」


「そんなこと当たり前だろう。すべてを奪い自分たちのものにする。そして上級幹部だけがその恩恵をあずかるわけだ、フハハハ。霊界の連中など消し炭にしてやるわ」


「やはり、そうだと思ったぜ」


 ハーネイトとボノフのやりとりに介入する謎の声、すると突然天井から大柄の男がボノフの脳天を何かで突き刺した。


「ぐああああああ!」


「ふっ、頭ががら空きだぜ、デカ物がよ!」


 そしてその男は軽やかに地面に降りてきた。立派な体格の、さまざまな花柄であしらったロングコートを袖を通さずかけたやや色黒の色男。見方によってはかなり奇抜な着こなしだが、それでいて違和感がそれほどないようにまとまっていた。


「ボガーノード! 貴様、このわしに手を出してどうするつもりだ。この前の一件で降格した貴様がよ、おおお!」


「前々からてめえは気に食わなかったんだよ。執行官であった俺にビビっていたくせに、落ちた後は舐め切ってよ! 戦争屋の野望を止めるために俺は徴収官を討つ!」


「ええ、と。どういうことだ。仲間割れか?」


「みたいね。今のうちに博士たちを!」


 ハーネイトは目の前で起きている状況にやや戸惑っていた。どうも敵同士で何かもめているようであることだけは確かであり、エフィリーネがルシフェルとアーディンに二人の博士の救出を命じる。


「ホミルド博士、こちらに!」


「ボルナレロさんも!」


「かたじけない」


「頼むぞ、君たち」


 それからホミルドとボルナレロは2人の魔法で一気にシャムロックたちのいるところまで移動した。今のところ作戦は順調に進んでいる。しかし何か嫌な予感がする、そうハーネイトたちは心の中で不安を感じ警戒を怠らないようにしていた。


「重要人物の確保はできたが、他はどうだろう。南雲たち、首尾よくいっているか?」


「マスター、捕らわれていた住民たちと獣人たちの解放が済みました。現在伯爵の支援の下城外に脱出誘導中です」


「よし、でかしたぞ。エフィリーネ、先に行って他に人がいないか確認してきて」


 ハーネイトは南雲に通信し、住民たちの救出がうまくいったことを把握する。


「ええ、先生」


 その間にエフィリーネが透明になる魔法を自身にかけてボノフとボガーノードの間をすり抜けて廊下の先に走っていった。


「しかし、これは妙なことになってきたな。エレクトリールが言っていた、派閥と何か関係があるのだろうか」


 ハーネイトは敵幹部同士のやり取りを見て少し調子を狂わされていた。ホテルで彼女が話した内容。それがもし事実ならば、それを利用したほうが都合がよい。そう考えた彼は、そのやり取りの一部始終をよく見ていたのであった。

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