4. 日常の一コマ(クラスメイトとオレ)
ハジメのクラス、2-Aには生徒会のメンバーがほぼ揃っている。先ずは成績学年1位の会長ミレイ、2位の会計ミア、3位の庶務ハジメ、副会長には5位のハルカが就いている。残りの書記には成績学年4位でハルカの親友であり幼馴染ヒロインの桐谷 結衣が就いているが2-C、主人公君達と同じクラスにいる。
何故、目立つ事が嫌いなハジメが学年3位にいるのか?それはミレイに
「ハジメ君、今度の中間テストで10位以内に入らなければ毎日、生徒会室で一緒に勉強しましょうか。」
と言われたからだ。一年の時は平均点のやや上、70点前後をウロウロしていたハジメだがテストは大体75%程度埋めたら寝ていた。つまり、ほぼ回答は正解だったと言う事。それでも不動の1位を除く2位から15位は点差にして15点以内。これではハジメも手が抜けず2位のミアと1点差の5教科総合495点で3位、数学と英語は満点のオマケ付きだ。
その結果、ハルカの放課後も一緒に居られるかもと言う淡い期待は打ち砕かれた。この頃を境にミアの興味は主人公君からハジメに移ってきているように思える。
教室に着いたハジメは朝から今日は疲れたと宿題を手早く終わらせて、コウヘイに2~3問解かせて早々にノートを渡して机に突っ伏して寝てしまう。
そのままSHR、1、2、3限目と過ぎていき現在は4限目の数学だ。その間ハジメに気付いた者は居ない。それなのに授業にはキチンと参加している事になっている辺りは完全空気キャラとは違うハジメなのだ。
寝ていると言っても熟睡している訳ではない。授業前には体勢を変える際にその教科を入れ替えたり、出席簿をつけている際に認識される程度の気配をさせている辺り芸が細かい。
たまに体をビクつかせているのは何処かの生徒会長がハジメを見てどうやって遊んでやろうか考えているのを感じ取って寒気が走ったからだろう。その姿にハルカは「夢見が悪いのかな?大丈夫かな?」と思っているのには気が付かないハジメであった。
ハルカが寝ているハジメの為に普段よりも丁寧にせっせとノートをつけているが予習は済んでいて、要点は聞き逃していないハジメは帰ってからノートにまとめるつもりなので無駄になるかもしれない。
その証拠に
「おい、黒木!この問題を解いてみろ!」
と数学の教師がハジメを当てる。この数学教師は前回の中間テストを作成したのだが、絶対に満点を取らせないように作ったのにミレイ、ミア、ハジメの三人に満点を取られてしまった事を逆恨みしているだ。しかし、ミレイ、ミアは理事長の孫娘なので手は出せないとハジメに嫌がらせをして来たようだ。しかし、授業中のハジメは気配が薄く見つけられなかった為、本日漸く名簿を見て当てたのだった。
ハジメが当てられた事でムクリと顔を上げ、黒板を一瞥する。机に突っ伏しいたせいで前髪が崩れて露わになった母親に似た若干鋭い眼が数学教師を見て嘆息してから黒板の方に向かう。そのときに数学教師はこんな奴居たかと思うが、まあそれは関係ないか。
カッカッカッと何の迷いもなくチョークが解を描いていく。途中で詰まる事もなく最後まで証明を終えたハジメはハンカチを取り出して手に付いたチョークの粉を拭い落とすと席に戻って行く。
「お、おい、黒木!」
数学教諭が声を掛けるが
「何ですか?問題は解きましたよ。説明を求めているのなら御自分で解説したら如何ですか?それにこれって定積分の問題ですよね?解いた自分が言うのもなんですが普通なら三年で習うものです。教科書を間違えているんじゃないですか?」
ハジメが言いたいだけ言って机に再び突っ伏す。
ーーーー
「はぁ、眠いからってついやってしまった。」
ハジメが授業後、溜息をつきながらトボトボと歩いていると