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3. 恐怖の女王様(生徒会長)と怯える幽霊庶務(オレ)

「ハァ、危ないところだった。」


 下駄箱で靴を履き替えるハジメ。ハルカには悪いと思ったが主人公御一行様の姿を視界に捉えたハジメはハルカの意識が此方から離れた瞬間にコウヘイに伝言を頼み一目散に学校へと退避したのであった。


 主人公御一行様と関わると碌な事が無いので面倒事の嫌いなハジメは出来るだけ避けているのだ。コウヘイやハルカ、ハルカの親友である主人公の幼馴染ヒロインやクーデレヒロイン等、一部とは良い関係なのも事実ある。


 しかし、その他のヒロインや主人公君とは関係は皆無であるし、主人公君の想い人である少女は天敵だ。あれはダメだ。どんなに気配を消しても見つけられて厄介事に巻き込まれる。去年も全力で逃げたのに最終的にはハルカやコウヘイを盾にされ結局は生徒会庶務を押し付けられたのであった。


 去年、一年生でありながら圧倒的な支持率で生徒会長に当選し、学校の頂点に君臨する一ノ(イチノセ) 美麗(ミレイ)は理事長の孫娘でもある。容姿端麗、頭脳明晰、文武両道、才色兼備の完璧超人なのだが、唯一の欠点が性格に難有りと言ったところだ。


 しかし、持ち前の演技力で上手く猫を被っている為、一部を除き、誰も気付いていない。その一部に入ってしまったせいで災難に巻き込まれるようになったハジメはどうしてこうなったと嘆いているであった。


「お早う御座いますハジメ君。」


 今、一番聞きたくなかった筈の凛とした美しい声で背中に挨拶されたハジメは振り向くなという本能を此処で振り向かなければより酷い目に遭うと理性で捩伏せながら振り向く。その動きはさながらサビついて動く度、ギギィーと音のするロボットのようであった。


「………おはようございます生徒会長。」


 少し間はあったが何とか顔を引きつらせる事もなく挨拶を返すハジメ。


「美麗で良いって何時も言ってるじゃないハジメ君。」


 そう言うミレイの後ろでは「誰だお前?俺のミレイに馴れ馴れしくしてんじゃねぇよ」と言った視線を向けてくる主人公君。その隣ではコウヘイが両手を顔の前で合わせて謝っている。


「はぁ、そう言う事は恋人にでも言ってあげてください。コーヘイ君と一緒だったのに随分お早い登校ですね。」


 やや主人公君の方に視線をやりながらと言ってもハジメの髪型はギャルゲーの主人公かよと思う感じで眼に前髪が掛かっている。なので実際には視線は分かりづらいが主人公君はなんとなく感じた様で「よく分かったモブだ。」と満足したようだ。しかも、他のヒロインにはその視線を感じさせる事無くだ。おまけに自分はミレイ達には気付いてませんでしたと言った意味まで含ませている。


「私に恋人なんて居ないわよ。」


 主人公君の心地良い気分をスッパリと叩き斬るミレイ。それに少しは気があるのでは期待していた主人公君が項垂(うなだ)れる。


「…ハジメ…早かったのは…アレ。」


 答えてくれたのはミレイの腕に抱きついている彼女を頭ひとつ分小型化して鋭さを取り払った感じの少女。ミレイの双子の妹である一ノ(イチノセ) 美愛(ミア)、ハジメの言うところのクーデレヒロインちゃんである。


 しかし、それも最近は怪しい感じだ。もしかしたら飽きたのかもしれない。彼女は飽きっぽいところもあるからなぁと思いながらミアの指差す方を見るとそこには白色と黒色の二台のラウンジシート付きの高級車が止まっている。それなりの人数だったのでミレイとミアそれぞれが専用の送迎車両を出したのだろう。しかし、それでも早い。一ノ瀬の使用人はバケモノかと思うハジメであった。


「教えて頂いてありがとうございます一ノ瀬会計。」


「…ハジメ…ミアだよ。…ミアって呼んで…」


「ごめんなさい一ノ瀬会計、俺は見知らぬ誰かに刺されたくないです。」


 普通のモブなら一発陥落の可愛い仕草付きのお願いにも全く動じず返すハジメの答えに頬を膨らませて不満を露わにするミア。


「刺されるなんて大袈裟ねハジメ君は。ね、美愛?」


「お二人の容姿と人気を考えればありえる事です。すみませんが用事を済ませなければならないので失礼します。」


「一体、どんな用なの?良かったら手伝うわよ。」


 軽くハジメで遊んでやろうという雰囲気を感じ取ったハジメは


「数学の宿題ですよ。学校に教科書を忘れてしまって後数問残っているんです。未提出で居残りになんてなったら面倒ですし。」


「げぇ、そんなのあったっけ?ハジメ、終わったら写させてくれ!」


「自分でやりなよコーヘイ君。教科書を見ながらやれば直ぐ終わるよ。」


「それは勉強の出来るヤツの言い分だ。今度なんか奢るから。なっ、頼むよ!」


「しょうがないなぁ。でも、ギリギリまでは自分でやるんだよ。ちゃんと教えてあげるからさ。」


 コウヘイが絡んできたのを上手く利用してフェードアウトするハジメであった。

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