カップルの日常〜宅飲み編〜
「今日はお酒飲まないの?」
「ん?飲みたいの?」
「うん、飲みたい」
と、満面の笑みで返答された。
夜も更けてきて、まあまあいい時間だ。
晩酌タイムといこうか。
「わかった。買ってくるよ。何が欲しい?」
「んー、柚子のお酒がいいなー」
「いつものね。氷は作ってあるっけ?」
「あるよー。あ、後氷結。」
2人ともお酒は強くないので、基本的には数本のお酒で事足りる。
彼女の注文にビールを追加したのが今日のメニューだ。
「おつまみは何がいい?」
「んー、スルメソーメン、かにかま、ラーメン丸は欲しいかな」
「おっけー」
おつまみもいつも通りの注文だ。
ちなみにかにかまとラーメン丸は俺の影響で好きになったようだ。
実は、俺も彼女の影響でスルメソーメンが好物になっている。
「行ってきます」
「はーい」
と言っても家のそばにコンビニがあるので、そこで買うだけである。
こういう買い物は俺が行っている。
家事とかしてもらっているから、こういうことは俺がすることだと思っている。
「いらっしゃいませー」
言われたものも買ったし、そろそろ戻るかな。
「あっ」
アイスを見つけた。
彼女の好きなのでも買うか。
「ただいまー」
「おかえりー」
と、彼女が部屋の奥から顔をのぞかせる。
ふと、こういう結婚生活もいいなー。
家に帰ったら妻がいて、おかえりと返してくれるなんて幸せだろうなー。
なんて思う。
そんな資金力は現状ではないが、いつかくるであろう未来のためにあまり浪費はしていない。
なお、今日の出費は、必要経費です。脳内では領収書を切っています。
今の楽しい時間のための出費なら、未来の妻も許してくれるでしょう。
ビニール袋をテーブルに置き、買ったものをテーブルに並べていく。
「あ、だし巻き卵じゃん。買ってくると思ったー」
「アイス!お風呂出たら食べよ!冷凍庫に入れてくるね」
「やっぱりかにかま2袋買ってきたんだねー」
と、俺の戦利品に対する感想を言っている。
毎回嬉しそうに言うから、たくさん買ってきちゃうんだよね。
だいたいいくつか残ってしまって、次の日に食べることが多い。
それでも無駄遣いだと思わない我が社の経理部は優しい。
過剰な出費などとは言われない。
顧客のための必要経費なのです。
俺の一杯目はビール。
彼女の一杯目は柚子酒。
特に乾杯の音頭も取らず、飲み始める。
ビールの一口目は本当に美味しい。
このために生きていると言っても過言ではないだろう。
いや、過言か。
と、おいしそうにお酒を飲む彼女を見る。
「酒弱いんだから、一気にたくさん飲むなよー」
「だっておいしいだもんー」
若干表情がふわふわしている彼女が答える。
俺もあまり強い方じゃないが、彼女は俺よりもアルコールに弱い。
アルコールパッチで赤くなるほどだ。
だから、一緒に飲むと自分が酔うことよりも彼女のことを心配してしまう。
一緒に飲んで俺がしっかり酔ったことないかもな。
彼女の飲むペースをセーブさせつつ、飲み続ける。
つまみも少しづつ無くなっていく。
そして彼女はげっ歯類みたいに、かにかまを食べている。
ハムハムして少しづつ。
なにこれめっちゃかわいい!
飼いたい!
なんて見ていると、俺のかにかまの袋から一本盗んだ。
「おい」
「…」ハムハム
「おい」
「…」スッ、ハムハム
「堂々と2本目盗むんじゃねぇ!」
「な、なんのことー」
こいつ、とぼけてやがる。
自分のかにかま残っているくせに。
隣の芝生は青く見えるってやつか?
実は、構って欲しくてやってるのを知っているけどね。
俺はやり返しを試みる。
しかし、こいつは取られないように身体でガードしてやがる。
さっきのは訂正だ!
こいつ、食い意地がすごいだけじゃねぇか!
結局、かにかまを返してもらえずにお酒とつまみが無くなった。
すると、彼女は床で寝始める。
「ベッドで寝なよー」
「うーん」
何度言っても、一向にベッドに上がろうとしない。
「んー、よいしょ」
仕方ないので、お姫様抱っこをしてベッドに上げた。
自分の筋力と彼女の体重に感謝だな。
そして俺も眠り、宅飲みが終了するのでした。
後日聞いた話だが、どうやらお姫様抱っこを気に入ったらしい。
酔ったときじゃないと恥ずかしくてねだれないとかなんとか。
そんなのいつでもしてあげるのにね。
我が社の企業理念は、彼女の喜ぶ姿を見ること。
給料は彼女の笑顔。
そんな企業があったらいいな。
酔っていつもと違う姿を見て、キュンとする時ってあると思います。