恋する君は極めて上等
ちょうど部費要求の再提出日だったこと。
ちょうど部費係になっていたこと。
ちょうどその時間に生徒会室へ行ってしまったこと。
ちょうど控え目なノックをしてしまったこと。
ちょうど返事も待たず勢いよくドアを開けてしまったこと。
それらが全部重なった偶然の結果だと、三宅茜は思った。
放課後、生徒会室のドアを開けた瞬間に目に入ってきた光景は、物腰柔らかで親しみやすいと評判の会計である生徒会役員が1つの机に頬ずりをしているものだった。恍惚とした表情をあらわにして、愛くるしい小動物をめでるかのように、スリスリと。
「……」
人間、非常に驚いたときは声が出ないものである。
「……あっ」
「……ひっ」
茜に気づいた会計、見広武人が短く声を上げて、やっと茜も我に返った。
「ひいいいいいいい!」
バシンといい響きでドアが閉まる。茜の背後で。
残念ながら、茜よりも見広のほうが早く行動に出て、まんまと茜は生徒会室に閉じ込められてしまった。
「いいいい!」
「シー」
のどの奥から出る悲鳴は、見広の手のひらでふさがれる。
やめろ、何する変態!
そう叫びたかったが、予想外に近い見広の顔に気づき、ぐっと飲み込んだ。
目力が半端ない。
少し癖のある前髪の奥にある瞳の力に押される形で、茜はうなり声も発せなくなった。
「こんにちは。図書部の三宅さん?」
「……はい」
「見た?」
沈黙は金だが、この場合は雄弁は銀を選ぶのが良らしい。
「見ていません。何も見ていません。変態が机で、見ていません!」
「見たね」
「……はいぃぃ」
両手を押さえられ、壁ドン状態だ。ミーハーな女子だったら気絶するほど喜びそうなシチュエーションだが、茜は真逆の意味で気絶しそうだった。
変態こと見広武人がスリスリしていた机は、副会長のもの。
「彼女に言う?」
「まさかっ!」
艶やかな長い黒髪をなびかせる副会長の姿を思い浮かべる。彼女、板垣皐月は、清廉な人物として名高い。男子はもとより、女子からの好感度も、この高校ではずば抜けてよい。生徒会仲間がこんな変態じみたことを自分の机に対して行っていたと知ったら、それこそ気を失ってしまうのではないだろうか。悪くて、こっちがうそつき呼ばわりされる。
言えるわけがない。
ふるふると細かく頭を横に振る茜に抵抗の意思がないと認めたのか、見広はにっこりと笑いながら体を遠ざけていった。
「改めて。こんにちは、三宅さん」
「……その手は」
「部費の要求書、持ってきたんでしょう」
そうだった。思い切り握ったためしわの寄った紙を見広に渡す。
そもそもこれがいけないのだ。最初に提出した要求が認められずの再提出、この日このタイミングに。
じとっと要求書をにらむ。
「そんな親のかたきみたいに見なくても。ミケちゃん」
「……は?」
「ミケちゃん」
変態のおきれいな指が、茜の鼻先をちょんとつついた。
「ひぎゃあああああああ」
今度こそ悲鳴を上げて、茜は、敵前逃亡を図った。
勧学院高等学校は、学力はもちろん学費も全国トップレベルである。
そこへ通うのは資産家の子女か、特待生、奨励生となる頭のよいお子様方。入学試験の筆記はもとより、面接はひときわ厳しい。募集要項には最低限のマナーを求めるとしているが、その最低限は「上流階級」の「最低限」であって、一般の最低限ではないと生徒たちが知るのは、入学後のことだ。
笑顔を絶やさず、嫉妬や妬みとは無縁、登校時も下校時も交わす挨拶は「ごきげんよう」。公共の場での大声や高笑いはもちろん、授業中の私語は厳禁。風紀は乱すことなかれ。
その中で、茜は少し毛色が違っていた。しょせん成り金中小企業取締役の父親を持つ娘である。たとえ親の会社が大企業とひけをとらないほどの技術力を持ち、祖父が政治家でありいろいろなところに顔がきこうとも、成り金娘は成り金娘。生まれつき高貴なお方とはやはり違うと感じるところも多い。
片や見広武人は、一部株式上場の大企業の息子。礼儀作法も完璧であり、頭のよさも特待生に負けてはていない。ふわふわのくせ毛は、光を通すと少し茶色くなる。顔のパーツ1つ1つはそこそこきれいで、笑顔が極上。生徒会に選ばれる人間であるから、もちろん性格も教師のお墨つき。
だが、そんな彼は、隠れ変態だった。
「どうして変態がここにいる」
「一緒に勉強しようね、ミケちゃん」
「ひっ……!」
気安く触れられた肩から悪寒が走る。
衝撃的な遭遇の翌日から、見広の猛撃が開始された。
この変態、私が告げ口しないか監視するつもりだ! と、茜は震え上がった。
図書部部員である茜は、放課後は大抵図書館にやってくる。そこで本を読むこともあれば勉強することもある。図書部員は、週二、三日図書室に通えばよいとなっていたからだ。もちろん、本は大好きだ。
まずはそこへ見広がやってきた。そして、なぜか茜の向かいか隣に座る。
私のパーソナルスペースに土足で入り込むな、と茜はにらみつけた。
さらに監視範囲は広がり、昼休みに強引に食堂へ連れていかれるようになった。
私は気楽に自席で弁当を食べたいんだよ、と茜は頭を抱えた。
そして恐ろしいことに、暇を見ては茜の教室へやってくることになった。
「どれだけ暇なんだ……」
「だって、ねえ」
机に突っ伏す茜の頭頂部をつつきながら、見広はにこにこ笑う。
「僕が見ていなきゃ、ねえ」
「だから、言わないってば」
「口ではいくらでも言えるよねえ、ミケちゃん」
「副会長の机にスリスリして匂いをかいで性的欲求を満たそうとする男がここにいるとは誰にも言わない」
「それじゃあまるで僕が変態みたい」
「変態でしょうがっ」
ひそめていた声を荒らげる。近くにクラスメイトはいなかったものの、少し遠くにいた女子がびっくりして茜たちを見てきた。
「あら、ごめんなさい。何でもないの」
口の端を引きつらせながらも笑みを浮かべて誤ると、彼女たちも微笑みを返して何事もなかったかのようにもとに戻った。さすが、育ちが違う。
「だめだよ、ミケちゃん。淑女たるもの、大声で話すべからず」
「あ、あ、あ、あ──」
あんたのせいでしょうが!
見広の触り心地よい頬を思いっきりつまむ。
「い、いひゃい」
「このまま頬を赤くはらして副会長のところに行けば、抱きしめてなぐさめてくれるんじゃないの?」
「えー」
若干赤みを増した部分をなでながら、見広は首を傾けた。
「そんなのじゃ、皐月さんは抱きしめてくれないよ」
「ヘーソウデスカ」
心底どうでもいいと窓の外を眺めた次の瞬間。
茜はなぜか見広の腕の中にいた。
「!?」
「だから、ミケちゃん、よろしくね」
声にならない声が上がった。超音波を発したかもしれない。外でクワーと鳥が鳴いた。
だからとは何だ、よろしくとはどういうことだ。
茜の疑問を正確に読み取った見広は、
「これからはミケちゃんに慰めてもらおうっと」
そう不穏な言葉をつぶやくと、すぐに離れていった。茜がこぶしを繰り出そうとしたのを敏感に察知したのだろう。
「この、この……、あんた、やっぱり……」
ド変態だ!
怒りか羞恥か、顔を茹でダコのように真っ赤にした茜は、再び敵前逃亡を図った。
茜も大概、温室育ちのお嬢様であった。
変態は、随分と厚顔な変態だった。
何もなかったかのように、次の日も茜に話しかけてきた。
「ごきげんよう、ミケちゃん」
「……ごきげんよう」
あまりの普通な態度に、茜も毒気を抜かれて挨拶を返す。そんな軽く言われると、あんなに一晩中悶絶していた自分が情けなく思えてくるではないか。
そうだった、この人は、板垣先輩のことが好きだったんだ。
まだまだ「上流階級」のお子様の行動が読み切れない。
欧米化しているこの時代、ハグなんて彼らは日常茶飯事なのかもしれないと、茜は腕を組んでうなった。
さらに、暴挙に出たのは変態である。
あれは挨拶の一種、そうに違いない。
ちなみに、「見広君は先輩が脱いで椅子にかけたジャケットとかクンクンしてそうだよね」と皮肉を込めて言ったら、事もなげに「よくわかったね」と返ってきたので、やはり変態は変態であったと確信を強くした。
好きな相手の代用品を探して、ハグして、においをかいで、それで欲求を満たす。そんなところだろう。
それはそれで私も彼も虚しいじゃないかと、茜は肩を落としてため息をついた。
2年生の茜、見広と、3年生の板垣皐月が校内で出会う機会はあまりない。教室棟から特別棟に移動するときや、時間の長い昼休み、清掃の時間、放課後に見かけることが多い。
「……おっ」
機会はあまりないが、皆無ではない。
背筋を伸ばし、淑女の手本のようにきれいな歩き方をする板垣はひときわ目立つ。
それに変態の思い人という情報も加わって、茜の脳が彼女の姿を捉える回数が格段に増えた。
そして、必然的にか、板垣と一緒にいる見広を見るのも多くなった。
「あら。板垣先輩ね」
一緒に音楽室移動していたクラスメイトも2人に気づいて頬を赤らめる。
「すてきなたたずまい……」
茜は、板垣の隣にいる見広を見た。
教室棟と特別棟をつなぐ廊下の隅にいるのだから、どちらも移動中で偶然会ったのだろう。見広の腕には画集のような厚い本が、板垣の手には茜が持つ教科書と色違いのものがあった。
見広は板垣に微笑み、板垣もまた静かな笑みを返している。話し声はもちろん抑えているのでわからないが、楽しい話題に違いない。
ふうんと思う。
随分うまく中身が変態だと隠しているものだ。
「見広君と並んでも絵になるわね、三宅さん」
「えっ。そ、そうねえ」
いきなり振られて若干声が裏返ったが、心優しきクラスメイトは、そんなことは気にしない。
「お似合いだわ。あれでお2人がつき合っていないなんて信じられないわ」
うっとりとするクラスメイトの隣で、茜は複雑な心境だった。
あれで変態だなんて信じられないわ。
まあ、好きな人のにおいをかいだり、物に頬ずりしたくなる衝動もわからなくもない。かもしれない。多分。……恐らく。
それだけ好きで好きでたまらないのだろう、異性としての欲求を抑えられないぐらいに。
茜の視線の先には、柔和な笑顔の見広がいる。茜に絡んでいるときの、チェシャ猫のように笑う彼とは違う。何ともまあ、平和そうで。
見ているこっちもほっとする表情だと、茜は悔しいながらも認めた。
……少し応援する気になってきた。
茜は非常にほだされやすい性格をしていた。
そして、なぜか。
「あら、三宅さん。ごきげんよう」
「──ごきげんよう、先輩」
「次の時間は体育なのね」
「ええと、はい」
「バレーボールですってね」
茜の前には、ついこの前まで言葉を交わすこともなかった相手、板垣皐月がいる。
衝撃的な遭遇の数日後、見広に絡まれるようになって後、部費要求の指導係として板垣は茜とかかわるようになり、何が琴線に触れたのか、こうして茜の姿を認めるたびに声をかけてくるようになった。
女神のようなほほえみを惜しげもなく茜に向ける。
「三宅さん、ボレーは顔でするものではなくてよ。頑張って腕に当てましょうね」
「……」
ひくりと口の端が引きつる。
2日前の体育の授業で、ボレーを顔面に受けてしまい鼻血を出したのだ。それを知られているとは。
「それ、もしかしなくとも、見広君が言いふらしたんですね」
彼女はさらに笑みを深めて肯定の意をあらわした。
「あん……」
あんにゃろう! と言いかけて口を閉じる。
「まあまあ、三宅さん。怖いお顔」
ころころと笑われたが、そこに嫌味らしいものは含まれていない。純粋で無垢な女神様だ。
もったいない。変態にはもったいない! 見広のような、一見無害そうで実は有害なる変態の毒牙にかかる乙女の姿など、想像もしたくない。
突然、何とはなしに、疑問が思い浮かんできて自然に言葉がこぼれた。
「先輩。もし、もしもですよ。もしも、仮に、見広君が板垣先輩のことを好きだと告白したら、先輩は受け入れますか」
「ぷっ」
「先輩?」
茜の言葉に、板垣は思わず吹き出し、そのまま肩を震わせたまま下を向いて笑い出した。
控え目な、鈴を転がしたような笑い声が体育館入り口の広場に響きわたる。
「そんなこと、もし仮に言われたら、こう返しましょうか。寝言は寝ているときに言いなさい、起きたなら顔を洗ってらっしゃい、と」
明らかな拒絶に、茜は驚愕した。 驚きのあまり、手から力が抜けて持っていた体育館履き入れが床に落ちた。
てっきり受け入れると思っていた。
「あら。驚いたの?」
「は、はい、……はい!」
おかしな子ねと板垣の純真な瞳が語る。
いやだって。あんなに周りがお似合いだお似合いだと頬を染め。2人で談笑する姿もよく見かけるし。
それより何より。
ぽっと見広の顔が思い浮かんだ。
とても、とても、傷つく。
温和な人当たりのよい坊ちゃんが変貌するほど好きなのに。
何と報われない片思い。
涙ちょちょ切れそう。
板垣の不承を思い出し、茜はとっさに手を伸ばした。
図書館内でも、書架の陰にあって周りからよく見えない閲覧席の端で、今日もまた茜は見広にハグをされていた。もはや慣れとあきらめで、拒絶はとうにやめた。欧米流の挨拶、欧米のハグ、こうするしかない寂しい男。そう思って、見広に請われるままにしている。
かわりを欲しがるほど板垣先輩のことが好きなのに、報われない。
茜がぽんぽんとなぐさめを込めて見広の背中をたたく。
「……ミケちゃん?」
いつもは受け身のみの茜がそんな態度に出たことに、見広は軽く驚いたようだった。
それもそうだ。初めての反応だもの。
「いや、うん。……頑張れ、変態」
「あのねえ、だから、僕は変態じゃなくて」
「いいのいいの」
皆まで言うな、わかっている。
不本意な表情を向ける見広に構わず、茜は彼の背中をトントンし続けた。
できれば、この人が傷つきませんようにと茜は思った。
だがしかし、そうは問屋が卸さない。
「三宅さん、私、見てしまったわ」
若干ミーハーなクラスメイトが、教室に入ってくるなり茜に報告してきた。
「板垣先輩と見広さんが、第2中庭のほうに行ったのよ」
もちろんお嬢様は下足箱から2階の教室まで走ってくるような痴態は見せない。だから、この赤く染まった頬は、彼女の興奮をあらわしているのだろう。
「第2に?」
「そう、第2、よ」
ああ、どうしましょうと胸で両手を組むクラスメイトを横目に、茜はとっさに走り出した。
いけない。第2中庭はだめだ!
すれ違う人々の驚愕など目にとめず、茜は淑女をかなぐり捨てて階段を降り、上履きのまま外へ駆け出した。
第2中庭は、別名告白の庭と言われている。狭いがほどよい日差しが差し込み、白いベンチが1つある場所。そこは異性に告白するのにとっておきの場所として生徒の間で聖地化されていた。
そこへ2人並んで行くということは、そういうことだ。
見広は、板垣に告白する気だ。
早まるな! まだそのタイミングではない!
いくら私でも、ほだされた相手の傷つく姿は見たくないしなぐさめたくない!
届けテレパシー!
茜は混乱した思考のまま、告白の庭へ足を踏み入れた。
「ま、待ったあ!」
やはりそこには、渦中の2人がいた。
「早まってはいけない、へんた……」
「あれ、ミケちゃん?」
間の抜けたという言葉が似合うほどの口調で見広に呼ばれ、茜はぴたっと口を閉じた。
あっぶねー! 思わず剣呑な単語を口にするところだったーー!
どっと冷や汗をかく。
そして冷静さが戻ってきた。
「……ん?」
これはどういうことだろうと茜は首をかしげる。
お似合いの2人は、ベンチに腰かけていなかった。手をかけていた。見広の右手がベンチの中ほどに触れていて、板垣はそれを見下ろしている格好で。
「あ、あれ?」
よくよくベンチを見ると、見広の人指し指の場所から亀裂が走っていた。
これは……、ベンチに入った傷を、板垣に説明している場面だ。
瞬間、カッと茜の顔が熱を持つ。
勘違いだった!
「三宅さん?」
不審げに声をかけてくる板垣の顔も、早合点に気づいて小さく吹き出した見広の姿も、今は正面からまともに見られない。
うつむいたまま、茜は慎重に後ずさる。このままゆっくりフェードアウトをと企む彼女の肩を、見広が優しく包み込んだ。
「ミケちゃん、かわいい」
「いっ……」
いやあああああ!
「こんな、こんな、板垣先輩の前でこんなことをしちゃだめ──!」
体をよじり、見広の腕から飛び出すと、そのまま茜は、3度目の敵前逃亡を図ったのだった。
「三宅さん、もしかして、いろいろと勘違いしているのかしら」
「ミケちゃん、かわいい」
「……武人……」
だらしのない表情で茜が去った方向を向く見広に、末期ねとつぶやく板垣の姿は、誰も見ることがなかった。
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生徒会室で、会長があきれていた。隣には、随分と生意気に育った幼なじみがいる。見広武人だ。
「おまえさあ……、皐月さんから聞いたんだけどさあ……」
「うん?」
「わざと三宅さんに痴態を見せたろ」
「うん──ちょっと、制服脱がすとか変態じゃない」
「おまえと一緒にされると非常に心外だ! この変態が! 違う、おまえの腹はさぞかし真っ黒なんだろうなと思っただけだ!」
純情を絵に描いたような会長は、真っ赤になって憤慨した。
「僕、普通に肌色だけど、そんなに見たいの」
「わ、だからって脱ぐな! おまえには冗談も通じないのか!」
「冗談も通じないのはどっちだよ」
「……タケ、おまえのは冗談にしては黒い。ブラックホールのように黒くて歪んでいる」
とうとう会長は頭を抱えた。
「自分に意識を向けてほしいからって、変態じみたことをして、じりじり包囲していくとか、だめだろ。高校生として」
びしりと指摘されても、当の本人はにこにこしたままだ。
「三宅さん、かわいそうじゃないか。タケは皐月さんのことが好きで好きでたまらないと思っているんだろ」
「会長、そこは訂正させてもらうよ」
「え、おまえ、皐月さんのことがっ」
「そこじゃない」
「じゃあどこだ」
「僕は、一言も、皐月さんに好意を持っているとは口にしていないよ」
会長のあごが落ちた。
「勝手に勘違いしているのはミケちゃんのほうだもん」
「もんって……お、おまえ……この、腹黒!」
「あ、やめてやめて、僕の裸は有料だよ」
「金なんぞ幾らでも払ってやる! おまえの暗黒面を白く塗りつぶしてやるからな!」
キャイギャイ絡み合う会長と会計の向かいで、副会長は、生ぬるく冷めた視線を2人に向けていた。あわれな小羊である後輩を、今度、お茶に誘ってみようと思いながら。
ありがとうごさいました。




