59話 暗殺ギルドハーメルン支部拠点制圧作戦12 2人の女神
さてマグスを倒したのはいい、死神の血も翠と緋はマグスの持ち物の中にあるだろう。
だが蒼の焔はどうなるんだろうか、倒した奴が能力を奪う的な話だったが事はそうではないのか?
マグスの持ち物を漁っているとロータスに肩を叩かれる。
「ベル君、前……」
何かに驚いているような声で言うロータス、まさかマグスがあの状態から生き返ったとか?
流石にそれはないだろう、なんて考えながら顔を上げる。
「なっ……!」
燃え盛る蒼色の焔が目に映る。
その焔の中に人影が見て取れる。
マグスではない、というか実体がない。
髪の長い女、何者かなんてどうでもよくなるほどの美女。
女が焔の中を一歩こちらに近づきその手を伸ばす。
その瞬間風が吹き荒れる。
突然の強風に思わず閉じた目を開くと焔の女と僕を遮るように鎌を持った女が立っていた。
鎌?いや槍か?大剣のようにも見える大型の武器。
相当の重さであろうその武器を悠然と片手で構える女。
訳が分からないが武器を持った女は敵ではないと思う。
「何のつもり?ブリュンヒルデ」
焔の女が苛立った様子で口を開く、ブリュンヒルデ……それが武器を持った女の名前なのだろう。
それに対してブリュンヒルデは感情を感じさせない冷淡な声で返す。
「それはこちらの言葉だエイル、私の主に手を出さないでもらおうか」
ブリュンヒルデにエイルと言えば北欧神話におけるヴァルキリーの名前だったか?
そんな事を考えている間にも二人の会話は続く。
「ただ傷を癒すだけよ、何か問題があるかしら?」
「敵意を隠しもせずによくそんなことが言える」
「そりゃあ直前まで主だった人を殺されたのよ?敵意の一つや二つ向けて当然でしょう?それに私がどう思っていたとしてもどうでもいいことだわ、契約には逆らえないのだから」
エイルの言葉を聞いて武器を降ろすブリュンヒルデ
「ならば早々に役目を果たせ」
一言言い残すとブリュンヒルデは現れたときと同じように風とともに姿を消した。
全く状況が掴めないのだが取り敢えず問題は解決したということかな?
「あなたが止めたんでしょうが」
エイルは消えたブリュンヒルデに向かって文句を言いながらこちらに一歩近づき手をこちらに掲げる。
「では契約に従い貴方に私の力を授けます」
エイルがそう告げると僕の体に向かってエイルの纏っている蒼い炎が僕の体を覆う。
熱くはない、ダメージもない。
HPバーを確認すると残り2割程度だった体力が一気に最大値まで回復していた。
エイルは僕の体から炎が消えたのをみて一つ頷くと口を開く。
「条件達成を確認、神の祝福を実行します」
「さあ我が主よ選びなさい」
エイルがそういうと小さなウィンドウが1つポップする。
・世界への祝福を選択してください
知識の祝福|(全ての種族が新たな知識を得ることにより世界の近代化が進みます)
精神の祝福|(全ての種族の精神が強化され種族毎に新たな魔法や特殊技能を獲得)
なんかすごい重要な選択肢じゃないのかこれ……。
でも選ばない事には話が進まない。
知識の祝福は近代化……武器や装備に影響が出そうだな。
精神の祝福は魔法と特殊技能か、どちらも捨てがたい。
このゲームには魔法がない、それを売りにしてたからファンタジー系の攻撃魔法みたいなのは追加されないだろう。
それに種族毎に違う能力が手に入るのなら吸血鬼が良い能力を貰えるとは限らない。
ということで知識の祝福を選ぶことにした。




