45話 オートマトンとアンティーク人形
遅くなってすいません。
年末年始ってなんでこんなに忙しいんですかねぇ、あ、仕事の話ですよ?別に年末に大量のゲームが発売されるからとかそういう話じゃないですよ?ほんとですよ?
シグの部屋へと通されソファーに座るように促される。
先ほどの事もあってロータスと僕は緊張しているのだがそんなことはお構いなしにシグは話を始める。
「さっきはそこの馬鹿が失礼したね、怪我はなかった……というより治ったようで何より、それにしても吸血鬼の体って便利なもんだね、壊れた籠手の代わりはこちらで用意するよ何か要望はあるかい?」
籠手か、特に理由があって選んだわけでもないから特に要望はないかな、強いて言うなら似たような物の方がありがたいか。
「いえ、似たようなものなら何でも」
「そうか、ならさっそく本題に入ろう、プロシャンの支部の方で奪還作戦の準備は殆ど整ってる後は君たちが合流すれば作戦開始になる、だが列車での移動では少し時間がかかりすぎるからこっちで用意しておいた」
そう言うとシグはとてとてと部屋の出口まで歩いてこちらに手招きする。
シグに案内されるまま同じ階の別の部屋へ。
シグがその小さな体で器用にドアを開ける。
「なっ……」
部屋の中を見て絶句する。
部屋の外側の壁が無かった、というか明らかに破壊されて解放感あふれる感じになっていた。
そして部屋の中には部屋にぎりぎり収まるサイズの飛行機の羽の様な物が置かれていた。
「いやー、急なことだったから場所を用意する時間が無くてね、面倒だから壁ぶち抜いた」
笑いながら言うシグ、壁も確かに驚きだけどそっちじゃない。
「それでこれが移動手段だ、ってそういえばまだ紹介してなかったか、さっき君らに襲い掛かったそこの馬鹿はミスティだ」
飛行機の羽の様なものを指さして言いながら思い出したようにメイド服の女性ことミスティの紹介をする。
無言で着いてきていたミスティ前に出てきてがシグに馬鹿と言われて眉をひくつかせながら自己紹介する。
「先ほどは失礼いたしました、私はミスティ、ヤタガラス拠点防衛部隊指令をしております、見てわかるかもしれませんが蒸気機関型のオートマトンです、今回そこのマシナリー使用のために同行します」
言いながらミスティは飛行機の羽の様なものを指さす。
オートマトンとは機械型の異形種の種族で筋力や体力各種耐性が高く近接戦闘向きのステータスの種族だ、
吸血鬼と同じように武器補正が全くかからないがマシナリーと呼ばれる様々な特性を持った装備が使える。
プレイヤーキャラクターの場合作成時にランダムに蒸気機関型、内燃機関型、特殊機関型から選ばれ、特殊機関型には電気機関型や核融合機関型等の種類がある。
機関により特性やステータスの補正、初期装備であり変更することが出来ない内蔵型マシナリーが異なる。
なるほどオートマトンか、これで先ほど襲われた際の蒸気や素手で籠手ごと腕を砕かれた原因が分かった。
「それじゃあ自己紹介も終わったことだし早速出発だな、あ言い忘れてたけど私も同行するからよろしく、あとこれ代わりの籠手ね」
そう言ってどこからともなく籠手を取り出して僕に渡した後そのまま僕によじ登ってコートのフードの中へとすっぽり入り込むシグ。
「え?」
シグを見て声を上げるミスティ
「ん?」
それに対して不思議そうな声を上げるシグ
「え?」
「え?」
よくわからず戸惑う僕とロータス
「ご主人様!!だめですよ、ギルドマスターのあなたがここを離れるなんて!!」
僕のコートのフードからシグを引きずり出そうとするミスティ。
「嫌だ!!私も行く!!防衛部隊の指令のお前が行くのに私だけ留守番なんてずるい!!」
必死にフードの中で駄々をこねるシグ。
出発前から先行きがすごく不安だ……。




