40話 騎乗戦
現在街を出てから15分程度経っただろうか、内通者が居るのであれば街を出てすぐにでも攻撃があると思っていたのだが考えすぎだったようだ。
隣のロータスとアリスは先ほどから拳銃の手入れをしながら楽しそうに話している。
手に持っているのが銃でなければなかなかの光景だと思うのだが何も言うまい。
さて自分も何かしようかと考えていると
「敵襲!!」
御者台から敵を知らせる声と同時に銃声が響く。
慌てて馬車の屋根に飛び出て周囲を確認するとまだ少し距離があるが後ろから武装した集団が馬で追いかけてきているのが見えた。
それだけではなく前方にも似たような集団、ここは両側が崖に挟まれているため完全に逃げ場を絶たれた状態だ。
「ベル!!」
馬に乗ったウェルターさんが馬車の横を並走しながら声をかけてくる。
「先に後ろの奴らから片付けるぞ!!後ろに乗れ!!」
馬の数が限られているのでもともと緊急時には二人ずつ騎乗する事になっていたのだがよくよく考えると僕は馬に乗ったことなんてないしスキル等の補正もない、乱戦になれば間違いなく落馬すると思うのだが絶影があるし何とかなるだろう、たぶん。
落馬の恐怖に耐えながらウェルターさんの後ろにまたがり後方の武装集団の元へと向かう。
騎乗戦でナイフは明らかに不利なのでレイピアを選んだが相手の武器によっては一撃で折られる可能性もあるので注意しなければ。
「おぉおおおお!!」
前方から敵が雄たけびを上げながら剣を掲げて突進してくる。
騎乗している戦力はこちが圧倒的に少ないため相手はこちらの馬を挟み込むように攻撃を仕掛けてくる。
相手の出方を確認したウェルターさんは手綱から左手を放すと腰からロングソードを抜き放つ、左側はウェルターさんが守ってくれるようなので右側に集中することにする。
目の前まで迫った敵がその手に持った剣を振り下ろしてくる
前もって自動迎撃を使用していたので相手が剣を振った瞬間に効果が発動して鋭敏化された知覚が体感時間をゆっくりとしたものに変える。
右手に持ったレイピアを相手の剣の側面に当て攻撃を逸らし、予め左手に持っていた投げナイフを至近距離から相手の顔に投げつける。
相手は驚愕に目を見開くが至近距離で投げられたナイフを避けることができずにその表情のまま眉間にナイフを生やして馬に振り落とされた。
絶影のおかげで馬がどれだけ激しく走っても割と安定しているのだが揺れだけはどうしようもないので自動迎撃の効果中でなければ投げナイフを命中させるのは結構難易度が高いかもしれない。
ウェルターさんも問題なく敵を倒したようでちらりと左側を見るとちょうど敵の首が跳ぶところだった。
「もう終わりか?」
ウェルターさんが周囲を確認しながら言う、周りを見てみると後方から襲ってきていた敵はすでに全滅しているようだ。
「意外とあっけなかったですね」
「だな、だがまだ前方の敵は残っている、油断するなよ」
そういうとウェルターさんは僕が頷いたのを確認してから馬を走らせ馬車の列へと戻る。
前方の敵との戦闘は先ほどの戦闘とは違い散発的な撃ち合いとなっているようだ。




