32話 復讐者、追われる
ちょっと早めの投稿
2階の窓から周囲を確認した直後コルヴォさんの追手が廃屋の中に侵入してきた。
仕掛けた罠が作動したのはよかったのだが、どうやら張り切って大量に仕掛けたのが良くなかったようだ。
動作した罠の爆発は周囲の罠の爆薬を誘爆させて1階部分が吹き飛んだ、気が付いた時には不思議なことに2階建ての廃屋が1階建てになっていた。
そして何とか廃屋から脱出して気付かれないように路地裏へと逃げ込むと……目の前にはコルヴォさんの追手が居た。
数秒ほど時が止まったかのような沈黙が流れる。
沈黙に耐えきれなくなり口を開く。
「あ、どうもこんにちは……」
どうだこの完璧な対応、やはりまずは挨拶だ、何事も挨拶が
「……居たぞ!!」
「ですよねー」
やっぱり駄目だった。
こうして数十人の銃撃から逃げつつ閉鎖された工場まで逃げて来たのだ。。
視界の端に映る体力ゲージは残り3割程、アンデットポーションを飲み体力の回復を図る。
ちらりと向こう側の様子を窺おうとした瞬間目の前で柱の一部がはじけ飛び思わず顔を引っ込める。
今のはタイミングが良すぎたが相手は別にこちらが顔を出す瞬間を狙って打ったわけではない、その証拠に今も僕が身を隠している鉄製の柱は何十発もの弾丸に撃たれてガタガタとその振動を僕の身に伝えている。
コルヴォさんと別れてから20分以上たっている、僕の役目は十分すぎるほどに果たしているので逃げてもいい、というか逃げたいのだが、逃げようにも逃げられない。
ため息を吐きながら天井を見上げてふと策を思いつく。
スキル【絶影】自分でもついさっきまで存在を軽く忘れかけていたスキルだ。
絶影は重力を無効化して壁や天井を歩くことができるようになり副次効果として跳躍や移動スピードにも僅かに補正がかかるスキルだ、そして前に洞窟の天井を飛び跳ねて遊んでいたときにわかったのだがこのスキルには自分の指定した足場か向きに落ちるという特性がある。
説明には重力の無効化とは書いているがイメージ的には重力の方向と強さを変化させるという感じだ。
つまり使い方によっては空中を移動したり跳躍中の方向転換も可能と言うことだ、最も自由に動き回るには高速での細かな調整操作が必要になるので難易度的にかなり難しいものだが。
この状況ならいけると判断して僕は天井に向かって落ちた。
工場の天井にトンっと音を立てて降り立つ。
同時に自動迎撃を使用しておく。
一瞬天井に蝙蝠のように立つ僕を見た追手たちがポカーンと口を開けて銃撃の手を止める。
「馬鹿野郎!!さっさと殺せ!!」
僕が高窓に向かって天井を走り出すと最初に立ち直ったリーダー格と思われる者が周囲の者に叫びながら銃撃を再開した。
その射撃で自動迎撃の効果が発動する。
加速した思考で直ぐに進行方向とは逆の壁に落ちるように絶影の効果を操作する。
弾丸は僕が直前までいた場所を通って天井に穴を穿つ、遅れて射撃を再開した者たちの弾丸も絶影で落ちる方向を細かく調節しつつ避けていく。
自動迎撃の効果中だからこそ出来ることだ効果が途切れればその時点でハチの巣にされるだろう。
自動迎撃を切らさないように効果終了と同時にノータイムで発動し続ける。
そしてちょこまかと弾丸を避けながら一度高窓に着地しようとした瞬間
パリンッ
そのまま窓を突き破って工場の外へと飛び出す僕、そして絶影の効果は足場がなくてもその方向に向かって落ちる。
こうして僕は追手を振り切ることに成功したのだった……。
ベル君flyaway!!
……どこまで飛んで行くのでしょうか。




