28話 暗殺ギルドへ
短めです!!
いつものように街の噴水広場で待ち合わせをしてロータスと合流した後、ウェルターさんの所属する暗殺ギルドへ向かう。
エーアストに本部を持ちこのゲームの舞台となっている国モリドールのほぼすべての街に支部を持つ国家軍や自警団と並ぶ大組織、暗殺ギルドヤタガラス、裏家業系のギルドだがその存在は知れ渡っていて、報酬を出せば害獣の討伐や用心棒等の仕事を請け負うため街の住人からの信用もそれなりに厚い。
そんな組織の本部であるーー裏家業系のギルドだがなぜか街の中心地に堂々と佇むそのーー建物の前に僕たち3人は立っていた。
それにしても堂々とし過ぎだろう……。
そんなことを考えながらヤタガラスの本部を3人で眺める。
って、アリスは元々ここの所属じゃなかったのか?今更驚くこともないだろうにと思って横に立つアリスの表情をみるとどうやらこの建物の存在に驚いているのではないようだった。
口元は固く引き結ばれていて見るからに強張っている。
自分の所属していたギルドであり、命を狙われていた相手でもある、緊張するのは当然だろう。
そんなアリスの肩を軽く叩いてから建物の入口へと歩き出した。
今頃はアリスの嫌疑も晴れているはずで心配することなどないのだ。
建物の中へと入り受付でウェルターさんに呼ばれた旨を受付嬢のNPCに説明すると数分もしないうちにウェルターさんがやってきた。
「よく来てくれた、悪いな本当ならこっちから出迎えに行くべきだったんだが指名手配の件とかもあったし、なによりギルドマスターが直接会いたいらしくてな」
ここで言うギルドマスターとはウェルターさんは個人でヤタガラスに所属しているからNPCのヤタガラス代表者ということになる。
挨拶も済んだところで建物の奥にある手動エレベーターへと通される、このゲームではある程度高い建物はそれなりにあるのだが昇降は階段のみでエレベーターがある建物と言うのも珍しい。
ハンドルをぐるぐると廻してエレベーターを上昇させるウェルターさん、そういえば手動のエレベーターを動かすのは重くないのだろうか?この世界に魔法的な便利道具はなく物理法則もスキルの能力を覗けば現実世界と同じなのだ、全員分の重量が掛かっていることを考えれば相当な重労働だろう。
ちょっと気になったので軽々とハンドルを回すウェルターさんを見つつアリスに聞いてみたところ。
「このエレベーターはトラクション式と言ってワイヤーの両端にこのかごとカウンターウェイトを取り付けて滑車で釣り上げているのでさほど負荷はかかりませんよ、この人数なら私でも楽々上げれます」
とのことだった、その辺の技術はよくわからないが現代のエレベーターと同じ構造だということはなんとなくわかった。
そんなやり取りをしているうちにエレベーターは最上階である7階へと到着する。
ウェルターさんに廊下の一番奥の部屋へ案内される。
ウェルターさんが部屋のドアをノックすると誰何もなく
「入れ」
と一言女性の声が返ってきて部屋の中に通される。
部屋の中は如何にも高級そうな調度品が並んでいるが派手という訳でもなく落ち着いた雰囲気の部屋だった。
だがその部屋には声の主であろうギルドマスターの姿はなかった。




