23話 復讐者と下水道の闘争3
GWだし少し更新頻度高めに出来たらいいなと(思ってるだけ
僕が投げた拳銃は一番近くの盗賊の頭部にクリーンヒットしてその盗賊は昏倒する。
直後に2度目の一斉射撃、だが今回は先ほどと違い自動迎撃のが発動している為避けきることができた。
何か違和感を感じるのだが上手く説明できない、なんなんだ?
だが余計な事を考えている暇はない、1人倒したとはいえまだ相手は4人気を抜ける状況ではない。
走りながらコートの中の小型ナイフを取り出して投げるが、僅かに逸れて相手には当たらなかった。
「くそ……」
落ち着け、1人だけなら大した脅威じゃない数を減らしていけばこちらに勝機はある。
効果終了と同時にリキャストの終了した自動迎撃をノータイムで発動、間断なく攻撃されている状況だからこそ出来る荒業だ。
だがまともに接近するには場所が悪い、こうも開けた場所では止まった瞬間にハチの巣だ。
何か策は……。
ぎりぎりで弾丸と矢を避け続けながらふと思いつく、我ながらなかなか非情な行動とは思うがやるかやられるかの状況でそんなことを考えても仕方がないだろう。
これで5度目になる一斉射撃を跳ぶ様に躱しながら先ほど昏倒させた盗賊の元へ、そして走りながら倒れている盗賊の襟首を引っ掴んで持ち上げる。
楯がなければかわりになる物を拾えばいいじゃない、生きてるけど……。
先ほどの事で相手は仲間がいても容赦なく撃ってくることはわかっている、だがそれでも攻撃を防ぐことはできるだろう。
そして予想通り何のためらいもなく盗賊はクロスボウでこちらを撃ってくる。
「グアッ」
風切り音を鳴らしながら飛んで来た矢は楯にしている盗賊の足に深々と刺さり楯にしている盗賊は悲痛な呻き声と共に目を覚ます。
仲間に撃たれるなんて可哀想に……。
可哀想だからと言って手を放すなんてことはないのだけどね。
矢が刺さった盗賊を楯にしてそのまま別の盗賊の元へと突進するように距離を詰める。
だがここで問題が、矢は完全に防げても銃弾は当たり所によっては貫通してくる!!
体力が更に一割ほど減少するがこれも予想はしていたので慌てない。
目の前にはハチの巣だがまだ何とか生きている肉楯1号君、その首筋に迷うことなく噛みついた。
口の中に甘い香りが広がるのと同時に体力が勢いよく回復していく、種族スキル吸血、今まで体力の減少する場面も殆どなく使うことがなくて軽く存在を忘れかけていたが体力回復効果がここまでの物とは思わなかった。
肉楯1号君の首筋にかみついたまま前方の盗賊との距離をさらに詰める、何発も肉楯君を貫通した弾丸が僕の体力を削るが次の瞬間には最大値まで回復している。
「くそっ化け物かこいつ!!」
目の前まで近づいた盗賊は悪態をつきながら慌ててナイフを抜こうとするがもう遅い。
既に力尽きた肉楯君の首筋から口を離すとそのまま力任せに目の前の盗賊へ投げつける。
盗賊はナイフを引き抜くことも出来ずに体勢を崩す。
体勢を崩した盗賊の腕をつかみそのまま強引に僕の右側へと持ち上げると直後に発砲された銃の弾丸が掴んでいる盗賊の眉間へと吸い込まれる。
あぁっ勿体ない、死亡した相手からじゃ吸血出来ないのに……。
1撃で死亡してしまったのは予想外だが楯になることに変わりはない、これで君もめでたく肉楯2号君だ、言ったところで死んでるから分からないだろうけど……。
同じ要領で順番に数を減らしていき僕の腕には虫の息の肉楯4号君、残ったのはリーダー格の盗賊だけだ。
そいつがいまだに楽しそうな笑みを顔に張り付けたまま話しかけてくる。
「いや、本当に見事だ、技術はともかくその身体能力は自警団には勿体ないくらいに……仲間になる気はない?」
「それは遠慮しておく、盗賊ってのを置いても仲間を簡単に見捨てるような奴らなんてのは御免だ」
「そりゃあそいつらは使い捨ての下っ端だからねぇ、君みたいな優秀な人材なら扱いもそれ相応の物になるよ」
「そういうことを言ってるんじゃない」
「下っ端だろうと見捨てるべきではないなんて言うつもりか?そんなもの自警団はともかく軍だって同じだろう、いやむしろ軍の方がひどいね」
「なんで盗賊のお前がそんなこと」
「なんでってそりゃ俺が軍人だからに決まってるだろう」
その言葉で先ほど感じた違和感の正体に気付く、戦い方が盗賊らしくなかったのだ、他のゲームなら盗賊と言えばもっとばらばらに襲ってくるものだがこいつらは陣形を組んで一斉射撃なんて軍隊の様な戦い方をしていた、だがこいつらが軍人だとは信じられない。
「お前が軍人だっていうならなんでこんな盗賊の真似事みたいなことをするんだよ」
「任務だよまぁ本意ではないけどね、あまり詳しい事は言えないが……そうだね、Grim Reaper Blood、それかWise Man Bloodって噂くらいは聞いたことがあるだろう?不老不死になれるとか石ころを金に換えるとかそういう話の」
「それがどうした」
突然の話に微妙に思考が追い付いていないが取り敢えず聞くだけ聞いてみる。
「どうやらこの国の上層部はその死神の血ってのがなんなのかおおよその予想がついていて実在するという確信があるようでね、大方それを兵器転用するとかそういう目的なんだろうが、それの為に俺たちは動いてるってことだ、有るかどうかもよくわからないお伽噺みたいなもんのために盗賊の真似事なんて実際に動く俺たちからしたらたまったもんじゃないけどな」
「それで?」
聞いているとますますよくわからなくなってきた。
「ここは大人しく見逃せって言ってんだよ、お前は自警団に雇われただけの一般市民こっちは軍人、言ってる意味わかるだろ?ここで大人しく引くならお前が部下を殺したことは見逃す、だが追ってくるなら指名手配くらいは覚悟するんだな」
なるほどそういうことか
「言いたいことはわかった、だがまずお前が本当に軍人かどうかも分からない、仮にそうだったとしてお前を逃がしてもお前が言葉通り見逃す保証なんてない、ならここでお前を殺すのが一番確実だ」
「まぁ、そう来ると思ってたよ」
言いながら相手は銃の撃鉄を起こす、それと同時に自動迎撃を発動する。
相手の銃口はしっかりと僕の頭を捉えている、その引き金が引かれるのを見て掴んだままの肉楯4号の頭を動かして弾丸を受ける。
そして肉楯4号を動かした事で空いた僕の肩に向けて2発目の発砲それも難なく肉楯4号の頭で防ぐ。
「吸血鬼、お前弾丸が見えてるのか?」




