16話 列車の旅とトラブルと2
体調も戻ったので(と言うか月曜には戻ってた)短めですけど投稿しておきます。
季節の変わり目なので皆さんも体調を崩さないようにお気をつけて
全速力で列車の屋根の上を駆けて、なんとか落ちるその瞬間にその人の腕を掴むことができた。
引き上げながら確認するとその人はプレイヤーだった。
ステータスにはステータス異常を示すアイコンが消えかかっているのか点滅していた。
ステータス異常:麻痺2
この状態になった者は10秒間硬直して動けなくなる。
なるほど、これでこの人は倒れていたのか、そんなことを考えながら引き上げたところでちょうど麻痺が解けたようでその人ががばっと動き出す。
なんかこの人見たことあるような?
「ってウェルターさん?」
意外な場所での再開につい疑問形で声をかけてしまうのだが挨拶を交わす間もなく僕の後ろの何かを見たウェルターさんが叫ぶ
「避けろ!!」
その声と同時に自動迎撃が発動して知覚する時間の流れがゆっくりとしたものに変わる。
振り向いている時間はない、急いで横に転がり、向きを変えながら立ち上がる。
立ち上がるのと同時に見えたその人物が手に持った銃口の先は僕を狙っている。
直後に2発砲、ゆっくりとした時間の中でもそこそこの速度で僕に迫る弾丸を思考に追い付かない身体の動きに苛立ちながらぎりぎりで避ける。
相手は僕が弾丸を避けたことに驚いたように一瞬目を見開くが直ぐに僕に向けて2発連続で銃を撃ってきた。
コートの内側に右手を入れて小型ナイフを取り出しながらこの2発も何とか避ける。
今度は驚いた様子はなく苛立たし気な表情で直ぐに銃口を向けてくる。
だが今度は相手が撃つ前にロータスのクロスボウの矢が相手のうさ耳の生えた頭目がけて飛んでいく、寸前で気付いた相手は大きく後ろに飛び退きその長い髪を矢に一房千切られながらもなんとか避ける。
だがこの隙は相手にとって致命的だ、着地の瞬間を狙って右手に持った小型ナイフを投げる。
「ぐっ……」
僕の右手から放たれたナイフは狙い通り相手の心臓辺りに……とはいかず胸元を庇う様に動かした右腕に深々と刺さり相手から声が漏れる。
ここで自動迎撃の効果が切れた、だが今は相手と睨み合う形になっているため問題はない、次の行動で元の速度に対応できるかは少し不安ではあるが……。
そんなことを考えていると、相手は不利だと判断したのか背を向けて逃げ出した。
ロータスがボウガンを撃つが僅かに逸れて相手の足元に刺さる、このままじゃ逃げられる。
投げナイフを投げるには少し距離がありすぎるが……アンカーショットを使うしかないか?
内心ため息を吐きながらアンカーショットを装着した右腕を相手の足に向ける、列車に乗る前に一応消耗品の補充をしたのだがこのアンカーショットの火薬が結構高いのだ。
値段的には小型ナイフよりも高い、小型ナイフは投げても回収できる可能性があるが、火薬は1回撃てば必ず消費されるのだ、内部に装填できる火薬は5発分、もともと2発分しか入ってなかったようで鹿狩りに1発使ったので4発分の火薬を購入したのでそこそこ大きな出費だった。
これにさらに弾頭や薬莢等の値段が上乗せされる弾薬が高いのもうなずけるという物だ。
だが今はそんなことを気にしている場合じゃない、アンカーショットの狙いを定める。
どうやらアンカーショットにも投擲スキルの効果が反映されるらしく何となくどう狙えばいいのかが分かるようになっていた。
左足の太ももに狙いをつけて射出ボタンを押し込む。
バシュンと小さな発射音を立てて放たれた鏃は相手の柔らかそうな太ももに音を立てて刺さる。
「がひっ……!?」
相手から小さな悲鳴が上がるが気にせずにワイヤーの巻き取りボタンを押し込む
「があぁああ!!うあぁああ!!」
悲鳴と言うか泣き叫んでいるような気もするがここまでしたのに刺さった鏃を引き抜いて逃げられたりしたらたまったものではない、気にしないったら気にしないのだ。
「うわぁ……」
「うわぁ……」
ロータスがなんか言ってても気にしない、ウェルターさんもなんか引いてるけど気にしない
目の前まで相手が引きずられてきたところでワイヤーの巻き取りを止める。
「ひっ!!」
必死に逃げようともがいていた相手は状況を理解した瞬間慌ててこちらに銃を向けようとするが容赦なく手に持った銃を蹴り飛ばす。
「あがっ」
なんか銃を蹴り飛ばした勢いで指がダメな方向に曲がってる気がするが気のせいだろう、悲鳴も上がってるけどきっと気のせいだ。
「それでウェルターさんこの人は?」
相手の戦意が無くなってひと段落付いたので気になっていたことを尋ねる。
「「今更それきくの!?」」
ロータスとウェルターさんの叫びが見事にハモって響き渡った。




