表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

ありゃ、乙女ゲームに転生したっぽい

拙い作品ですが、よろしくお願いします。

 私は月見里やまなし 遥歩あゆむ。今年で五歳になる。

 趣味は本を読むこと、特技は早寝早起き。好きな食べ物は飴玉、嫌いな食べ物は腐ったもの。


 そんなまだ幼い私には前世の記憶がある。大きくなってこんな事を言い出したら頭の心配をされる所だが、まだ幼女の私は「あらぁ、そうなのぉ~?」(温かい眼差しと微笑み付き)で済まされるレベルだ。まだセーフ。アウトじゃない。


 前世の記憶を思い出すきっかけは三歳になったばかりの頃だった。

 それは日曜日の朝にある戦隊モノを見ている時だった。力を合わせて必殺技を打つヒーロー達の武器を見ながらふと思ったのだ。ああ、小さい頃はこういう武器をよく欲しがったな、と。


 その瞬間、思考が一時停止した。え、今も小さいじゃん、何言ってるんだ私、この歳でボケてしまったのか!?とすぐに再生して脳内で盛大に突っ込んだんだが。


 まあ、それからは前世の記憶が一気に流れ込んでくるということはなく、脳の発達に合わせた自我の成長と共に前世の記憶は馴染んでいった。やっぱり人一人分の記憶っていうのは幼女の小さい体には負担で、ちゃんと整理するまでには時間もかかったし、体力的にも厳しかった。最近やっと記憶の整理が終わり、人格の確立ができた。


 月見里遥歩の人格は前世のままかというと、そうじゃない。

 多少は影響された部分は無きにしも非ずだが、前世との線引きはちゃんとした。私は私、前世は前世。それは別人という事を意味するが、使えるものは使っとこうというコンセプトだ。私が月見里遥歩ということに揺ぎはないが、せっかくある前世の記憶を使わないのは勿体無いからな。


 その所為で子供らしからぬ子供になってしまった。

 ………まあ、反省も後悔もしてないがな(ドヤァ





 前世は普通の家でそれなりに不自由のない生活をしていたが、前世と比べると今世では少しいい家に産まれたようだ。お手伝いさんとかを雇ってるわけではないが、一般的には比較的に裕福な家だと認識している。


 無表情+寡黙だが優しさの感じられる父と、おっとり美人なマイペース母、三歳になった可愛い双子の弟と妹が今世の私の家族だ。

 家族仲は良好で、前世の家族も今世の家族も温かい家庭だ。自分はつくづく恵まれていると感じるな。大切にしなくては。


 父は渋味のある美丈夫で、母はタレ目で柔和な顔つきをした美人さん、弟と妹は天使のような可愛さで将来が楽しみだ。そんな美形家族中で私の容姿はというと、まあ………………普通?

 いや、ほらさ、子供はみんな可愛いだろう?自分で言うのもなんだがな、私って可愛いとは思うんだ。将来は平凡って言われるレベルだと分かっていてもな。幼女だし、需要はあるよな。ん?誰にって?………世の中には知らなくてもいいことがあるんだ(遠い目





 いつもの平日の朝、幼稚園にも保育園にも通ってない私は外出の準備をして玄関にいた。


「あゆむねえ、ぼくたちもおそとにつれてって………?」

「………」(コクコク


 双子の天使はうるうるとした瞳で私を見上げると、首を傾げてのおねだり攻撃をした。――――グハッ!!私に1000のダメージ!もう、私のライフはゼロだ!!

 と、まあ、脳内妄想は置いといて。


「………すまない。楓雅ふうが楓華ふうか。私は、行かなくてはいけないんだ………」


 私は沈痛な面持ちで二人に告げる。そんな私を縋る様に見つめる二対の瞳。


「必ず………………必ず、帰って来るからなっ!!」

「あゆむねえっ………!」

「ねえっ………!」


 ドアノブを握り締め、思いを振り切るようにドアを潜る。

 決して振り向きはしない、二人の思いを無駄にはしないからなっ………!!



「いつも飽きないでよくやるわねぇ~。さあ、遥歩は行っちゃったからぁ、二人はお母さんと一緒に遊びましょうねぇ~」

「はーい」

「………」(コク


 双子はくるっとさっきまでの表情を変えて元気に手を挙げて返事をすると、仲良く手をつないで母の後を追った。


 今までの茶番とも言える玄関でのやりとりには特に意味はない。初めて私が一人で外出する時に楓雅と楓華が付いてこようとしたのを危ないからだめだということで、二人を諦めさせるために始めたのがさっきの流れだ。それを思いの外、二人が気に入ったので私一人が出かける時にはあの流れをやることにしているだけだ。


 私の場合、前世の記憶があることで手間がかからないために両親からはしっかり者という認識で信頼もあるし、防犯ブザーとGPS機能付きの携帯をすぐに取り出すことのできる場所に常備している。だが、私の弟妹達はまだ小さいし、私一人では二人の面倒は見切れないから二人はお留守番なのだ。



 さて、私だけの外出がこれが初めてではないというのはお気づきだろう。実は私はもう結構な頻度で外出をしている。最初は母が一緒だったが、ある程度道を覚えてからは一人でも大丈夫だと言って一人で出かけるようになった。その代わり、信頼を崩さないために門限はしっかり守るようにしている。


 私は家に居ても同年代の子供のようにお絵かきやテレビで子供向けの番組を見て過ごしたりはしない。弟妹の相手をすることもあるが、まだ小さいから成長のために睡眠が必要な二人が眠ってしまうとやることがない。母の手伝いもするが、昼ぐらいにはほとんど終わってしまってどうしても時間が余ってしまう。


 だから私は将来のために勉強でもしようかと思ったんだが、こんな小さい子供が高校生レベルの問題を解いていたら軽くホラーに思われるかもしれないと家での学習は断念した。


 外出をしだしたのは家でやることもなく暇であったのと、図書館を探すためだ。図書館になら両親に参考書をねだらなくてもいいし、人に見つからなければ私がどんな本を読んでいたとしても気にする者はいないからな。さすがに本を借りることはできないが、静かな空間で他の干渉を受けない場所というのは魅力的だ。


 といっても、家から図書館まで一時間ぐらいかかるから未だに図書館へ一人では行ったことはない。母とは行ったことがあるが、まだ道順を正確に覚えられたわけではないからな。不測の事態に備えてまずは近所の道を覚えていってるのだ。





 そうして今日も外を散策していたら、私は衝撃的なものを見つけてしまった。


「はは………。乙女ゲーム、転生………か」


 乾いた笑いしか出てこない。

 まさか自分がこんな小説とか物語の中でしかありえないことを体験することになろうとは。生きてみるものであるな。


『恋する桜色の君へ~桜の下でこの想いを~』

 そのゲームの舞台となる学園の校舎を校門の前で見上げた私は、視線を徐々に下へ戻していった。


 そうして目に入るのは『桜花おうか学園』という校門の表札と、訝しそうな感じながらも温かい眼差しで見てくる守衛さん。校舎でっかいからな、小さい子供が呆気にとられて見上げてる光景は微笑ましいのだろう。


 前世では自分から進んでゲームをするようなたちではなかった。

 だが、友人に所謂いわゆるオタクという者がいた。本人が乙女ゲームオタクだと豪語するように、許す時間のほとんどを乙女ゲームというのに費やしていた。その友人との談笑では乙女ゲームに関することがほとんどで、前世の私は聞き役に徹していた記憶がある。


 その話の中でそのゲームのパッケージを見せられたりしたこともあった。数ある乙女ゲームの中でもその友人がオススメだと押していたいたゲームがあり、そのゲームというのがこの学園が舞台となる『恋する桜色の君へ~桜の下でこの想いを~』だ。


 友人の勧めというのもあって私もこのゲームをやったことがある。生憎何年も前の事だから詳細まではっきりと覚えてはいないが、このゲームの冒頭に登場する背景である校門前から見た校舎の風景と、告白シーンに使われる桜の木はしっかりと覚えてる。


 私が特にこの乙女ゲームで好きだったのは告白の場面だ。いや、告白の場面というのはいささか語弊があるかも知れない。

 私が好きなのはその告白の場面に使われる背景なのだ。


 学園の中庭に昔からあり、学園の象徴とも言える桜の大樹。学園の御神木とも呼ばれ、そこで告白し恋が実るとそのカップルは末永く幸せに暮らせるというジンクスも存在するらしい。まあ、そこら辺はどうでもいいのだけれども。


 その背景(スチルというのか?)の桜の大樹がすばらしいのだ。

 抱き合う男女の後ろに佇む貫禄ある姿。まるで二人を暖かく包み祝福するように満開の桜の花が描かれ、舞い散る花弁の形も美しく、細部に渡る色使いも鮮やかで製作者の本気が見て取れた。まるで本物のようだと驚かされた記憶がある。


 もし一度でも叶うなら現実でこの目で見てみたいと、前世の私はつねづね思っていたようだ。結局それが叶うことは万に一つもなかったが。


 その前世の私が憧れてやまなかったものがこの学園の中にあるというのか。遥歩である私と前世の私は別の人物ではあるが、前世の私がそこまで乞い願うものというのは私も興味がそそられる。

 なによりも前世の記憶に詳細に残るこの桜は私も美しいと感じる。前世と同じように、この目で現実のモノとして見たいと思えるほどに、この記憶にある桜は私にとって魅力的に映るのだ。

 まあ、前世で叶えられなかった夢を叶えてやりたいというのもあるんだが。


 善は急げ、だ。

 この学園に通える中学生になるまでなんて呑気に待つ気はない。人生何があるか分からないんだ。絶対にこの目であの桜を見てやろう。


 私は校門から背を向け、高鳴る鼓動とともに早まる足に身を任せて家へと走った。








 この時、私は充分に前世の影響を受けていたんだが、あの桜を見ることはができるという興奮で頭がいっぱいだった私に気づくよしはなかった。

読んでいただき、ありがとうございました。


まだ、書く事に不安がありますが、これから頑張らせていただきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ