再びの
今日がきた。
外からは小鳥のさえずりが聞こえる。眩しい光が目を刺す。
雪のあの姿を見たのは、昨日。一晩は思ったよりもあっという間だった。
朝は時間が経つのが早いので、早めに朝食を自分で用意して、テーブルについた。
少し焼いたトーストに、マーマレードのジャムを塗る。もちろん既製品の。
実は昨晩のことについて、幾つか気になったことがあった。
一つは何をしていたのかという事である。女性を喰っていた、とでも言うのだろうか。
もう一つはあの女性と、彼の関係だ。恋人、にしては歳が離れたようだった、が。
あー!わかんない。
ふと時計を見ると、針は家を出る20分前を指していた。
「やばい!時間ない!」
急に立ち上がれば、ふらつく。マーマレード付きのパンを落としかけた。
「おはよう。待った?」
青い空。今日の天気は晴れ渡っている。対照的に曇る私の心。
「ううん。今来たとこ」
そう私が返事をすると、葉山結実は柔らかく笑った
「よかった。・・なんかさ」
彼女は少しいぶかしげな表情を見せた。
「ん、何?」
「顔色悪いよ?」
その通り。朝から憂鬱で仕方がない。とは言わず、
「んー、なんかちょっとヤなもの見ちゃって」
恐くてあまり明確には言えなくて、誤魔化したら、彼女は深く触れずに、そっかあと頷いた。
「最近は物騒だもんねぇ」
「ねぇー」
本当に、物騒だ。
「あ、そういえばさ、知ってる?」
結実が思い出したように声を上げる。
「何を?」
「噂でね、聞いたんだけど。最近ここら辺に悪魔が現れるらしいの!」
遠くからカラスの鳴き声が聞こえる。
「悪魔?」
「そう。吸血鬼だって」
パズルのようになにかが、カチッとはまった。
そうか、そうだ。
私が見たのは…。
「吸血鬼」だ。
「まあ、噂だし。嘘だとは思うけど」
薄い雲が空を覆っている。
「どうしたの?ほんとに大丈夫?」
またぼうっとした私を心配して、彼女は顔を覗き込んできた。
「うん、平気だよ」
と、笑って答えた。
まだ、この時までは。