第23話 残酷な世界
──いじめ。
自分で口に出した言葉の恐ろしさに、慄いた。
……あたしがいなかったから。
瑠璃乃にとって、あたしの存在は、そんなに大きなものだった?
「だけど、な。今お前がムキになって突っ走っても、余計に大事になるだけだ」
「……わかったよ。でもどうすればいいって言うの……」
声が窄まる。
残酷だ。なんてこの世界は残酷なんだろう。
あたしの存在が消えて、傷つくのは、せめてあたしだけでいいのに。
どうしてあたしの親友が、瑠璃乃が、あんな目に遭わなきゃいけないの……!?
「それを一番知ってるのはお前だ」
と、久遠はあたしの目を見据えて言った。
「は?」
「ハル、お前は、文月と親友に戻りたいんだろ?」
うん、とあたしは深く頷く。
「何言われたって、諦めないよ」
久遠は唇の端を持ち上げる。
「だったら、ハルの思うようにしたらいい。今の文月は、ハルが文月と仲良くなった時よりガードが固いかもしれないけど、それでも、あの時みたいに、仲良くなりたいって気持ちをぶつけたらいいんじゃないか」
言葉が、すうっと胸に沁み入ってくる。
「……まあ、こんな俺が言えることじゃないかもしれないけど」
クラスでいつもひとりの久遠は苦笑する。
「ううん。ありがとう。確かにそうだね」
残酷な言葉に、残酷な事実にめげそうになってたけど、見失いかけてた目的をちゃんと思い出した。
あたしは、瑠璃乃の親友に戻りたいんだ。
そうだあたし、絶対また親友になってやるって決めたじゃん。
いつの間にか止めていた足を、大きく振る。
前に進んでやる!
地を蹴って走り出す。
耳元で、風が唸る。髪がなびく。日は光り、世界を照らす。あたしの進む道を、眩しいほどの強さで。
あたしのいなかった世界も、変わらず厳しくて、美しい。
「おいハル、待てよ!」
後ろから久遠の叫ぶ声が聞こえる。足を止めた。
そこはもう、寮。
カスミン先輩。撫子さん。梨本さん。──久遠。
みんなに忘れ去られて、ひとりぼっちになったあたしにも、居場所ができた。みんなのおかげで。
あたしも──瑠璃乃の居場所に、なれるかな。
──きっと、なれる。あたしはあたしと、瑠璃乃を信じる。
追いついた久遠が、「急に走るなよ……」と睨んできた。
あたしは笑う。
「前に進みたかったの」




