魍魎
昨晩、離れにある物置に魍魎が出た。
熊のような毛で覆われた体と、ぎらつく大きな黄色い目玉が印象的な妖怪だ。ソイツが物置であるモノを喰らっていたんだ。
それを見た途端に恐怖と、他にも喩えようのない様々な感情が押し寄せてきて、僕は気絶してしまった。
いやまあ、実際の所どうなったのか具体的には分からないけれど。つい先程庭先で目が覚めたのだから間違いないはず。
その証拠に、身体の下で僕の体形そっくりそのままに潰れた芝がそうであると如実に物語っていた。
それと、魍魎の方も多分見間違いとかではなくて、本当にあの時あの時間に、あそこに実在していたんだと思う。
事実、物置の中は荒れに荒れていたから。
迸った汁は壁を覆い、肉片や髪は床に散乱していてそれはそれはもう酷い有様だった。
そんなあまりの惨状を見せ付けられた僕は片付ける気が全く起こらず、今はその全てを放棄して一旦自室へと戻ってきている。
どうせいずれはやらなければならないのだとしても、今だけは臭いものに蓋をするかのように。
ちなみに言っておくと、今日は平日だけど僕は仕事をしていないから部屋でダラダラしていても何も問題ない。時間なんていくらでもある。
それに、文句を言う奴もいないし。
まあ、この前までは父さんが『いつまでそうしてるんだ?』とか何とか口煩く話し掛けてきたけど、それも過去の話。今は静かなものだ。
それにしても、妖怪なんて初めて見た。
そもそも僕は霊感も何もないんだ。
なのに、そんな僕が幽霊をすっ飛ばして、そんなものを目の当たりにしてしまったんだからそりゃ失神もするだろう。
でも携帯で軽く調べてみた感じ、本来『魍魎』ってのは山や川とか、そういう自然の多い所にいる妖怪らしくて。
近いものでも人を、特にその死肉や臓器を食べたりとかすることはあるみたいだけど……姿形は子供や、河童に似ているっていう記述が多かったから、これもイマイチしっくりこない。
ただ一方で、とある漫画家のイラストには酷似していた、まさにこれだと言えるくらいには。
だとすると、やはりアレは僕の脳裏にあった記憶が呼び覚まされたというだけの、ただの幻想だったんだろうか?
その漫画家は僕も知っているくらい有名な人で、僕自身その人の書いたものは幾つか読んだことがあるし。それが僕の見る幻覚としてこの世に生まれたのなら、なるほどそれも納得出来る話だ。
けれども、何故それが『魍魎』なのかとなるとまた変わってくる。
家が墓場に近いから?
山はないけど、川が近くにあるから?
……それとも。
なんて、考えた所で答えが出てくるはずもなく。
「とりあえず父さん、物置から動かした方がいいかな」
僕は仕方なく、また物置に向かおうと重い腰を上げた。
お読みいただきありがとうございます✨
また別の自作でもお会いできたら嬉しいです( ´∀`)マタネ




