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第4話「長浜城、女だらけの恐怖」
「お前様、なんだか最近、妙に他人行儀じゃない?」
長浜城の奥御殿。
後の北の政所、正室ねねの鋭い視線が万作の眉間を射抜いた。
信長を誤魔化せても秀吉に連れ添った女房を騙すのは至難の業だ。
万作は、茶碗を持つ手が震え中身を盛大に畳へこぼした。
「あ、いや……それは、ほれ。
天下の大仕事で忙しいもんで身も心も引き締まっとるんだで、なぁ…ねね殿」
「……どの? いつから私をそんな風に呼ぶようになったの??
前はもっと、こう……いやらしく笑いながら寄ってきたじゃない」
ねねが一歩詰め寄る。
万作は、いやらしく笑うという高度な技術を持ち合わせていない。
背後の襖の隙間から秀長が必死に鼻の下を伸ばせとジェスチャーを送る。
万作は覚悟を決め、ひきつった笑顔でねねの肩を抱こうとした。
「あー、もう! じれったいわ!
おみゃあ、本当は誰なんだね!」
ねねの一喝が炸裂し、万作は思わず土下座した。
「ごめんて! 秀長に脅されてやっとるだけだて!」
「……え、万作? 万作なの?」
実はねねも、万作とは幼馴染だった。
秘密を共有したねねは、呆れ果てながらも
「協力してあげるわよ、この頼りない天下人さん」と万作の額をパチンと弾いた。




