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第2話「影武者への道」

「無理に決まっとる!

おみゃあさま、わしを殺す気かね!」

万作のボヤきが、隠れ寺の静寂を切り裂く。

金ヶ崎で脅され、拾われてから三日。

万作を待っていたのは、天下を取るための地獄の猛特訓だ。

目の前には、扇子を手に優雅に座る秀長。

その微笑みは、仏様というより獲物を狙う蛇のように見える。

「兄上、返事は『なも』ではなく『おお』。

語尾に濁点をつけるイメージ、ハイもう一度」

「もう一度って……さっきから百回はやっとるがね! そもそも、なんでわしがこんな猿みたいな格好で歩かにゃいかんのだね。

腰が……腰がもうバラバラだがや!」

万作の必死の抗議を秀長は、涼しげな顔で受け流す。

「兄上、いいですか。

世間が求めているのは、農民から成り上がった

愛嬌のある怪物秀吉です。あなたのその少し頼りない、それでいて図々しい立ち振る舞い。

それを徹底的に磨き上げるのです」

「磨かんでいいわ! 頼むで、もう勘弁してちょうだいよ……」

「今のは良いボヤきでした、しかしながら声が小さい。声を腹から出してください、ハイ、やり直し」

秀長の手にした扇子がパチンと音を立てる。

逃げ場のない男の長い…長すぎる一日。

尾張中村の土が、急に恋しくなる万作だった。

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