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第1話「豊臣秀吉、討死」
「……死んどりゃあす! 秀長、おみゃあさんの兄貴、完全に死んでまっとるがね!」
元亀元年金ヶ崎。
戦場を逃げ惑っていた農民の万作は、自分と瓜二つの男が絶命しているのを見つけ腰を抜かした。
天下に名を馳せる羽柴秀吉、その人である。
「静かに。……兄上は討ち死にしました。
ですが、今それがバレれば織田軍は総崩れ、羽柴家は皆殺しです」
弟の秀長は、泣き叫ぶ万作の首を無表情のままグイと引き寄せた。
「万作、あなたは運が良い。
これからは泥をすする農民ではなく黄金をまとう天下人として生きるんです」
「なもー! 無理だわ!
わしゃあ、クワしか持ったことないんだて。
こんな重てゃあ鎧、着とるだけで肩が凝るわ!」
万作の必死のボヤきを秀長は、爽やかな笑顔で遮った。
「逃げれば今すぐこの首をはねます。
演じれば、日本一の贅沢をさせてあげましょう。
さあ、どっちがいいですか?」
首筋に冷たい刃を当てられ、万作はひきつった笑顔で叫んだ。
「……やるがね、 やりゃあええんでしょ!
どえりゃあ無茶苦茶だがね、このお人は!」
史上最大の嘘がいま幕を開ける。




