第24話『かわいい掛け声、響く断末魔』
……こうも簡単にモンスター群を発見してしまっていいものか。
もう少し時間がかかったり、歩いているだけでモンスターと遭遇してしまってもおかしくはなかったんだが……そんなことはなく、あっさりと目の前に。
さすがに単体で居るわけではなく、中型個体が10体ほど、小型個体が30体ほど居る。
数としては多く、あれらを討伐するなら6~8人は居ないと危険だ。
まあ、今の俺たちに人数的有利とか作戦とか関係ないんだろうが。
「じゃあ行ってくる」
「まだ心配が勝つけど、無理はしないように」
「ああ。2人とも、頼んだ」
信頼のまなざしを向けられ、頷く2人。
フローラの心配は無用、自分のことを考えないとな。
いざ、出陣。
『ピシィーッ!』
さすがに狼型よりも察知されるのは遅い、か。
もはや目と鼻の先まで接近して、ようやく小型個体が周りへ状況を知らせ始めた。
今回の相手はリザード型。
総称的には蜥蜴系だが、リザードは二足歩行の蜥蜴を意味する。
武器を所持している場合もあるが、今回は全体を見渡してもその気配はない。
じゃあ手始めに、小型個体10体へ一気に攻撃を仕掛けよう。
まだ炎しか扱えないから魔法は……今のところはやめておこう。
たしか聖法は身体強化、魔法は物体強化だったか、それを――魔剣で試してみるか。
「おぉ……禍々しいな」
抜剣し、なんだかよくわからないが剣が強くなる想像をしたら、黒い剣が黒光りし始めたり、黒い靄や霧みたなのに覆われ始めた。
黒い炎に包まれている、という表現も当てはまりそうな、そんな感じ。
『シィーッ!』
仲間を待たずして迎撃体制とは果敢だものだ。
しかし突進してくれるなら好都合――剣を振ってみるか。
『――――』
うわ。
「半端じゃないな、これ」
10体どころか、突撃してきた30体の小型個体を一振りで消滅させてしまった。
正しくは接近途中で消滅させたわけだが……そういえばそうだった、大型個体にぶっ放した黒い光の刃の前例があったな。
今回は黒い光の刃を飛ばしたというよりは、空間を横一線に斬ったらモンスターに攻撃が当たったみたいな感じだった。
『ジィーッ!』
「ふんっ」
援軍として現れた中型個体10体も横一線を描いて斬る。
少し距離があったものの、難なく1撃で難なく討伐できてしまったわけだが……今度は木々も斬り倒してしまった。
「おりゃーっ!」
「たーっ!」
「ん?」
後方で待機しているはずだったメノウとセリナの、いつものかわいらしい声が響いてきた。
万が一もないと思うが、向かいたくても大型個体が来てしまう可能性もある。
困りはしないけど、戦闘していることは確かだ。
「雑魚が2体居ようとも、余裕!」
「力試しにはちょうどいいわね!」
やはり、心配するだけ無駄だな。
ドッカンドッカン、バキバキと響いて聞こえてくる物凄い音は、間違いなく一方的にモンスターを蹴散らしている証拠。
ほんの少しでも心配した俺が間違っていた。
「おりゃー!」
「とりゃー!」
『ジャァ~~~~~~~っ!!!!!』
『ジュウオワーーーーーっ!!!!!』
「――ん?」
気のせいじゃなかったら、あの断末魔――かなり大きな声じゃなかったか?
小型ではなく、中型でもなく……そう、大型個体のソレ。
さっき中型個体を討伐してから、大型個体が待っても待っても到着しない。
まさか、あっちに行ってしまったんじゃないか……?
冷静に考えたら、モンスターとはいえ一方方向からしか攻めてこないなんてあるはずがない。
大型個体は群れを統率するだけの思考力を有しており、それは戦いの中でも発揮される。
であれば、部下を正面から攻めさせて自分は背後から――なんて戦い方も可能だ。
「じゃあ……」
俺は盛大な溜息を恥じ出し、かわいらしい掛け声とモンスターの断末魔が発せられたであろう後方へ足を進めた。
「――……まあ、そうだよな」
到着すると、リザードの大型個体2体がピクリとも動かない状態で倒れ込んでいた。
あまりにも想像通り過ぎて驚くことはない。
もはや、こんな状況に安心してしまう自分が居たり、当たり前な環境になりつつあることを恐ろしくさえ思ってしまう。
「主様、獲物を横取りしてしまい申し訳ございません」
「いやいいよ。フローラを守るためには、討伐するのが最善と判断したんだろうし」
「そうね。ちょっと暇だったから遊び相手になってもらえてよかった、なんて思ってはいないわよ」
「うんうん、そうだね。待っているだけは退屈だったろうしね」
セリナの言い分は置いておいて。
「一応確認だけど、フローラは大丈夫?」
「ええ。さすがに呼吸が止まるほど驚いてしまったけど、2人のおかげで何もないわ」
「それはまあその通りなんだろうけど。俺が心配しているのは精神的な方だ」
「え?」
「お節介だとは思うが、過去の大型個体と戦闘や数日前の戦闘でトラウマになっているんじゃないかと思って」
「……そうね、正直な話をすると自分でも驚くほど動けなくなってしまったわ。だから2人は、退避ではなく討伐してくれたの」
フローラの過去を知っているからこそ、その内容をすんなりと納得できる。
2体同時に大型個体と戦闘する、という類似している状況だからこそ、なおのこと。
メノウは能天気に見えて聖剣であり、人の心に敏感な側面もあるから、フローラの変化にいち早く気が付いたんだと思う。
セリナに関しては、変な言い訳を建前上述べつつ、人の心を察する能力に長けているからこそ、事実を伏せたんだろうな。
「これから先、こんなことが日常茶飯事になると思う。辛いなら、いつでも言ってくれ」
「うん。気を遣ってくれてありがとう」
「もしも堪えられないのなら、パーティを――」
「いいえ、それだけは大丈夫。わたしの問題だから、自分で解決しなくちゃダメなの。逃げ続けちゃダメだってわかっているから」
「……わかった。本当に無理だけはするなよ」
「ありがとう」
さすがに俺も、負けるはずがない能力を得たからって動揺しないとは限らない。
攻撃を受けても傷を負わなそうだが、俺が2体と対面したらどうなっていたんだろうな。
「さすがに休憩しよう。大型個体がこの有様だし、他の小型と中型は蹴散らしてきたから安全は確保されている」
「主様、提案があります!」
「大体予想がつく」
「こいつらを食べましょう!」
「だろうな」
ほらやっぱり、残してあるってことはそう言うことだろうと思ってた。
「わたくしとフローラの分は、急いで確保してきます!」
「わかった」
「それでは行ってきますっ」




