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未来AI HALO《はるお》君  作者: 米森充


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8/10

第八話 WATERIN COP(ウォーターイン コップ)氏の養成所

 友里恵と蓮が語学養成所に入所して、最初の儀式は耳の検査だった。

 何で耳?

「ねぇ、蓮って聴力は良かった?」

「さぁ?別に日常会話には支障は無いので普通じゃない?何で?」

「だって、この目の前の列って聴力検査なんでしょ?」

「耳の検査とは聞いているけど・・・。それがどうかした?」

「別にどうもしないけど、なんか不安じゃない?聴力検査って小学校や免許の更新の時以来じゃない?私って昔からあの『ピー』っていうか微かな音を聞くと、背中がゾクゾクするの。蓮もそんな感じしない?」

「別に僕にはそんな事ないけど?背中がゾクゾクするの?ゾクゾクってどんな感じ?ゾクゾクって・・・・『快感!』っていう感じ?僕が友里恵の背骨を指でなぞった時のように?」

「違うわよ!この変態!背骨が周波数に共鳴する感じよ!バカ!」

「バカって・・・・(^_^; 僕にはそんな感じ、分かんないよ。ア!もしかして黒板を爪でギーって引っ掻く時のあの音って事?」

「ンー、ちょっと違うかな?確かにあの引っ掻き音は凄く不快だし、ゾクゾクするけど、そう言うんじゃなくて・・・そんなに不快じゃないけど、周波数の振動が背中に伝わった時の音や感覚よ。分かんない?分からなきゃ分からないでもいいわ。もう、面倒くさいし。ただね、列の先頭でやっている検査って、昔経験したようなあの大きく耳を塞ぐヘッドホンをつけて何かしてるでしょ?あれを見てたらあの時のことを思い出しただけ。もう忘れて。」

「・・・・・・。」



 その時、またHALOはるおの天の声


「これは聴力検査ではありませんよ。訓練です。あのヘッドホンは確かに音波を出してはいるけど、ただの微弱音を出しているのではありません。あれは()()()()()()耳の訓練の一環で、英語用ヒアリングの即効聴力アップマシンを使った英語聞き取り訓練なのです。」

「即効聴力アップマシン?」

「そうです。最新鋭訓練機器です。あれを使うと英語の聞き取りに飛躍的な効果を上げることができるんですよ。友里恵さんも蓮さんも、学校で何年も英語の授業を受けてきたくせに、聞き取りが全くダメでしたね。」

「ほっといて。」(そんなふうにズケズケ言う?傷つくわ〜)

「いいえ、ほっとく訳にはいきません。なにしろ短期間に英語を完璧に習得して貰わなければなりませんので。今日は初日なので5分間。明日は6分間。毎日1分づつ時間を増やして10日間続けます。この10日間の訓練終了時には、英語話者の会話が100%理解できるようになるでしょう。但し、正確に聞き取れるようになるというだけで、その内容が理解できるという意味ではありません。あくまで聞き取れるようになるというだけです。」

「それじゃ、今日この5分間の訓練の後は何をするの?」

「もちろんその後の時間は英語学習です。ひたすら本や辞書を読んで読んで読んで読みまくるのです。血反吐が出るまで読んでください。」

「エ〜!血反吐が出るまで?」

「今のは冗談!」(え〜オッさん、もとい、HALOはるお君も冗談言うんだ?)

「今、オッさんって言いました?」

「いいえ!言ってません。」キッパリ!(心で思っただけです!)

「心で思っただけでもダメです!他のエージェント訓練生も真似するって言ったでしょ!厳禁ですからね!(気を取り直して)・・・・とまぁ、血反吐は冗談ですが、それくらい毎日24時間のつもりで勉強してください。必ず短期間で成果が出るはずですから。と言っても、その学習時間の中には本読みだけではなく、当然、聞き取りの訓練も含まれているので、英語教材として英語のドラマや映画の字幕・吹き替えなし動画も見てもらい、その直後の内容確認試験も行いますが。その結果如何でその後の待遇が変わるのでそのおつもりで。」

「エ〜!『スター◯ォーズ』や『ハリー・◯ッター』を毎日見るの?楽しみ!」

「いいえ!違います!大統領の一般教書演説や上院議員の代表質問、ニュースキャスターの事件の読み上げや、街頭インタビュー映像などが主な内容となります。」

「つまんなそう」(あ!心じゃなくて、声に出して言っちゃった!)

「友里恵さん、これは娯楽や遊びではないんですよ!仕事ですからね!仕事!」

「ハイハイ、分かりました。」

「あなたたちエージェントはこの訓練終了後、世界各地で工作員として働いて貰うのです。命懸けですよ!命懸け!!分かってますか?だから実用英語と専門英語を完璧に習得して最大限活かさなきゃ、明日は無い世界に身を投じるのです。」

 友里恵も蓮も、その言葉を聞いて身が引き締まる想いになった。


 やがて友里恵と蓮の順番がやってきた。

 まず友里恵。顔を包み込むようなヘッドホンを耳に装着。

 すると、奇妙な音節パターンの言葉にならない言葉にような音節が流れてくる。よく聞くと、それらは全て英語の音節パターンを抽象化して流されたものだった。

「これを聞いていくのね。」友里恵は何となくこの訓練の意図が分かった気がする。

 日本語話者にはこの音節パターンに慣れるのが苦手だったんだと初めて自覚し、新たな発見に目覚めた。これを繰り返せば確かに聞き取れるようになるだろう。

 次に蓮の番。彼も納得したように両手にグーを握り締め「よっしゃ!」と言った。


 だけど・・・これならこんな大層なヘッドホンじゃなくてもBluetoothのイヤホーンで良くね?


 この日からふたりは目の色を変え、狂ったように学ぶ姿勢を見せた。


 因みに今『目の色変えて』と言ったけど、ふたりは一人前のエージェントとして働くようになった時、青色のカラーコンタクトをして変装したつもりになっていた。一体何のつもり?それにどこからどう見ても白人には見えないし。そう、純粋な日本人以外には見えないのに。知能は上がっても、その辺の無駄な努力は治らないのか?






 つづく









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