第六話 岩谷議員の逆襲
民選党には岩谷 毅の他、4人ほど泡沫問題議員がいる。
前首相の石本 茂、元首相の岸山 文雄、元政調会長 林山 浩、三階 俊弘である。
彼らは揃って問題議員であるにも関わらず、不思議と要職を歴任している。派閥の力学に押され、閣僚にねじ込まれる彼ら。政権与党でありながら、これ程人柄を無視し、無能さを晒す人材不足の状況にあるのは極めて驚くべき状態と言えた。
彼らは国際社会から見ると国の代表である。しかしそんな立場の政府高官がこれじゃ、舐められても仕方ない。
こんな状況 故、国の裏方ながら舵取りを実質的に取り仕切る党最高顧問の相生 太郎議員は頭を悩ませていた。
失われた三十年以降、ジリ貧傾向の国力低下現象。これらは全て無能な官僚に言いなりのロボット議員である彼らが打ち出す政策が、悉く裏目に出ているからである。
官僚が進言する助言は全てお役所仕事であり、国民の実態や切なる願いを聞き届けようなどとは毛ほども頭の中に無い。
それだけならまだしも、彼ら問題議員たちはそんな失策をも上回る重大な失点を重ね続ける。
そう、彼らの売国行為と人格を疑う下衆な行状は看過できないレベルにあった。
時を同じくして、隣国の某中 国の対日工作は日増しに激しさを増し、このままでは亡国まっしぐらの状況に焦りがマックスになっていた。
そんなタイミングでアメリカを中心とする国際社会で新たな動きがあった。
急速に台頭する某中国。その傍若無人な振舞いと、数年前ウク〇イナ侵略戦争を仕掛けたロ〇アとの軍事拡張路線を構築したことにに焦りを感じた西側諸国。何としても彼らに負けるわけにはいかない。その対抗手段が『ニューフリーメーソンZ会』設立である。
そして最強システム『超絶AI. HALO君』を完成した。
彼らの任務を達成するため、日本では既に数万人のエージェントが各所に配属され、はや半年。
友里恵と蓮が岩谷 毅の議員事務所に国選スタッフとして配属されてから、数々の攻防戦を繰り広げてきた。
岩谷議員は粘着質で暗い。あの日の友里恵から受けたシバキを未だに根に持ち、自分が悪い癖に【臥薪嘗胆】と恨み続けている。
しかし何度嫌がらせやセクハラを仕掛けても、その都度跳ね返されてしまう。
友里恵も蓮も、もう昔の一般人ではない。
他のエージェントもそうだが、彼らの能力は飛躍的に伸びているのだ。
人によってその向上の幅は違うが、例えば知能指数が105だった場合、チップを埋め込まれて『超絶AI. HALO君』との交信を重ねると脳内に電子的な刺激が駆け回り、細胞を活性化させ見違えるほどの変化を示す。たった一年半で指数が145にまで向上するとの事例もアメリカシリコンバレーの国際AI研究所(超絶AI. HALO君を製造した拠点)に報告が上がっている。他にも知能指数145の被検者が185にアップするなど、驚異的な能力向上が見られた者も。
特に友里恵と蓮はカップルエージェントとして特殊な立場にいた関係上、お互い切磋琢磨するという環境のせいか、二人とも信じられない伸びが見られた。
二人とも元の知能指数は、平均的日本人のそれである指数105であった。至極平均的であり凡庸なカップルに過ぎなかったが、チップ埋め込みから今までの間に何と185、元々頭の良い優等生の持つポテンシャルと同等の能力をゲットしていたのである。
それはひとえに友里恵の『超絶AI. HALO君』の矛盾を突くという困った悪知恵を駆使したせいでもあるが。
このカップルの成功事例(あくまで能力アップと言う意味。『超絶AI. HALO君』をいじめ倒したと言う意味ではない)は世界中の『ニューフリーメーソンZ会』各支部にトピックとして共有。その後新たなエージェントを募るときはこの事例に倣い、カップルを大幅に増やし始めているという副産物も生まれている。
さて執念深い岩谷 毅議員はあの日以来様々なトラップを友里恵に仕掛けた。だが、何故か悉くかわされてしまう。
それもそのはず、友里恵と蓮は、知能指数が異常に高い天才の域にいる超人と化している。
特に『超絶AI. HALO君』との交信で、一番大きく能力を伸ばした領域が危険予知。もうその領域は『予測』の段階から『予知』に近いレベルになっているのだ。
だから岩谷議員が今何を考え何を企んでいるか、全部お見通しである。
相次ぐ失敗で段々イラついてくる岩谷議員。
我慢がならず、つい友里恵と事務所で二人きりになった時に、彼女に当たり散らしてしまった。
「君~ぃ!君は何故いつも私の仕事の邪魔ばかりするのかね?」
「何の事でしょう?私がいつ先生の仕事の邪魔をしたのですか?」
「質問を質問で返さないでくれたまえ!見てみろ、私が取り掛かった仕事が何一つ通らず、こんなに滞っているじゃないか!全部私の指示を無視した君のせいだろ?お陰で一歩も前に進んでいないし。このままじゃ私の議員としての実績はゼロで終わってしまう。違うか?そんな訳で君には責任を取ってもら。」
「責任?私は私の仕事を全うしています。責任を問われる謂れは無いと存じますが。」
「イチイチ口答えをしないでくれ!悪いのは全部君のせいなんだよ。」
「何と理不尽な!それで?その責任の取り方とは何でしょう?」
「今日の夜、私はある重要人物との会食がある。ついては君にも同行してもらい、会談がスムーズに進むよう、アシストして欲しい。分かったかね?」
「今日の会食の件ですね?その件でしたら、つい先ほど首相官邸からキャンセルするという連絡が入りました。」
「キャンセルするゥ?どういう事だ?私は聞いてないぞ?大体なぜ首相官邸からワザワザ君にキャンセルの連絡があった?これは私と彼だけの秘密会談なのに。首相サイドには関係ないし、どうして今夜の会談のことを知っているんだ?」
「先生の予定はすべて首相官邸の内調が調査済みです。だから高町首相がその会談は国家のために好ましくないと判断されたなら、直接お相手にキャンセルの通知がいくようになっているようです。」
「何と勝手な!」
「『勝手な振舞いをされているのは岩谷先生の方です。』と高町首相がお怒りになっておられました。
それから今までの先生のやってこられた事は、私どもに対するハラスメントも含めてすべて承知しておられます。『今度やったらシバクぞ!』とも仰っておられました。」
「君に対するハラスメントって何だ?私がいつ君にハラスメントをした?」
「私が初登頂した日のこと、もうお忘れですか?それ以降も言葉の暴力など、私に対し様々なハラスメント行為をなさってきたではありませんか!私はそれらをすべて記録しております。お見せしましょうか?」
「何を馬鹿なことを!私は何もしていないし、何も悪くないぞ!ええい!忌々しい!!」
余程頭に血が登り逆上したのだろう。そういって右手を上げ、ビンタを張ろうとする体で襲いかかってきた。
とっさに身をかわし体制を立て直すと、友里恵必殺「真空飛び膝蹴り」を見舞わす。
モロに顔面にヒットし、岩谷議員は顔から鼻血を出した。
そのタイミングで蓮たち、他のスタッフが事務所のドアを開け入ってくる。
そして女性事務員のひとりが岩谷議員の鼻血を出した顔に驚き、
「先生!その顔、どうなさったのですか?」
「皆よく来てくれた。見てくれ、彼女に回し蹴りを食らわされてこの通りだ。彼女が僕に暴力を振るってきたのだよ。君!忘れるなよ!必ず訴えてやる!」
しかし冷静な友里恵は
「どうぞ訴えてください!この状況は誰が見たって悪いのは先生です。」
そこで事情を察した蓮が援護射撃をかます。
「私が見るに、私たちが入ってくるまでここは先生と竹波(友里恵)君の二人だけでしたね。この事務所は男性である先生と、女性の竹波君の二人だけ。先生の日頃セクハラ行為と合わせて考えると、さっきここで何が起きていたのか明白です。先生、先生は竹波君に何かしようとしましたね?それは犯罪行為ではありませんか?」
いっきに形勢が危うくなってきた岩谷議員は焦りだす。
「僕は何もしてない!な、そうだろ?君!何か言いたまえ!」
しかし気づけば友里恵の目には涙が。無言で誰が悪いのか指示していた。
「このことは官邸にも伝わるでしょう。先生、とんでもない事をしでかしてしまいましたね。」
そう言って蓮以下全てのスタッフに見放された孤立無援な哀れな岩谷議員。
後日、官邸の誰かのリークでマスコミ各社の知れる事となった。
ただ、反高町総理のマスコミ各社は自分たちのお仲間(同じ穴の狢)である岩谷議員を堕としこむような報道はできない。
都合の悪い案件にはダンマリを決め込む。
しかし、スキャンダル系ゲス週刊誌と、下世話な三面記事大好きなスポーツ誌が有る事ない事地味に報道。
それを見たネット民がこぞってSNSや暴露系YOUTUBEに事の詳細をUPした。
世間は岩谷議員の行為に呆れ、これを許さず、議員周辺は大いに炎上する。
本人はたとえ議員辞職しなくても、次の選挙では落選確実との風評が広がった。
果たして今回に一件、偶然の産物だったのか?それとも友里恵たちの陰謀?
誰がマスコミにリークした?内調?首相?それとも『超絶AI. HALO君』?
すべては闇の中に・・・・。
つづく




