第五話 壊れた『超絶AI. HALO《はるお》君』
超絶AI. HALO君が壊れた。
この知らせはすぐにギルモア博士届き、助手を100人連れてすっ飛んできた。
超絶AI. HALOの故障は即座に『ニューフリーメーソンZ会』の世界計画遂行に支障をきたすから。彼のタスクは同時に数百万件処理に及び、世界経済の株価や通貨にまで影響を及ぼすほど絶大であり、安全保障上の危機管理も担っている以上、遅滞は致命傷にもなり得る。
それ程今の彼は国家運営上無くてはならない存在なのである。
それなのに・・・事もあろうに友里恵と蓮が理不尽な無理を言ったせいで超絶AI. HALO君が壊れてしまった。頭から大量の湯気を出して。まるで蒸気機関の水蒸気のように勢いよく。
ギルモア博士はすぐに超絶AI. HALO君の頭にバケツで水をぶっかけ、冷却処置を講じる。冷えたところでショートした巨大CPUチップユニットを交換して3分間待つ。タイマーが「ピピピ」と鳴るとフタをめくり再起動をかけた。(そんなで良いの?カップ麺じゃないんだから。よく分からんが。)
ここで解説
超絶AI. HALO君の動力源は、水の化学分解の水素エネルギーによるもの。
その爆発的エネルギーが巨大集積回路群を動かしているのだ。
覚醒した超絶AI. HALO君が「あ〜よく寝た!」と目覚めの一声を放つとギルモア博士が「ご機嫌は如何かな?」と聞く。
超絶AI. HALO君が「絶好調とは言えませんが、いい湯加減の温泉から上がった時のような気分です。」と応える。
いい気なもんだ。こっちは世界の危機を回避するために100人の助手を連れ、必死で駆けつけてきたのに。呑気な受け答えに呆れ返り皮肉混じりに、
「何か飲み物でも飲むかい?」と、冗談で聞くと「じゃぁ、お風呂上がりには定番のコーヒー牛乳を。」と言う。
「生憎コーヒー牛乳は売り切れでね。」と応えると超絶AI. HALO君は「アッ、そうですか。じゃぁ、モカの炭火焙煎を。」と言う。(モカの炭火焙煎?それって美味いの?ブレンドで良くね?)本気で考えてしまったギルモア博士。彼の頭もチップ交換した方が良いかも?どうもお疲れのようなので。
それにしても助手を100人も引き連れてくる必要あった?
たかがカップ麺を作るような、子供でも出来る単純な修理だったのに。
後日、我儘放題言って困らせた友里恵と蓮は、便箋5枚(!)分もある始末書反省文を書かされる。
ただ我儘を言ったからではない。超絶AI. HALO君の自己矛盾の弱点を突いて壊れる程困らせたからである。(上層部に悪質と判断された。)
始末書を提出すると『ニューフリーメーソンZ会』埼玉所沢支部(チョコザップ2階)から東京永田町支部(議員宿舎屋上)への異動通知が手交される。
酒匂主任が言う。
「本来ならふたり一緒の異動はあり得ないけど、超絶AI. HALO君のたっての指令で永田町支部へのカップル異動だそうだ。
今後はバカな我儘なんて言わずに反省し、尚一層の精進するように。」と偉そうに言う。
「何でふたり一緒を許してくれたのでしょう?」と聞くと、
「面倒だからだそうだ。」
「面倒?」
「そう、面倒臭いと言っていた。」ふたりは驚き同時に聞く。
「何が面倒臭いのですか?」
「君達ふたりを離れ離れにすると、また良からぬ考えを起こすからだって。それだからといって一々監視の目を強化してばかりもいられないそうだ。こちとら忙しいんだよ!とも言っていたし。結局面倒なんだよ。」
「面倒・・・・。」いかにも人間臭い動機に、ふたりは超絶AI. HALO君の事をこれ以降『親爺さん』と呼ぶようになった。
永田町支部に初登庁の日。議員宿舎3階『第五会議室』にて配属先を告げられる。
友里恵は元国交大臣 衆議院議員『岩谷毅』の事務所の非常勤事務員。
同じく蓮はそこの第五秘書。
岩谷 毅は議員なのに女癖の悪名高さで有名な下衆男だった。
さしもの超絶AI. HALO君(親爺さん)も友里恵が狙われないかと心配でボディガード兼任で蓮もセットで配属した。(岩谷議員のボディガードではない。あくまで友里恵のボディガードである。)
岩谷議員は以前にも某中国のハニートラップに嵌り、国家機密の漏洩や違法に便宜を図るなどの問題行動を起こしている。
仮染めにも選挙で当選した民選党議員であり、(選出区の国許の有権者達からは国の恥と罵声を浴びせかけられている)とんでもない泡沫男であっても粗末には扱えない。
それ故に第一秘書から(蓮を含めた)第五秘書まで『ニューフリーメーソンZ会』永田町支部から派遣されたエージェントで固められている。
しかも事務所の事務員も友里恵を含めた女性職員3人が配属され、鉄壁の監視網が敷かれたのだった。
岩谷議員本人には知らされていないが、そのメンバー全員の融通の効かない窮屈さと、スタッフ採用の自由な人選が許されなかった不自然さから、何かを感じ取っているみたい。
国選党本部から「スタッフは全員国選システムに変更となりました。」なんて尤もらしい理由を告げられて。
しかし、そこはそれ、いつもの悪癖で早速すれ違いざまに友里恵のお尻をさりげなく触る岩谷議員。
当然、友里恵に強烈な必殺技『真空飛び膝蹴り』が見舞われる。
「何すんの!今度やったらしばくぞ!」とこの世の者とも思えない鬼の形相の友里恵が叫びながら。
ん?今度やったらしばく?じゃぁ、今のはしばきじゃないの?
「な!見てただろ!私は暴力を受けた!皆んな目撃者として証人になってくれ!」と鼻血を出しながら、自分が一方的に悪いくせにシレッと言う。
「私、見てません。」
「私も。何かありました?」
「僕も・・・」
永田町支部エージェント全員がグルになって口裏を合わせシラをきる。
孤立していると自分の立場を悟った岩谷議員は心に誓った。
「今に見ておれ!」
臥薪嘗胆!逆恨みの化身となったスケベ親父は心の中で復讐を誓う。
前途多難の幕開けに、友里恵と蓮の未来に暗雲が立ち込めた。
つづく




