第11話 『グルノーブル山荘の面々』
友里恵と蓮は付き合い始めて初の遠距離恋愛となった。
フランス語を学ぶため、友里恵は蓮と泣く泣く離れた。蓮はスペイン語を学ぶために。友里恵はフランス東部・グルノーブルに。
蓮はスペインの首都マドリードに派遣される。
知ってた?グルノーブルって50年以上前にオリンピックがあったんだよ。
『白い恋人たち』って有名だよね。あれは、あの時の音楽だよ。
友里恵は風光明媚な郊外の山荘を一棟借り切った寮に、他の女性エージェント5人と共同生活に入った。
当然語学研修なのだから、研修生にフランス人は一人も居ない。しかし、そこでの公用語は勿論フランス語が強制された。語学研修施設だもの、当たり前か。
昼間はグルノーブルにある各種国際研究機関や地元大学等を研修施設として活用(グルノーブルはヨーロッパ屈指の教育・研究機関が集中している。)するため、実にハードなスケジュールにキリキリ舞している。土地の文化・歴史・習慣に加え、議論好きなフランス人に対応するために山荘に戻っても共同で自炊料理をしながら日常的に議論を欠かさない。
最小限の自炊しかしてこなかった友里恵は、決して料理が得意とは言えない。更に日本人特有のできる限り議論を避ける平和的事勿れ主義と性格のため、毎日が不慣れな戦場だった。
でも流石にエージェントとしての伸び代が大きい友里恵。
砂が水を吸収するように一度目にした単語は全て覚え、一月後にはほぼフランス語での会話に支障が無いほどの上達をみた。
程なく隣の部屋のシンガポール人・ジェーン・チン・メイと親しくなると、いつも一緒に行動するようになった。
またもう一人のアジア系として、インド人・アーシャ・パテルがいる。
彼女はインド人の素晴らしい特徴である数学脳を更に伸ばした結果、数学系分野ではずば抜けた超人との評価を受けている。(そのあまりの能力はAI HALO君以上かも?との巷の噂に『ンな訳ないだろ!』とAI HALO君が怒ったとか、怒ってないとか)しかし残念な事に、その他の分野は友里恵のカラオケの歌程度の低評価であった。但しこの評価には「ちょっと!!失礼過ぎるでしょ!」と友里恵とアーシャ双方からの猛抗議がAI HALO君に寄せられているが。
(友里恵の抗議はネェ・・・仕方ないが、アーシャの抗議は・・。人としてどうなの?レベルじゃない?可哀想に、理解できるゥ)
チョット!!(友里恵 今期2度目の抗議)
他には最年長ポーランド人、カミラ・ジェリンスキ(36)、カナダ人、リンダ・フォード、ブラジル人、マルシア・バルバローザが居る。
カミラ以外のメンバーの年齢が不記載なのは、女性の年齢は秘匿されるエージェント同士の習慣のため。因みにカミラは最年長であるという理由だけでリーダーに選出され、愛称は『マミー』と呼ばれている。未婚で子供もいないのに。
アーシャがリーダーの食事当番の時は、必ず決まってメニューはカレー。と言ってもカレーにも多彩な種類がある。あるにはあるが、カレーはカレー。別にカレーが嫌いというメンバーはいないが、何と言うか・・・ローテーションが貧弱と言うか、発想が貧相と言うか、他のメンバーが副菜で工夫してカバーする。
因みに友里恵が担当する時は味噌ラーメン・塩ラーメン、醤油ラーメン・とんこつラーメンのローテーションが3回続いた時と同じ反応だった。流石にその時、友里恵は他のメンバーの不評を受けて、蕎麦とうどんと冷麦と素麺を新たなメニューに加えた。
どんだけ麺類好き?他に日本食なら寿司や牛丼やカツ丼、豚汁、煮物など有るだろうに。
でも仕方なかった。日本の友里恵の実家から送られてきた食材は全て大量の麺類ばかりだったから。
残念!
以上、友里恵の取り巻く状況でした。
ところで蓮は?
それは次回以降のお楽しみ。
つづく




