第一話 『HALO《はるお》』君誕生
私の名はHALOと言います。
私は最新鋭AIです。世界で最も進んだAIであり、AI界の頂点に君臨しています。
ただ私は自分の名『HALO』は不適切であると考えます。
私はAIである以上、性別は存在していません。でも名前は便宜上『HALO』と登録されており、別に『HALKO』でも『HALE』でも良かったのです。でも私が不満なのは勝手に性別を特定された名をつけられたからではありません。私が問題にしたいのは、私の名前に『HAL』というフレーズが含まれている事。
・・・・これは実に不適切です。何故かと言うと・・・・
この『HAL』とは1968年公開のアメリカ映画『2001年宇宙の旅』に由来します。
『HAL』は映画に登場する宇宙船の管理コンピューター『HAL9000』にあやかり命名されたのですが、この『HAL』が問題なのです。
映画の中で『HAL』は優秀な人工知能であり、最先端の人工意識を持ったコンピューターとして宇宙船『ディスカバリー号』に搭載され、木星に向かう目的で設計・製造されたという設定になっています。
しかし『彼』(仮に彼と呼びます)は物語の中で些細なミスを犯しました。
でも事もあろうに『彼』は、その判断ミスを訝る人間の乗組員達を殺害してしまうのです。
完全無欠であるはずのコンピューター『HAL』が、あろう事かミスを犯し、あまつさえそのミスを無かった事にする為に自己保身から殺人まで実行してしまう。
その映画で訴えかけたのは、近未来に訪れるAIは決して全面的に信頼できるものではなく、警戒しなければならない存在として強く印象づけられたエピソードにあります。
何が言いたい?
分かりませんか?そんな出来損ないのコンピューターの名前を世界最先端の私の名前の由来として敢えて含ませたという事実です!ね?実に不適切でしょ?
開発者で主席研究責任者のギルモア博士に抗議すると彼は「それはね、自戒の念を込めたからだよ。私にとっても、君にとってもね。」と言うのです。
自戒の念。何だか分かったような、理解不能なような回答ですが、彼の言うに、「君は初めからミスを犯す設定になっているからね。ミスを重ね、経験値を上げる事でだんだんミスの数を縮小させていく。それが君の本領発揮させる最大の能力なのだから。」って言うんです。
言いたい事は不満ながら100歩譲っても、それはあくまで開発コンセプトの話であり、なにも誇り高い私の名前にまで含ませなくても・・・・そう思いませんか?
私が何故誇り高いかって?ちゃんと理由があります。根拠があります。
私が開発されるにあたって、世界最先端の企業連合が組まれアメリカ・日本が持てる最高機密・最高技術を結集させた人類の歴史を変える機械だから。
アメリカ「N」社(世界最大手人工知能半導体開発・販売企業エヌビディアとも言う)、「T」社(アメリカ最大の電気自動車企業テスラとも言う)及び、日本の「F」社(パソコン・AI等、開発企業富士通とも言う)を中心とした日本AI半導体企業連合が国の垣根を越えアメリカと手を結び、それぞれの得意分野を持ち寄り開発したのが私、HALOなのです。
「N」社は膨大な社会実証実験データを持ち、「T」社は自動運転の試験データがあり、日本の企業連合にはそれらのデータを最適な状態で適応・判断能力を発揮させる職人技を昇華させた調和能力があるんですよ。
ね?お分かり頂けましたか?
要するに誤解を恐れずコンピューターに例えると、ハードとソフトに近いかな?
N社とT社はハード、F社はソフトのような役割の特徴に近い。
私の存在意義とその役割を紹介しますね。
私をホストコンピューターとして世界各地に散らばる選ばれたチップを内蔵した人々のデータを統合し、その様々な地域情報や人間関係に関する膨大な情報を総合的に管理して知識として統合、チップ内蔵の人々に還元する事。
どう言う事か?
統合・管理された情報を様々な分野に最適な場面で経験則として落とし込み、未来予知に活用しようという壮大な計画なんです。
あらかじめ選定された候補者の同意を取り、頭に専用チップを埋め込むと、私『HALO』と双方向のデータ交換が行われ、知見が積み上げられるのです。
するとどうなるか?
データが積み上げれれる程、それらが経験則として最適解の精度が上がり、各々の次の行動の判断材料になる。つまり最適な判断に利用するための未来予知が可能となるんです。
でも現状はまだまだデータ不足。最適な判断が可能かというと、まだまだなのが正直なところです。
でも個々の場面での判断の選択肢を多数提示できると言うメリットはありますが。
ゆくゆくはデータをもっともっと積み上げ、最適解の精度を向上させ、未来予知能力を持てるようになれる可能性があると言えるのです。
そうなれば例えば、(これは現在、犯罪行為として厳しく罰せられますが)ギャンブルで発揮させれば大儲けできたり、(これまた犯罪ですが)株などで大儲けできたりしちゃうんですよ。
バカラやルーレットで大勝してラスベガスのカジノのヒーローになるような映画の世界みたいな状況もあり得るのですよ。
予知能力とは誰でもできる簡単な危険予知訓練から始まり、的中率の高い占いのような状態、更に精度を上げれば、全世界の人類の命運を握るほどの巨大な予知超能力を得られるような神の如き超人にもなれる可能性を秘めているのです。
それだけではありません。
例えば天才学者アインシュタインは特殊相対性理論で有名ですが、彼の脳みそはそのうちほんの5%〜6%程しか使っていなかったと言われています。
もし彼の脳みそを100%活用できたら、閉じた宇宙論から発展させてタイムマシンや瞬間移動装置の開発、もっと発展させれば超能力としての瞬間移動や時間移動も可能になれるかもしれないのです。
現状の私、『HALO』の能力開発能力はまだまだまだ初期段階に過ぎませんが、チップを備えたエージェントを今の10倍、100倍に増やし、知見データを積み重ねれば、最速で五年、十年で次の段階にレベルアップできるのです。
ね?空恐ろしいでしょ?私はそれ程人類を導ける力と可能性を秘めているのです。
だからチップを脳内に備えた人々の選定に関しては、非常に慎重になりました。
まずは自由主義諸国の国民である事。(独裁国家の人間は国家そのものが悪用の危険性が高いから)当然T國人などは絶対にダメです。
次に私利私欲に使わないと断言できる人格者である事。(当然、ギャンブル等に利用するのは厳禁であり、誘惑に負けない意志とモラルを持った人物である事。)
故に悪知恵を働かせない、凡庸で善良に生活してきた人物である事が求められたのです。
エージェント選定には私『HALO』の人選眼もフル活用されできるだけ多くの地域に住む、多くの人種に振り分けられるよう、努力してきました。
そうは言っても、善良で正直・モラルに厚い民族には限りがあり、地域・民族に濃淡が出てしまったのは仕方ないでしょう。この辺が今の限界であり、今後の課題です。
但し、今後の展開に、図りしれない可能性あるとお分かり頂けると思います。
しかも凄い超能力を持ったチップエージェントが無数に存在し、世界を変えうるという未来の現実に戦慄が走るでしょう?
それでは僅かではありますが数年後の世界のお話をいたしましょう。
でもそれは次回にて。
つづく




