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冬に奏でるその音を感じて

作者: 堆烏
掲載日:2025/12/17

学生の、吹奏楽の小さなコンサートを横目に見ました。

たった30分されど30分。寒空の下。

それでもいつも帰りを急ぐ私の足は止まったのです。


この穏やかな気持ちは何なんでしょうね。

この温もりは何なんでしょうね。

忘れてはいないはずなんです。

機関車の音を思い出す。

それは「ド」と「ラ」だけを繰り返す、そんな軽快な汽笛の音。


音楽は単純でよいのだ。

どんな技巧を凝らした音も、

どんな難しいコードを引くことも、

本質ではないと思うのだ。


その音を聞いた時、

その曲を聞いた時、

その歌詞を聞いた時、

『あなたは何を感じどう心が動かされるか』

これに私は尽きると思う。

結果が全てではないこの世界で

心が動けばそれは全てだとも思えるのが演奏かもしれない。


流行り廃りの渦の中、

目まぐるしくも激しい電子の波で

泳ぐことすら諦めたくなる私たちだ。


音なんてものはありふれて、

耳を澄ますこともしやしない。

むしろ音を聞くために耳を防ぐ。

聞くのではなく聞き流す。

それだっていい。悪いとは思っちゃいない。

それでもたまに、玉石混交の海の中で

心臓の高鳴りを耳にするのだ。


あの幼きリコーダーの音色のように

胸を打つ蒲公英が一面に咲き誇るように

沈んだ情動を奈落へ誘う耽美歌のように


それを忘れなければいい。

忘れた時に思い出せばいい。


冬空に灯る若き熱に心温まりながら

私はそう、思うのだ。











好きなバンドは無いけど好きな曲はある

そんな経験ない?俺はある。

推しは居ない。だからこそ何もかもをも楽しめる。そんなのだっていいはずだ。

音楽の楽しみ方なんて千差万別。好きも嫌いもあっていい。俺はライヴのフェスが特に好きで、ワンマンライブは滅多に行かないってだけ。

でも、音楽を楽しまないのはあっちゃあいけないと思うわけでさ。

楽しまなくてもいいけど救いであってほしいわけでさ。

昔っから音楽に救われてきた俺にとっちゃ、辛い時も寂しい時も悲しい時も、支えてくれたのは音楽だったから。


沈黙だって音楽だ。瞑想だって音楽だ。

違うって言うなら騙されたと思って3分44秒くらい黙って耳を澄まして欲しい。

⋯⋯騙されたな?ホントは4分33秒なんだ。やり直してくれ。

冗談のようで冗談じゃねえさ。

きっと聞き逃してた何かに気づける。傍にあって当たり前の何かに。


目立てばいいってもんじゃない。

音が大きけりゃいいってもんでもない。

地味で静かでそれでもなお、ライヴフェスにだって負けねぇすげえもんは生み出せる。

すげえもんを俺等は感じ取れる。


だからよ、俺は音楽が大好きだ。

クリスマスにゃまだちょっと早いが聞いていくか?あぁ、会場はすぐそこでさ。

宵闇前の、可愛らしい小さなコンサートをよ。











寒空には誰も目を向けない。空を見上げるなんて行為、誰も思いつきやしないから。皆表情筋を忘れたかのようにブルーなライトを放つモニタに俯く。

足早に道をゆく人。イヤホンで断絶。

きっと落ち葉も枯れ木も気づかない。

秋は終わったんだよ。でも、その名残もちゃんとあるんだよ。

みんな気づかないだけ。気づこうとしないだけ。気づく余裕すら、ないだけ。


鈴虫の音色。風が澄んだ空気を裂く響き。雑踏のダンス。私はそれすら心地よい。

でもきっと、私はきっと。

聞くだけじゃなくて歌いたい。

全身でその情動を表現したい。


音の素晴らしさは奏でる私が一番知ってる。

あなたに届くよりも早く、ずっと深く、誰よりも私こそが分かってる。

だからこそ叫ぶのだ。のどを通って張り裂けんばかりに。響くのだ。思いが、感情が、魂が。

たとえそれが、か細き声でも

たとえそれが、静寂に似合うバラードでも

認められなくたっていい。だって私が一番私を認めているから。

だからこそ届くといいなと思うのだ。私以外にも、伝わるといいなと願うのだ。


きっとあなたもそうなのよね。

そんなに楽しそうに体を揺らして。

手足も寒いのに屋外で。

でもだからこそ、みんなに伝わっている。

道行く人が立ち止まる。

イヤホンから断絶世界から引き戻される。






彼女は奏でる。冬空に灯る若き熱をその身に宿しながら。ゆったりと。


彼女は揺れる。演奏が楽しいと言わんばかりに、宵闇前のそのコンサートで。音に心を込めながら。


彼女は届ける。そのフルートの音色を。楽しそうに。立ち止まってくれる人々に伝わると願うように。






これはとある冬夜のとある広場の

小さな優しい演奏会。

きっとあなたにも聞こえるはず。

立ち止まって見てほしい。空をたまには見上げてほしい。

忙しくても。無意味だと思っても。時間がもったいないと思っても。

そうして生まれた心の隙間に、きっと温もりが届くから。

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