天使
ヒロたちは地下4階の地図を全て埋めた。残っているのはボスのいる大扉だけだ。
「しっかし意地の悪いフロアだったぜ。通路にはたくさんの罠、敵は状態異常持ちとはな」
キルシュレドがボヤく。ユウが頷く。
「これからはこういう罠や状態異常もありますよって紹介のような物ですね」
「妙なとこで親切ね」
「で、ボスはどうするんだ? ヒロ」
ヒロは珍しく熟考していた。
「うーむ、リーファもアイも魔法を全部覚えたが・・クラスチェンジはここのボスを倒してからにするか。素早さが下がるのは痛い。攻撃魔法をなるべく早く打って欲しいからな」
「そうね」
「分かりました」
ヒロは手をパシンと打ち鳴らす。
「よし。基本戦法はいつも通りだ。リーファは敵が何匹だろうと最大攻撃魔法を使う。アイも最初だけ攻撃魔法を使ってくれ。あとは回復優先だ。前衛はもちろん後衛に攻撃が行くのを防ぐ。キルシュは弱った敵を優先で狙う」
「細かい指示を出しますからよく聞いて下さいね」
「敵が多いようだったら俺とユウももしかしたら魔法を使うかも知れない。準備はいいか?」
「ああ、行こう」
「おう!」
「ま、あの魔法があれば大丈夫だろ」
ヒロが大扉を開けると、中にいたのは人の姿をした4つの影だった。
背中には背丈ほどの巨大な羽があり、それがゆっくりと羽ばたいて宙に浮いている。人影の頭上には光輪が浮かんでいた。
人影は侵入者を見て警戒態勢を取る。盾と槍を構え、後ろの1体をかばうように3体が立ちはだかった。
「アークエンジェルか! 魔法が抵抗されるかも知れないが、予定通り行くぞ!」
キルシュレドが狼狽えた。
「お、おい! 何だか倒しちゃいけなさそうな姿をしてるぞ! いいのか!」
「見た目に惑わされないで下さい!」
防御に特化したユウがまず敵に肉薄し、ユウの後ろからヒロとジェッツがそれぞれの相手に飛び掛かる。しかしアークエンジェルは盾と槍に加え、兜や鎧まで着込んで、防御態勢を取っている。物理攻撃で倒すのは骨が折れそうだった。
「神の怒り」
アイの攻撃魔法が発動した。アークエンジェルたちを光柱が包む。クレリック系の最高位範囲攻撃魔法だが、魔術師魔法と比べれば威力は心許ない。アークエンジェルたちはダメージは受けたが弱ることもない。抵抗した者もいるようだ。
「核熱破!」
続いてリーファの魔術師最高位魔法が発動する。部屋の中に禁忌の核爆発が巻き起こり、アークエンジェルたちを包む。今までこの魔法に耐えられる魔物はほとんどいなかった。しかしアークエンジェルたちは一体も倒れない。
「二体抵抗されたわ!」
そこにアークエンジェルの魔法が発動した。
「範囲大治癒」
「なに!」
ヒロが目を剥く。アークエンジェル達の傷は全て回復されてしまった。
今度は後ろに控えたアークエンジェルの魔法が完成する。アイが使ったのと同じ、神の怒りだ。
「ぐっ!」
ヒロたちのパーティも、全員がダメージを受ける。前衛には大したことないダメージだが、体力の低い後衛はもう一発くらうと危険だろう。ヒロがチラリとアイを見ると、既に範囲回復魔法を唱え始めていた。
「作戦変更だ! 集中攻撃で一体ずつ倒す! ジェッツは自己強化、キルシュはアンブッシュ、リーファは強化魔法を使ってくれ! ユウ、しばらく頼む!」
「分かった。不動の盾!」
ユウはアークエンジェルたちの前に一人で立ちはだかり、全てのターゲットを自分一人に集める。
「流水」「バトルオーラ」「影隠れ」「加速」
その間にヒロ、ジェッツ、キルシュレドは次の攻撃の威力を高めるスキルを使い、リーファはヒロに強化魔法を使う。
「範囲大治癒」
アイの範囲回復魔法がヒロたちを癒した。
「行くぞ!」
「おっしゃあ!」
ヒロとジェッツが風を巻いてアークエンジェルに襲い掛かる。
ヒロの強烈な斬撃と切り返しを受け止めきれず、アークエンジェルは盾を取り落として体勢を崩した。
「鎧通し!」
ジェッツの正拳がアークエンジェルの鳩尾に突き刺さった。その衝撃波は金属の鎧を抜けて内部に痛烈なダメージを与える。アークエンジェルが体をくの字に折り曲げて悶絶した。そこへ
「いただきだ!」
キルシュレドがアークエンジェルの背後から突然現れ、首筋に短剣で狙いすました致命の一撃を叩きこんだ。
首筋から緑色の血の噴水を上げ、アークエンジェルは前のめりに倒れた。
だが3人がかりで1人を倒している間、ユウは一人で残り3体の攻撃を受けていた。防御に特化しているとはいえ、さすがに捌き切れる数ではない。腕と股を槍で刺され、何度も盾で攻撃を受けとめた左手に力が入らない。
「ユウ、大丈夫か!」
「うん、死ななきゃ安いよ」
「全癒」
アイの回復魔法が発動し、ユウを癒す。
「よし、残りも一匹ずつ倒すぞ!」
ヒロたちはアークエンジェルを片付けた。皆疲労困憊で倒れ込み、しばらく呼吸を整える。
「疲れたぜ!」
「ふぅ、何とかなったね」
「まぁ全体魔法対策はしてくるか。数が少なくて助かったな」
「でも本当に倒してよかったの? なんだか天の使いみたいな恰好だったけど」
リーファの問いに、アイとユウが答えた。
「ただの魔物の擬態です」
「今まで倒してきた魔物だって、ある宗教では信仰の対象だったりしますからね。宗教戦争で負けた神が魔物や悪魔に貶められる事もあります」
「ひでぇ話だな」
ジェッツが肩をすくめた。
「じゃあキルシュ、頼む」
「よっし、お宝とご対面だ!」
キルシュレドは立ち上がって腕まくりすると、鼻歌まじりに金色に輝く宝箱へと向かった。
ユウ 騎士 レベル9
人間 男性 18歳
HP:110
STR:13
INT:10
PIE:8
VIT:14
DEX:11
LUK:11
装備:真っ二つの剣、支えの盾、極上の鎧、鉄兜、ガントレット、鋼鉄のレギンス、旅人のマント、守りの指輪
僧侶呪文 4/2/1/0/0/0/0




