第二パーティ
オリジンの前衛3人は、条件を満たしたためクラスチェンジすることにした。
当初の予定通りヒロは侍に、ユウは騎士に、ジェッツは修行者になる。
だがクラスチェンジするとレベルは1に、ステータスも素の状態に戻ってしまう。現在探索中の地下4階の魔物を相手にするのは無謀といえた。
「悪いが今日は浅い層で少しレベル上げさせてくれ」
「分かったわ」
オリジンの一行がダンジョン入口へ向かうと、待ち合わせ中の他の冒険者の視線が集まる。
「なんだあの恰好は・・?」
「噂の上級職ってやつじゃないか? 俺は詳しいんだ」
「見て、あの重装備。まるで動く要塞だわ」
一行は野次馬の声を聞き流してダンジョンへ入った。
「1階で1度戦って、問題なさそうなら2階へ行こうか。1階は混むからな」
ボス部屋へ向かう途中、通路の奥から走ってきた人影がある。ヒロが鋭く誰何の声を掛ける。
「怪我はないか!」
「たっ、助けてくれ!」
どうやら他の冒険者のようだ。だが持っている武器はただの木の棒だし、身に着けている防具は貧相だ。その背後からは緑肌の小鬼、ゴブリンが3匹追いかけてくるのが見える。
「行くぞ!」
ヒロの声で前衛の3人がゴブリンに向かって駆け出す。レベル1に戻ったとはいえ、戦闘の経験は失われていない。それぞれ1体ずつのゴブリンをあっさりと屠り、アイの回復魔法を受けている男性の元へ戻る。
「何があったんだ? アンタ一人だけか?」
「仲間が毒を受けちまって動けないんだ! 俺一人で助けを呼びに行こうとしたらさっきの魔物と鉢合っちまって・・お願いだ! 仲間も助けてやってくれ!」
男は必死にヒロにすがる。
「分かった、案内してくれ。すまんみんな、ちょっと寄り道する」
「ああいいぜ」
「しょうがねぇな」
男が案内した先、通路の行き止まりで何人かがしゃがみこんでいるのが見える。そのうち一人が立ち上がって手を振った。
「おお、助けを呼んでくれたのか! こっちです。彼を直してやってくれませんか!」
真っ青な顔で座り込んで体を震わせているのは、まだ顔にあどけなさの残る男性だった。キルシュレドに似た身軽そうな装備をしている。傍らには僧衣の女性が涙ながらに寄り添っている。
「あん? お前たしか・・」
「キルシュの兄貴! 来てくれたんですね!」
嬉しそうな声を上げた男性にアイが駆け寄り、回復魔法を使う。
「解毒を使います。範囲治癒を使います」
アイの杖が連続で光を放ち、男性と仲間たちを包む。男性はたちまち生気を取り戻して立ち上がった。
「おお、あっという間に治ったぜ!」
「俺たちまで治してくれるなんて!」
「ふぅ、助かった・・」
「ありがとう、ありがとう!」
喜びに湧く冒険者たち。僧衣の女性は尊敬の目でアイを見ている。リーダーと思しき男性がヒロの手を取り礼を言った。
「本当に助りました! ありがとうございます! 私はこのパーティ、"シャインエッジ"のリーダー役のカミーユです。もしやあなた方はオリジンの皆さんでは?」
ヒロはそっけなく頷く。
「そうだ。ところで怪我をしてたのはキルシュの知り合いか?」
キルシュレドが頷く。
「あ、ああ。酒場で何度か顔を見かけたな。ミゼットだったか?」
「はい! 兄貴に名前を憶えてもらえてたなんて感激っす!」
軽装の男性が笑顔になる。
「キルシュの酒場の自慢話の取り巻きだな」
「余計な事を言うんじゃねえよ」
ジェッツの言葉にキルシュレドが突っ込む。リーファが苦笑した。
「そんな事じゃないかと思ったわ」
「宝箱の毒針をくらって、解毒魔法はまだ使えず、毒消しもない。回復が尽きて動けなくなったってところか」
「そこまで分かるんですか? いや、私の判断ミスです。面目ありません」
カミーユが項垂れた。ユウがヒロに耳打ちする。
「ヒロ、彼らならちょうどいいんじゃない?」
「ああ、俺もそう思った」
ヒロが腕を組み、相手のパーティを観察する。人数は6人。クレリックとトレジャーハンター、魔術師もいる。仲もいいようだ。
「よかったら今日は俺たちと一緒に行動しないか? ダンジョン探索の基礎を教えたい」
「えっ! オリジンの皆さんから指導を頂けるんですか?」
相手のリーダーが驚く。リーファも驚いた。
「ちょ、ちょっとヒロ。突然どうしたの? 今までそんな事したことないじゃない」
ヒロが仲間たちを見回す。
「みんな、聞いてくれ。俺たちだってダンジョンの深部でこういう目に合う可能性はある。前にも分断された事があっただろう。そんな時に救出に来れるパーティというのが必要なんだ。俺たちだけ突出していたら誰も助けに来れない」
ヒロが相手のパーティに向き直る。
「いわばバディだ。カミーユ、君達のパーティにそれになって欲しい。使われているようで嫌だってんなら断って構わない。だがなってくれると言うなら、君達を鍛えよう。みんな、それでいいか?」
オリジンの皆が頷く。
「同意します」
「いいんじゃねぇか?」
「言われてみればそうね」
「まぁ・・必要になるか。しかしなんでこいつらなんだ? もっとレベルの高いパーティもいるだろ」
「俺らと構成が同じだから、指導がしやすい。それに中途半端な知識があると逆にやっかいだ。キルシュの知り合いもいるようだしな」
相手のパーティの話合いは一瞬で終わった。皆がそろって頭を下げる。
「よろしくお願いします!」
ヒロ 侍 レベル1
人間 男性 18歳
HP:82
STR:9
INT:8
PIE:5
VIT:9
DEX:8
LUK:9
装備:フランベルジュ、武士の鎧、兜、武者の籠手、わらじ、旅人のマント、守りの指輪
魔術師呪文 4/0/0/0/0/0/0




