礼を尽くす
オリジンの一行は3階のボス部屋で拾ったカードキーを使い、1階のエレベーターに入った。
中に入ってみると意外に広く、6人が充分に出入りできる大きさだ。
壁際には1と、4~9までの数字が書かれたボタンが並んでいる。
「おお、9階まで行けるのか!」
「それだとやっぱり、10階が最下層の可能性が高いね」
ヒロとユウの会話を聞いて、キルシュレドが俄然興味を示した。
「9階だって? 一気に9階まで行けるのか? 下層ほどいい財宝が出るんだろ? 行こうぜ!」
ヒロが顔を顰める。
「あのなあキルシュ、下層ほど敵が強いと言っただろう。今の俺たちが9階なんて行ったら、最初に会った敵で全滅だ」
「そ、そんなに強ぇのか?」
ジェッツが息を飲み、ユウが頷く。
「多分そうなると思います。ひとまず4階から見てみませんか?」
「だな」
ヒロが4のボタンを押す。エレベーターは唸りを上げて下降しはじめ、やがて動きが止まって扉が開いた。
「ここが4階? なんだかちょっとカビ臭いわね」
リーファが先を見通す。3階までのタイルで作られた滑らかな壁と違い、通路の壁は大きな石を積み上げたような、ゴツゴツとした物に変わっている。数メートル先はすぐ十字路になっており、その先の通路の右側に扉があるのが見える。
「うっ、これは・・」
「面倒そうだね」
ヒロとユウが顔を見合わせる。
「何かあるの?」
「行ってみれば分かる」
皆で十字路の中央に移動する。そこから見える景色は3方向は同じだ。通路の少し先に右側に扉、その先にはまた十字路がある。残り1方向だけは行き止まりで、降りてきたエレベーターの扉が見える。
「あれっ、おかしいわよ?」
「んん? どうなってる?」
「なんだこりゃ?」
リーファ、ジェッツ、キルシュレドが戸惑いの声を上げた。後ろの通路にあるはずのエレベーターの扉が、右側の通路にあるのだ。
ヒロが大きく頷いた。
「やっぱりな。回転床だ」
「回転床?」
「ああ。今立っている場所、十字路に踏み込むとランダムに向きが代わり、方向感覚を狂わせる罠だ」
「だが回った感覚なんて無かったぜ?」
「入口以外はみんな同じ景色なんて・・」
ヒロが方位磁石を取り出す。それはグルグルと回り続けて役に立たなかった。
「やれやれ、こりゃマップ作りが面倒そうだな」
とヒロはボヤきつつも何だか嬉しそうに手帳に地図を書いていく。
それを見てアイが呟いた。
「私にはルートレコーダーと方位感知、GPSが搭載されています。使用しますか?」
ユウが慌てる。
「わーっ! それは駄目だって、アイ!」
ヒロも力説する。
「自動マッピングは邪道だ! ダンジョン探索は手動マッピング! 法律で決まってるんだぞ」
「知りませんでした」
「何の話だか知らんが、こんなん普通に進んだらすぐ迷っちまうぞ。目印にコインでも置いていくか?」
キルシュレドが床にコインを弾く。コインは軽く跳ね返って床で止まった後、すぐに消えてしまった。
「なぬ?」
「壁や床に何か書いてもすぐ消えちゃうわ!」
「十字路を飛び越えるのは・・無理か」
「あっ、十字路は三人ずつ進めばいいんじゃない?」
「おお、それなら元いた方向は分かるな。いい案だ、リーファ」
ヒロがブンブンと首を振る。
「そういう小細工は駄目だ! ダンジョンに対して失礼だ!」
「失礼って・・何言ってるの?」
リーファがヒロに不審の目を向ける。
「大丈夫。こういうのは勘で分かるんだって」
「持続光を使います」
アイの杖から正面に強い光が発せられ、いつもよりも視界が伸びる。2つ先の十字路まで見えるようになった。
「これならちょっとはマシね」
「ちぇっ、まぁこれはギリギリセーフか?」
ヒロのボヤきを聞いてリーファが呆れる。
「何でわざわざ迷いそうな状態で進もうとするのよ。全く。ユウも止めなさいよ」
ユウが首を振る。
「いえ、こればかりはボクもヒロに賛成です」
「ダンジョンに入ったらダンジョンのルールに身を任せる。それが冒険者だ! よし、行くぞ!」
ジェッツが肩をすくめる。
「異世界人の考えは分からねぇ・・」




