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呼び出し

ガルデアのダンジョンの噂は、やがて王国の大臣の耳にまで届いた。

側近からその話を聞いた財務大臣のヒダリーシュは顔を顰める。

「なんじゃと? ダンジョン? 魔物を倒して中を探索し、財宝を持ち帰るじゃと?」

「はい。ダンジョンを探索する連中は冒険者と呼ばれています。ガルデアは一攫千金を狙った冒険者で溢れているそうです」

「それでは治安が悪くなるじゃろう?」

「いえ。冒険者は登録制になっており、問題を起こせば資格を取り消されるため、治安は悪くないそうです」

大臣が机を指でトントンと叩く。

「しかし、そんな得体の知れない物を・・ダンジョンを封鎖する訳にはいかんのか」

「ガルデアの領主からの報告では、ダンジョンができた理由が分からず、その理由究明のためにも探索は必要だということです。もしかしたら別の場所にもできるかも知れませんし」

「ふうむ・・」

大臣が髭をなでて考え込み、また否定的な意見を口にする。

「別に冒険者とやらでなくても中の探索はできるだろう。兵士を100人も送りこめばいいのではないのか?」

「ダンジョンは想像以上に深く、未だ底が知れないそうです。また迷路や罠などで分断されるため、多人数よりも6人程度でまとまって行動するのが定石とされています」

「その冒険者連中は働いておらんのじゃろう? 無職の集まりではないか」

「新しい職業、産業ともいえます。やっている事は鉱山業と余り変わりません」

「誰かが雇って給料を払っている訳ではなかろうて。財宝を見つけた者だけが儲けるなど、国として何の得にもならん」

側近が困り顔になる。

「しかし・・ガルデアの税収入はかなり増えているようなのです」

「なんじゃと?」

「冒険者向けの店が増えたこと、人が増えて売買が活発になったことなどが理由のようです。実はガルデアはそれらを計画的に行っているフシがありまして・・」

大臣が驚く。

「偶然ではないのか」

「はい。最初にダンジョンを探索して財宝を持ち帰る、冒険者という職業を定義したのは異世界人だという話です。彼は誰も見た事がないはずの魔物やダンジョンの探索方法に詳しく、冒険者を中心にした街づくりさえ最初から計画していたというのです」

「・・異世界の知識、異世界での成功例があるというわけか? じゃが儂に何の断りもなくそんな物を新しい産業、職業と認める訳にはいかんな。ガルデアの責任者とその異世界人とやらを即刻連れて参れ」

側近は深々と頭を下げる。

「畏まりました」


「という事なんですよヒロ様ぁ。どうしましょう!」

ヒロが宿に戻ると、待っていたフリージアが駆け寄ってヒロに泣きついた。ヒロがため息をつく。

「まぁそういう事態もあるんじゃないかと思ってた。面倒だが説得するしかないな。すぐ出発だ」

フリージアが驚く。

「え? 今からですか? 明日ではなくてですか?」

ヒロが力強く頷く。

「ああ。相手が驚くほど早く行動して、こちらの誠意を見せる必要がある。だが俺はお偉いさんとの会話は苦手だ。ユウ、フォローは任せたぞ」

「だと思ったよ・・」

ヒロがパーティメンバーを見渡す。

「そういう訳だからちょっと大臣のところに行ってくる。フリージア、往復でどれくらいかかる?」

「そうですね。王都までの往復と謁見で、5日くらいかと」

ヒロが舌打ちする。

「すまんなみんな。俺らが戻るまで自由にしていてくれ。それとこれを使わせてもらう事になると思う」

ヒロが懐から黄みがかった大粒の宝石を取り出した。3階のボスの宝箱から出た宝石だ。

「なっ! また持っていくのかよ!」

キルシュレドが憤慨し、リーファが宥める。

「しょうがないわよ。別にヒロが独り占めする訳じゃないし、今は全力でダンジョン探索の許可をもらうべきだわ」

「キルシュ、損して得取れだ」

ジェッツがキルシュレドの肩を叩く。前の事もあり、キルシュレドはそれ以上文句を言わなかった。

「アイ、一緒に来てくれないか?」

「分かりました」

アイが素直に頷き、リーファが驚きの声を上げる。

「えっ? アイを連れて行くの?」

「ああ。必要かもしれないからな」

「ではすぐに屋敷に戻って出発の準備を致します!」

「俺たちも準備して屋敷に行くよ」

フリージアは宿を飛び出していった。


王都へ向かう馬車の中で、ヒロがフリージアに訊ねる。

「その大臣はどんな奴なんだ?」

「今回呼び出してきたのは財務担当のヒダリーシュ大臣です。とにかく新しい事に否定的で、利点は見ず、難癖ばかりつけて却下するという事が多いんです。あんのハゲジジイ・・!」

フリージアがギリギリとハンカチを雑巾絞りする。ヒロはユウに頷いて見せた。

「なるほど、大体分かった。ユウ、プランBだ」

「はいはい」

ユウは苦笑いした。

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