兎
地下3階。ヒロが扉を開けると、広い部屋の中央にいたのは3匹のウサギだった。
見た目はごく普通のウサギだ。ヒロ達を見て不思議そうに耳を立てて振り返り、後ろ足で立ち上がって鼻をクンクンとさせる。
「あらかわいい。あれは魔物じゃないわよね?」
リーファの呑気な声とは裏腹に、ヒロとユウに緊張が走る。ユウがリーファの前に立ちはだかった。
「ボーパルバニーだ! 気を付けて!」
「守りを固めろ! リーファ、全力で魔法を使ってくれ!」
「何、どうしたの?」
ウサギが餌をねだるようにちょこちょこと、跳ねながら近づいてくる。だが急に黒い目が赤くなったかと思うと、3mも先から一気にユウに飛び掛かった。
「っ!」
しっかり身構えていたユウはウサギの飛び掛かりをタワーシールドで防ぐ。ギィン! と金属音が鳴り、兎は元の場所に着地した。他のウサギも足を踏み鳴らすような動作をしている。
「やっぱり、正確に首を狙ってきてる!」
「リーファ、早く魔法を!」
「分かったわよ、火炎嵐!」
リーファの放った火炎嵐の魔法が渦を巻き、ウサギたちを包む。炎の中で身をよじらせる姿が浮かび、悲鳴が上がる。だがその激しい炎の中から、一匹のウサギがジェッツに向けて飛び出した。
ジェッツは咄嗟に両腕でガードの姿勢を取る。
「いでっ!」
ジェッツの両腕はまるで鋭い刃物で切り裂かれたように、横一直線にパックリと割れていた。
着地したウサギをキルシュレドが冷静にボウガンで撃ち、ウサギは吹き飛ばされて倒れた。残り2体は火炎嵐が収まると、黒コゲの死体になっている。
「治癒を使います」
駆け寄ったアイがジェッツの腕に回復魔法を掛ける。傷口は一瞬で塞がった。
「ありがとよ、お嬢」
「何なの? あのウサギは」
キルシュレドの宝箱の開錠を待つ間、リーファが尋ねる。ユウが答えた。
「あれはボーパルバニーです。かわいらしい見た目とは裏腹に、一撃で人の首を跳ねる恐ろしい魔物なんです」
「ええっ!」
リーファが衝撃を受けた。ジェッツが腕を見る。
「そういやちょうど首の辺りで、横に切られたな」
「まぁクリティカルヒットはそうそう出ないが、アイもまだ蘇生魔法は使えないし、寺院もできてない。確実に逃げられる場面なら逃げるのも手だな」
「そうだね」
キルシュレドが宝箱の罠を解除しながら呟く。
「他の魔物だって危険度はそれほど変わらないんじゃねーか?」
「まぁそうだが・・やっぱり一撃死はインパクトがあるからな」
「よし、一丁上がりだ。中身は・・ちょっといい短剣みたいだな」
キルシュレドが短剣を放り投げる。ヒロがそれを受け取って眺め、背負い袋にしまいこんだ。
「魔法の短剣なら今使ってる剣よりも強い場合もある。帰りに鑑定してみるか」
キルシュレドが顔を顰めた。




