冒険者会議
「ヒロ、ちょっといいか」
ヒロが冒険者ギルドに顔を出すと、すぐにカズンから声を掛けられた。マジメな話のようだ。
専用の部屋などないため、建物の隅に呼ばれてコソコソと声を顰めて話をする。
「どうした、カズン」
「ああ。最近冒険者が増えてきて、どうしても決めなきゃならないルールがいくつかある。お前ほどダンジョンに精通してる奴はいないから、本当は全部お前の決定でもいいんだが・・勝手にルールを決めて押し付けるなって反発する奴もいるからな。表向きだけでも会議のような事をしようと思うんだ」
ヒロが凄く嫌そうな顔になる。
「会議か・・」
「俺だってやりたくねーがしょうがない。人が集まればルールは必要だ。明後日やるから必ず出席してくれよな」
会議の日。冒険者ギルドにはテーブルが四角く並べられ、そこにカズンと有力冒険者パーティの代表者たちが座った。むろんヒロもだ。
「じゃ一号議案。人型の魔物についてだ。ちょっと説明するぞ」
ヒロはテーブルに頬杖をつく。
「えーと、ダンジョンには人型の魔物も存在する。倒せば死体は消えてしまうから、魔物だと分かる。
冒険者の死体は消えないからな。だが通路でバッタリ会った場合など、魔物なのか他の冒険者パーティなのか分からない時もある。魔物かどうか見破る方法、冒険者の同士討ちを避ける上手い方法はあるか?」
ヒロが頬杖をしたまま答える。
「そういう場合は声を掛ければいい。魔物は返事をしないからな」
カズンが頷く。
「なるほど。じゃあ冒険者かどうか分からない人型の魔物と合ったときは一声掛ける。返事が無ければ倒してもいい。もし相手が冒険者だとしても返事をしないのが悪い。そういうルールでいいか?」
「ああ、いいんじゃないか」
「無言で先に襲われた場合も反撃していいだろ? その場合は人だろうが魔物だろうが関係ねぇ」
誰かが片手を上げる。
「何か冒険者同士の符丁というか、形式を決めた方がいいんじゃないか?」
その問いにヒロが提案する。
「じゃこうしよう。怪我はないかと聞く」
「なるほど。それなら相手が無事かどうかを同時に確認できるし、返事しない奴はいない。そりゃいい」
質問者が感心する。カズンが手を叩いた。
「よし、一号議案は決まりだ。冒険者か魔物か分からない相手に会ったら、怪我はないかと聞く。返事が無い、あるいは無言で先に襲われた場合は倒していい。二号議案は・・」
ヒロがうんざりした顔になる。
「まだあるのか?」
「気持ちは分かるが必要なことだ。二号議案はギルドからの要請だ。各自正式なリーダーとパーティ名を決めて、それをギルドで登録したい。異存はあるか?」
「まぁ必要だろうな」
「ええ? パーティ名なんて何も考えてないぜ。参ったな・・」
参加者たちがザワめくが、反対意見はないようだ。
「異存なしだな。よし、これも決定。三号議案。パーティをまたぐ討伐証の貸し借りは禁止にしたい。どうだ?」
ヒロはつまらなそうに腕を組んで眼を閉じた。
不機嫌そうな表情で宿に帰ったヒロを、カードゲームをしながら待っていたパーティの皆が迎える。
「ずいぶんかかったな」
「お帰り、会議はどうだった?」
ヒロがドカリと席に座る。
「時間の無駄だぜ。ったく、早く終わればダンジョンに行きたかったのに、今日はもう無理だな。悪いなみんな」
「いえ、構いません」
「しょうがねぇぜ。必要な事なんだろ?」
ヒロが肩をすくめる。
「まぁな。だが会議なんてやればやるほど内容が細かくなって、ルールを決めるほど新参が入りにくくなるだけさ」
「ずいぶん会議が嫌いみたいね」
ヒロが頷く。
「ああ。次はユウかリーファが行ってくれよ。そうだ。パーティ名を決めろって言われたんだ。みんな、案はあるか?」
「ええっ、急に言われても・・」
「すぐには浮かばねぇな」
ジェッツが首を傾げる。
「じゃあかねてから考えていた、俺のとっておきの案を発表するときが来たようだな」
ヒロが胸を張る。
「あら、どんなの?」
「ゴッドレインボーフェニックスだ!」
ユウが噴き出す。
「ゴッドレインボー・・なにそれ?」
アイが翻訳した。
「虹色の不死鳥神という意味です」
「却下」
「アホか」
「子供か?」
ヒロの意見はリーファ、キルシュレド、ジェッツに否決された。ヒロが憤慨する。
「否定するだけなら誰でもできるぜ! 自分の案を出せよ!」
「みんなが呼んでるオリジンでいいんじゃないの?」
リーファの言葉に、キルシュレド、ジェッツ、アイが頷いた。
「ああ、それでいいぜ」
「割とアリだな」
「それでいいと思います」
「4対2、決まりね」
リーファが笑顔になる。ユウが困惑する。
「ええっ? ボクはヒロの案に賛成にされてるんですか?」
ヒロは憮然とした表情だ。
「チェッ、だから会議は嫌いなんだ」




