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鑑定屋

「せっかくだから鑑定屋に寄ってみるか」

「ああ、あっちだ」

ダンジョンの探索から帰還したヒロたちは、ガルデアに新しくできたという鑑定屋に向かう。

「ここのはずだが・・」

「何か思ってたのと違うわね、本当にここで合ってるの?」

ジェッツとリーファが困惑する。店には何の看板も出ておらず、ただの民家にしか見えない。

「いや、ここで合ってるぜ」

キルシュレドが断言した。扉の隅には小さく、キルシュレドが知る闇商会のマークが刻まれていた。

「よし、行くぞ」

ヒロが緊張気味に扉を押し開ける。入ってみれば紛れもなく商店だった。カウンターには一人の女性が座り、店の壁際には冒険者から買い取ったであろう装備品が整然と並んでいる。

店主と思しき女性は頭に紫色のベールを纏い、また紫色のマスクをしているため顔は目元しか見えない。しかし黒く縁どられた切れ長の目は、女性が相当な美女である事を伺わせた。キルシュレドが思わず口笛を吹く。

女性は座ったまま深々と頭を下げたあと、にこやかに話しかける。その声は心地よく耳に響いた。

「ようこそお越し下さいました。"起源(オリジン)"の皆さん」

「オリジン?」

「はい。他の方々はあなた方のパーティの事をそう呼んでいますよ。ご存じなかったですか?」

ヒロが頭を掻く。

「知らなかったな」

「私は知ってたわよ。もうちょっと周りに興味を持ちなさいよ」

ヒロはリーファの言葉を聞き流す。

「まぁそんな事はどうでもいい。今日拾った物で何に使うのか分からなかった物と、宝石がいくらになるか鑑定して欲しいんだ」

「分かりました。品物をどうぞ」

ヒロがカウンターの上に、半分欠けたメダルと赤い宝石を置いた。

「これは私も初めて見る物品ですね。鑑定(アイデンティファイ)

女性が欠けたメダルに鑑定魔法を使った。

「これは装備品や使用する道具ではないようです。また骨董品的な価値もありません」

キルシュレドが訝しむ。

「なんだ? ガラクタってことか?」

「いや、先に進むために必要なイベントアイテムだな。そうじゃないかと思ってたが念のため鑑定してもらったんだ。宝石の方は?」

女性は鮮やかに赤く光る宝石を柔らかい布に包んで手に取り、片目にルーペを嵌めて眺める。

「小粒ですが素晴らしい輝きですね。買い取りをご希望でしたら金貨30枚になります」

「おいおい、そりゃ安すぎるぜ。金貨50枚はするだろ」

キルシュレドの言葉に、女性がコロコロと鈴の音のような笑い声を立てる。

「正直に申し上げますが、ここでの買い取りは相場より低くなります。その代わり即金でお支払いしますし、面倒な手続きも必要ございません。どこで手に入れたかの詮索もしません。ご納得頂けないなら売らなければいいだけの事です。いかがいたしますか?」

ヒロが皆を振り返った。

「皆も買い物や宿賃の金が必要だろう? ちょうど割り切れる数字だし、今日は宝石をここで売っていいか?」

「正直、もう金がないから助かるぜ」

ジェッツがボヤき、アイもコクリと頷く。

「ま、高く売るのは時間かかるしな。いいぜ」

「いいわよ」

キルシュレドとリーファも同意する。ユウには確認する必要もなかった。

「よし、宝石は売ろう」

「ありがとうございます。お確かめください。お売り頂いたので鑑定料はサービスさせて頂きます」

女性は金貨をカウンターに積み上げた。ヒロは金貨とメダルを受け取り、すぐに金貨を皆に分配する。

「じゃ金貨5枚ずつだ。枚数と偽物じゃないかは自分で確認してくれよ。後で文句を言われても替えないからな。今後は小銭はある程度まとまってから分配するよ」

「うひょう! いきなり金貨5枚かよ!」

ジェッツが小躍りする。

皆が金貨を大事そうにしまっている間、キルシュレドは店主の女性がジッと自分を見つめているのに気づいた。チラリと女性を見ると思わせぶりなウィンクをされる。

「よし、じゃ帰るか」

「俺はちょっと掘り出し物を探してみるぜ」

「ああ分かった。また明日な、キルシュ」

「お疲れ様」

ヒロたちが去り、店にはキルシュレドと店主だけが残る。品物を見ていたキルシュレドは皆が去るとすぐにカウンターに近づいて、女性を口説き始めた。

「アンタみたいのを謎めいた美女って言うんだろうな。そのベールの奥が気になってしょうがねぇ。どうだい、よかったら一緒に酒や食事でも・・シケた街だが、隠れた美味い店を知ってるんだ」

「あら、いつもはつれないのに今日は熱烈なお誘いね。キルシュ」

女性は急に砕けた口調になる。キルシュレドはポカンと口を開けた。

「どこかで会ったか・・? いや初対面のはずだ。アンタみたいな美人を忘れるはずがねぇ」

女性はコロコロと笑った後、急にしわがれた声になった。

「フェフェフェ、私をお忘れかい? 全く、とんでもない恩知らずだよ」

「ゲッ! ババァ!」

そこの声は忘れもしない、穴の開いた壁の向こうから聞こえてきた声だった。

キルシュレドは転げだすように店から逃げ出した。

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