理由
「そろそろ昼飯にするか」
3度目の戦闘が終わり、ヒロたちは安全な部屋の中で車座になって座る。下ろした背負い袋の中から携帯食や水を取り出した。
「範囲治癒を使います」
アイがパーティ全員の傷を癒す魔法を使った。ユウが礼を言う。
「ありがとう。助かるよ」
「リーファ、アイ。まだ魔力は大丈夫か?」
「まだ火炎嵐が2回使えるわ」
「私もまだ魔力は充分に残っています」
「じゃあと2、3戦くらいするか。っとご馳走様」
ヒロがあっという間に食事を平らげ、水袋に口を付ける。
「早っ! もう食べたの? 運動した後だし、急ぐと消化によくないわよ」
リーファの言葉にヒロが首を振る。
「いや、深い場所では安全な場所がないかもしれないからな。みんなも俺くらい食うのが早くなってくれ」
「ええっ? そこまでしなきゃならないの?」
リーファが呆れる。手持ち無沙汰になったヒロがダンジョンの感想を訪ねる。
「アイ、ダンジョンはどうだ?」
小動物のようにもくもくとパンをかじっていたアイが顔をあげた。
「とても興味深いです。検索しても分からない事がたくさんあります」
「まぁ変な場所だよな。ジェッツはどうだ?」
ジェッツが干し肉を飲み込んで答える。
「ああ、大体俺が予想していた通りだ。だが敵の数がこんなに多いとはな。これじゃ一人で入るなというのはしょうがないか」
「ねぇ、ジェッツは・・」
「ジェッツさんは・・」
リーファとユウの声が重なり、二人が顔を見合わせて笑った。
「きっと同じことね。ユウ、どうぞ」
「はい。ジェッツさんは腕も立ちますし、敵をおびき寄せる挑発のスキルも使えます。争ってパーティに誘われるくらいだと思いますが、どうして誘われるのを待ってたんでしょう」
ジェッツが憮然と答える。
「そりゃ俺の見た目が理由に決まってる。最初はちょっとアピールしたり声を掛けてみたんだ。だが誰も仲間に入れようとはしない。それならと俺が自分で仲間を集めようとしたが、乗ってくる奴はいなかった。一人で入ろうとしても通してくれないしな」
リーファが頷く。
「可哀そうだけど、しょうがない部分もあるわね。命がけの探索に、見知らぬ種族を入れるリスクを避けるのは賢明だと思うわ」
「俺は全然気にしないぞ!」
ヒロが胸を張る。
「少しは気にしてちょうだい」
リーファに突っ込まれる。ジェッツが飲んでいた水袋から口を離す。
「フゥ。正直言ってもう諦めかけてた。今日も誘われなかったら家に帰ろうかと思ってたところだ」
「思わぬ掘り出し物ってところだな。さすがアイだ。ジェッツの能力を見破ったんだろう?」
「いえ、違います」
アイが首を振る。
「えっ? 違うの?」
「じゃあなんで、ジェッツをパーティに入れろと言ったんだ?」
「すごくモフモフだからです」
皆が耳を疑う。
「はぁ!?」
「モフモフ?」
「今は休憩中ですから、ちょっと触ってもいいですか? いいですよね」
ジェッツの返答も聞かず、アイは隣に座ってジェッツの尻尾を撫で始める。
「何なんだ?」
戸惑うジェッツ。ヒロたちが呆れた。
「自分の趣味で誘ったのかよ!」
「パーティに足りない部分をちょうど補える、冷静で的確な判断だと思ってたのに・・」
「アイも使われるだけの人形じゃないってことね」
アイはいつまでもジェッツの尻尾を撫で続けていた。




